今回は「カカオ豆の供給国・地域」に注目
今回は、農産物の一つで、チョコレートやココア飲料などで私たちの身近にある「カカオ豆」の供給国・地域に注目します。
カカオ豆の歴史-生産地拡大からチョコレート誕生へ
カカオ豆は、筆者が過去に書いたレポート「コーヒーは世界をめぐる!『ティータイム銘柄』で知る面白世界史!」で触れたとおり、大航海時代(15世紀半ばから17世紀半ば頃まで)以降、アメリカ大陸(新大陸)からヨーロッパやアフリカ、ユーラシア大陸(旧大陸)に渡った品目の一つです。
新大陸から旧大陸へ、旧大陸から新大陸へ、動物・植物・病原体・人(奴隷含む)などの大陸をまたいだ大移動は、新大陸を発見したコロンブスの名にちなんで“コロンブス交換(Columbian Exchange)”と呼ばれています。
今回のテーマであるカカオの樹の原産地は、南米(ブラジルやベネズエラ付近)と言われています。大航海時代の前にあたる14世紀ごろ、アステカ王国(現在のメキシコ付近)では、カカオ豆は王族の間で、バニラやトウガラシを加えて飲用されていたようです。カカオ豆が貨幣として用いられることもあったと言われています。
16世紀にスペインのコルテスの手により、アステカ王国で重用されていたカカオ豆はヨーロッパに渡り、砂糖と融合し、ヨーロッパ列強の貴族の間に急速に浸透しました。スペイン、オランダ、フランス、イギリスなどは、自国のカカオ豆の消費拡大に対応するため、生産地を中南米、東南アジア、そして西アフリカ(現在のガーナやコートジボワールなど)に広げていきました。
カカオペースト(カカオマス)を、ココアケーキ(すりつぶせばココアパウダー)とココアバターに分離する技術が生まれたのは1820年代。オランダの“ヴァン・ホーテン”という人物により発明されました。この発明により、カカオは飲み物から食べ物、つまりチョコレートへ進化する大きな一歩を踏み出しました。
ヨーロッパ列強における甘いお菓子を食したいという欲求は、甘く、そして口どけのよいチョコレートを作り上げる大きな原動力となったわけです。その後、さまざまな工夫により、安価で保存が効くチョコレートが開発され、世界中で食されるようになりました。
長い歴史を経て、カカオ豆はチョコレートやココア飲料の材料としてわたしたちの生活の身近なものになったわけですが、そのカカオ豆がどこで生産されているのか、クイズを通じて勉強してみましょう。
カカオ豆の供給☆コモディティクイズ
カカオ豆の市場環境を知る上で、供給に関連する国・地域を把握しておくことが重要です。国旗や地図上の位置、マスの大きさ(国名の文字数)をヒントに、上位3カ国・地域を考えてみましょう。
問:カカオ豆の供給国・地域(2016年)の上位3位はどこ?
答え:「カカオ豆」 (2016年)供給国、上位3位の正解は…
[解説]
1位:コートジボワール(33.0%)
2位:ガーナ(19.2%)
3位:インドネシア(14.7%)
でした。
西アフリカ、ギニア湾周辺諸国である、コートジボワール、ガーナ、カメルーン、ナイジェリアの4カ国のシェアは合わせて64.0%です。世界のカカオ豆の半分以上が西アフリカ諸国で生産されています。
カカオ豆は、「カカオベルト」と呼ばれる、主に北緯・南緯ともに20度以下の国で生産が盛んです。カカオベルト内の、温暖で一定量の降雨がある、標高300メートル前後の丘陵地がカカオの樹の生育に適していると言われます。ちなみに同じ農産物のコーヒーにおいてもベルトがあります。「コモディティ☆クイズ【9】『コーヒー関連国(地図付)』の世界シェアは?」 をご参照ください。
先述のとおり、コロンブス交換によって旧大陸にもたらされたカカオは、ヨーロッパ列強の手によりアフリカや東南アジアに生産地を拡大しました。現在の主要生産地はそのころの名残とも言えます。
図:世界全体のカカオ豆生産量 単位:万トン
世界全体のカカオ豆生産量は、やや頭打ち感はあるものの、ここ30年弱の高水準を維持しています。また、以下は生産国上位7カ国の生産量の推移です。
図:国別カカオ豆生産量(2016年時点の上位7カ国) 単位:万トン
コートジボワールが生産1位ですが、同国のカカオ豆の生産現場は大きな問題を抱えているとの指摘があります。また、チョコレートの販売価格において、カカオ豆の調達コスト(生産者の収入)は低く抑えられ、広告宣伝費分が非常に高いという問題があると言われています。
生産者の収入を世界規模で守る仕組みである「フェアトレード」がカカオ豆においても広く用いられることが望まれます。フェアトレードについては過去のレポート「コモディティ☆クイズ【13】『綿関連国(地図付)』の世界シェアは?」 をご参照ください。
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