株式市場では、12月26日から実質、1月入りします。12月26日に買った銘柄の受渡日(株主名簿に登載される日)が1月4日だからです。12月25日に12月の優待銘柄を買っても、もう12月末基準の優待を得ることはできません。そこで今日は、1月の人気優待銘柄について、アナリスト視点からコメントします。

 

1月入りしたからと言って、1月優待銘柄から投資銘柄を選ぶのは、必ずしも合理的でない

 最初に申し上げておくべきは1月だからと言って、1月優待にこだわる必要はないということです。私が優待銘柄に投資するならば、

  1. 自分にとって魅力的な優待内容で
  2. 使い勝手が良く
  3. 株価が安値圏にあり
  4. 業績が堅調な銘柄

 を選びたいと思います。現在、優待を実施している日本株銘柄は1,452あります。日経平均急落で、長期的な投資魅力が高まった銘柄がたくさんあります。私はその中から、条件に合う銘柄を自由自在に選びたいと思います。

 しかし、1月に株主優待を実施している銘柄はたった31しかありません。このように限られた範囲から投資銘柄を選ぶのは、合理的とはいえません。

月別の優待実施銘柄数:2018年12月26日時点

出所:楽天証券「株主優待検索」

 

 2018年8月に、楽天DI(皆さまに実施しているアンケート調査)で、株主優待に関してアンケートを実施しました。「優待銘柄をいつ買いますか」という問いに対し、62%の方が「欲しい時」、23%の方が「権利確定月」とお答えになりました。「欲しい時」という答えは特に問題ありませんが、「権利確定月」に買うというのは必ずしも合理的でないこともあります。

 ただ、1月の人気優待銘柄にも、投資魅力のある銘柄はあります。人気上位10銘柄では人気トップの積水ハウス(1928)の長期的な投資魅力は高いと考えています。注意すべき点は、積水ハウスは100株保有しているだけでは、株主優待が得られないことです。900株保有していても優待は得られません。1,000株以上保有している1月末の株主に対して、10~11月頃、魚沼産コシヒカリ(新米)5kgを贈呈しています。

1月の人気優待銘柄トップ10

 ご参考までに、1月の優待銘柄・人気上位10銘柄は以下の通りです。株価の右側の「優待内容」をクリックしていただくと、どのような優待を実施しているかご覧いただくことができます。

人気順 コード 銘柄名 権利付最終日 株価:円 優待内容
1 1928 積水ハウス 2019年1月28日 1,539.5 優待内容
2 2590 ダイドーグループHD 2019年1月15日 5,340.0 優待内容
3 3071 ストリーム 2019年1月28日 52.0 優待内容
4 3421 稲葉製作所 2019年1月28日 1,113.0 優待内容
5 7590 タカショー 2019年1月15日 398.0 優待内容
6 3193 鳥貴族 2019年1月28日 1,668.0 優待内容
7 3169 ミサワ 2019年1月28日 389.0 優待内容
8 3246 コーセーアールイー 2019年1月28日 654.0 優待内容
9 3320 クロスプラス 2019年1月28日 634.0 優待内容
10 4334 ユークス 2019年1月28日 384.0 優待内容
単位:円
出所:楽天証券「株主優待検索」

 

「いつまでに買わないと優待や配当の権利が得られないか」については、「権利付最終日」をご覧ください。ダイドーとタカショーは、1月15日が最終日です。他の銘柄は、1月28日です。

 なお、優待内容は、予告なく変更されることもありますので、常に最新の情報をチェックしてください。楽天証券HPでは、1カ月ごとに優待内容を更新しています。

 

人気トップ10銘柄の業績をチェック

 優待銘柄を選ぶ時、「優待内容の魅力」だけで決める方がいますが、株式投資である以上、最低限、足元の業績はチェックしましょう。まず、人気トップ10の前期(2018年1月期)から今期(2019年1月期)にかけての連結営業利益の推移を見てください。

1月優待人気トップ10の連結営業利益:2018年1月期実績と2019年1月期会社予想 

  2018年1月期
実績
前期比 2019年1月期
会社予想
前期比
積水ハウス 1,955.4億円 +6.2% 1.850億円 ▲5.4%
ダイドーグループHD 48.9億円 +26.8% 57.4億円 +17.4%
ストリーム 0.9億円 ▲49.3% 0.22億円 ▲76.8%
稲葉製作所 3.9億円 ▲41.1% 10億円 +150.6%
タカショー 6.0億円 +20.8% 4.57億円 ▲24.7%
鳥貴族 16.8億円 +15.4% 17.44億円 +3.7%
ミサワ ▲0.8億円 赤字 3.16億円 黒転
コーセーアールイー 17.8億円 +61.6% 17.92億円 +0.4%
クロスプラス 3.8億円 ▲55.6% 0億円 NA
ユークス 0.5億円 +82.2% 2.76億円 +384.2%
出所:各社決算短信

 

 私がファンドマネージャーだったら、少し買ってみたいと思うのは、人気トップの積水ハウスだけです。他の銘柄には、特に投資魅力を感じません。業績不振で収益が不安定なストリームやタカショー、クロスプラスは、保有していれば売って他の銘柄に乗り換えることを考えます。日経平均急落で、今ならば割安で魅力的な大型株がたくさんあるため、そこから代わりの投資銘柄を選びます。

 実を言うと、私が積水ハウスに注目するのは、優待銘柄というよりは、好配当利回り銘柄としてです。予想配当利回りは、12月26日時点で5.13%【注】です。

【注】配当利回りの計算方法
積水ハウスは、今期(2019年1月期)の1株当たり年間配当金を、79円と計画しています。うち、39円は中間期末(2018年7月末)の株主に支払い済みです。1月末の株主に対して、残り40円を支払う予定です。1株当たり年間配当金79円を、株価で割って計算する配当利回りは12月25日時点で、5.13%です。

 積水ハウスは、株価バリュエーションで見ると、とても割安に見えます。予想PER(株価収益率)8.3倍、PBR(株価純資産倍率)0.89倍まで売り込まれています。これは、住宅業界の利益がピークアウトすると思われていることが原因です。

 アパート建設は、歴史的な低金利で一時大きく伸びましたが、既にピークアウトしつつあります。相続税引き上げで、相続対策としてのアパート建設が一時増えましたが、それも一巡しました。全国に空き家が増加し、アパートが供給過剰になることが懸念されています。そうした中、最近、無理にアパートを売ろうと不正融資や押し込み販売をやっていたという不祥事も出ています。こうした環境ですので、住宅関連株は今、投資家に人気がありません。

 積水ハウスの営業利益は前期(2018年1月期)に過去最高を更新していますが、今期(2019年1月期)は、5%の営業減益を予想しています。同社が開示している受注(全部門合計)は、今期、2018年2月から11月までの累計で、前年同期比3%減です。来期以降も、業績は伸び悩むことが予想されます。

 ただし、私が注目するのは、積水ハウスの株価が過度な悲観を織り込んで、割安に売り込まれていると考えられることです。

 積水ハウスは、過去に何度も住宅ブームとブーム終焉を経験しています。その経験から、経営を安定化させるために、住宅建設だけに依存した経営体質を改善中です。

 ストック型ビジネス(リフォーム事業・不動産フィー事業)、国際ビジネス(オーストラリア・中国・米国・シンガポール)など、経営の多角化に取り組み中です。取り組みは道半ばですが、過去に比べると、収益力は安定的になりつつあると評価しています。

 

 

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