「消費国」に焦点を当てて「銀」を解説!
コモディティ(商品)は私たちの身近にある商品や資源です。この身近にあるコモディティについての知識が増えれば、コモディティの値動きに影響を受ける株式の投資のことももっと分かるようになります。
今回のテーマは宝飾品で知られる「銀」。宝飾品だけでなく産業分野でも幅広く用いられている「銀」の消費国について、解説していきます。
コモディティ☆クイズ「銀の消費国、世界1位は?」
銀の消費は、産業、宝飾、投資の3分野!
銀は、おおまかに言えば、電子部品や写真のフィルム、太陽光発電の電極などの「産業用」、アクセサリーとしての「宝飾用」、そしてコインや地金バーといった「投資用」の3分野で消費されています。
「宝飾用」=金(ゴールド)と同じで、自分を飾る、優越感に浸るなどを目的とした消費。
「産業用」=高い伝導性を利用した電子部品、一定の条件下で光に反応する性質を利用した写真フィルムの感光剤などの消費。
「投資」=銀現物の保有による消費。
となります。
銀の消費内訳 (2017年)
産業の消費トップは中国!
64.6%と、消費の大半を占める「産業用」の銀について見てみましょう。
「産業ジャンル」での消費国の1位は中国24.0% 、2位は米国20.7% 3位は日本17.5%でした(2017年)。
銀は、電気を通しやすい、加工しやすいなどの他、一定の条件下で光に反応しやすい性質がある金属です。このため、電子部品や写真フィルム、近年では太陽光発電の電極部分に用いられています。
電子部品の消費トップは中国!
産業向けで最も割合の大きい「電子部品」の消費内訳を見てみましょう。
1位:中国26.1% 2位:米国22.9% 3位:日本 13.2%でした(2017年)。
先進国である米国、日本で、そして新興国の中国での消費が多いことが分かります。1位の中国は銀の電子部品向けの消費の4分の1以上を消費しています。
宝飾向けの消費トップはインド
宝飾向けの消費国としては、1位:インド31.6% 2位:中国12.7% 3位:タイ 10.0%でした(2017年)。
銀の宝飾向け消費で上位3位に入った国はいずれもアジアの国でした。2008年から2017年にかけて、インドの宝飾向け銀消費は3倍以上になりました(601トン→2058トン)。一方、中国は30%減少となりました(1121トン→829トン)。
また、タイは宝飾品の世界的な流通の拠点という側面があると言われています。タイ国内には熟練工が加工した銀をはじめとした多数の宝飾品を扱う街があるようです。
「銀」投資で覚えておきたい注意点!
図:銀の消費量の推移(世界合計) 単位:トン
銀の消費量(世界合計)は、近年おおむね横ばいで推移しています。消費の増加は価格上昇を連想させますが、銀の場合、その消費は横ばいです。では、どの分野で消費が伸び悩んでいる、あるいは減少しているのでしょうか?
上図のとおり、主力の消費分野である電子部品が横ばいです。コイン&地金バーにおいては、2015年をピークに2016年、2017年と大きく減少しました。写真フィルムも減少、宝飾品が微増、太陽光発電が増加となっています。
太陽光発電での消費が増加傾向にあります。エコの観点から将来、この分野での消費増加が期待されます。同じ金属の“銅”がこの分野での競合と言われ、銀よりも安価であること、銀と同等の伝導性であることなど、銀の消費増加の起爆剤になるか課題があります。
写真フィルムにおいては、私たちの生活の中で身近に感じられるとおり、デジタルカメラの急速な普及が銀の写真フィルム向けの消費量を減少させました。また、近年はデジタル化が進み、医療用のレントゲン向けや映画のフィルムにおいても、銀のフィルム向け消費は今後も減少する可能性があります。
銀価格の大きな変動要因である消費が今後伸びてゆくかは、主力の電子部品と宝飾、コイン&地金バーの分野がいかに回復するかがカギと言えます。
また、宝飾向け消費におけるランキング1位のインド、2位の中国について、それらの消費量の推移をみてみると以下のようになっています。
図:インドと中国の宝飾向け消費量の推移 単位:トン
中国の減少をインドが補う格好となっています。特に2016・17年は、インドでは天候に恵まれ農村部では可処分所得が増えたとされています。同国の個人消費の拡大につながる農村部での可処分所得の増加は、宝飾向け消費を増加させる要因になります。
銀の消費量の変化を見る上で、全体的には世界経済の動向、部分的にはインドの宝飾用消費の動向が注目点と言えます。
「銀」投資の注目ポイント
銀に投資をする上でポイントになるのは“銀の値動きの大きさ”です。
同じ貴金属で投資先として最も人気のある金(ゴールド)の値動きに比べて、銀の値動きは“大きい”と言えます。以下は金と銀の年間の変動率を比較したものです。
変動率が10%であればその年の高値はその年の安値よりも10%高かった、安値を基準にそこから+10%の範囲で価格が動いたことを意味します。100%であれば安値を基準に+100%の範囲で価格が動いた(その年の高値は安値の2倍だった)ことを意味します。
図:金と銀の年間の変動率の比較 (2018年は11月27日まで)
この10年間、毎年銀の変動率は金の変動率を上回っています。年間の変動率の平均は金のおよそ2倍です。値動きが金よりも大きいことが銀投資における大きなポイントと言えます。銀は金よりも値動きが荒いと言えます(あくまでも金との比較です)。
その意味では、ゆっくり価格の推移を見守りたい人、特に貴金属への投資において初心者の方は金を、慣れてきた方は金に加えて銀も、という考え方が有効かと筆者は考えています。
「銀」は今いくら?現在の価値
図:銀価格の推移 単位:ドル/トロイオンス
私たちの身近にある円建て銀価格は2018年11月27日時点で、1グラムあたり54.0円前後です(楽天証券の積立価格)。また、図のとおり、国際的な銀価格の指標であるドル建ての先物価格は、長期的に見れば2012年にピークをつけたあと下落し、弱含む動きとなっています。
「銀」の投資商品例
日本でも個人投資家が投資できる、コイン・メダル・地金バー、純金積立、ETF(上場投資信託)、商品先物の4種類を紹介します。
【コイン・メダル・地金バー】
銀を手元に置けることが魅力。一方、保有にあたっては盗難リスクが伴う。量が多くなると、持ち運びが難しく、警備が必要になる場合も。
【純金積立】
比較的少額の資金を長期で積み立てる取引。株式等の取引経験がない投資初心者の人でも参入しやすいとされる。預金代わりに金を積み立てる人も。
【ETF(上場投資信託)】
証券会社に口座を持っている人に便利。株を取引きするのと同じように銀の取引ができる。銀関連のETFは原則銀価格に連動するように設計されている。長期保有も短期売買も可能。
【商品先物】
レバレッジをかけた短期売買ができる。
※積立、ETF(上場投資信託)、商品先物においては、各取引を扱う証券会社等によって、積み立てた銀を現物にして手元に置いたり、ETFや商品先物取引で購入した銀を手元に引いたりできない場合があります。
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