「裁定買い残」が5,620億円まで減少、短期的な「売られ過ぎ」シグナルか

 私がファンドマネージャー時代に、日経平均先物のトレーディングをする上で重視していた需給指標に「裁定買い残高」があります。裁定買い残の変化に、外国人による投機的な先物売買の変化が表れます。

 外国人が先物を買うと日経平均が上昇し、(裁定取引を通じて)裁定買い残が増加します。外国人が先物を売ると日経平均が下落、(裁定解消売りを通じて)裁定買い残が減少します。

 近年の日経平均および裁定買い残は、以下のように推移しています。

日経平均と裁定買い残高の推移:2007年1月4日~2019年1月7日(裁定買い残高は2018年12月28日まで)

注:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 

 裁定買い残は、2007年以降でみると、3,000億~6,000億円まで減少すると、増加に転じていました。リーマンショック後の安値(2009年)、ブレグジットショック後の安値(2016年)に、裁定残は3,000億~6,000億円まで減少してから底を打っています。

 日経平均は、裁定買い残が減少している間、つまり外国人が先物を売っている間は下落します。ところが、裁定残が増加に転じる、つまり外国人が先物買いに転じると、上昇に転じます。2007~2016年では、裁定買い残が3,000億~6,000億円まで減少したところで日経平均先物を買えば、タイミングよく日経平均が反発に転じ、利益を得られる可能性が高かったと言えます。

 昨年12月28日時点で、裁定買い残高は、5,620億円まで減少しています。海外ヘッジファンドの空売り残高が高水準になってきたと推定されます(あくまでも推定)。短期的な「売られ過ぎ」シグナルと見ることができます。

 

裁定残を見ながらトレーディングする際の注意事項

 1つ注意すべきことが、あります。裁定買い残はかなり低い水準まで減少しましたが、裁定残だけで投資判断すべきではありません。裁定残がいくらまで減ったら増加に転じるという明確な法則はないからです。その時々で、裁定残が底を打つ水準は異なります。過去には、3,000億~4,000億円まで減少したこともあり、現在の5,620億円が底になると決め付けることはできません。

 海外ヘッジファンドの空売り残高が高くなっていることを意識しつつ、ファンダメンタルズ(景気・企業業績)の変化も見ながら、投資判断を行うべきです。

 

裁定買い残高が3.5兆~4兆円まで増加すると、減少に転じることが多い

 2007年以降で見ると、裁定買い残高が3.5兆~4兆円まで増加した後、日経平均は反落局面に入っていました。裁定買い残高3.5兆~4兆円は、投機筋の先物買い建て残高が高水準になっていることを示し、短期的な「買われ過ぎ」を警戒した方が良いレベルとなっています。

 

日経平均と裁定買い残高の推移:2007年1月4日~2019年1月7日(裁定買い残高は2018年12月28日まで)

注:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 

 2013~2015年の部分を拡大したのが、以下の図です。

日経平均と裁定買い残高の推移:2013年1月4日~2016年1月8日

注:東京証券取引所グループのデータに基づき楽天証券経済研究所が作成

 

 今後、日経平均が上昇し、裁定残が3.5兆円に近づく時は、短期的な買われ過ぎを警戒すべきです。ただし、裁定残だけで、売りを仕掛けるのは危険です。裁定残がいくらまで増えたら減少に転じるという法則はないからです。過去には、裁定買い残が6兆円まで増加したこともありました。

 

 

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