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メンタリストDaiGoインタビュー(全3回):前編 ・中編後編

メンタリストDaiGoインタビュー「投資の心理学」

 人の心を読み取る「メンタリスト」としてテレビやニコニコ動画などのインターネットで活躍するDaiGo(ダイゴ)さん。若手起業家やビジネスパーソン向けに時間術など、専門の心理学分野からビジネススキルを高めるためのセミナーも行っているDaiGoさんですが、トウシルでは合理的なお金との付き合い方や、投資への向き合い方をインタビュー。

 全3回インタビュー中編は「心理学で知るお金の正しい生かし方」についてお聞きしました。

 

札束を数えると、死への不安が減る?

 人間の心理に、お金という存在は深く影響を及ぼします。心理学者のトマス・ザレス・キューイッツが行った面白い実験があります。被験者を2つのグループに分け、お金という存在が人の心理にどう影響するか、明らかにしたものです。

 一方のグループには、お札と同じサイズの紙切れを束にして数えてもらい、別のグループには本物の札束を数えてもらいました。その後、それぞれに死を連想させる10の質問に答えてもらった結果、とても興味深い事実が判明しました。

 紙切れを数えたグループより、本物の札束を数えたグループでは死に対する不安を持つ人が5分の1ほど少なかったのです。

 自ら多くの資産を保有していれば、生存が脅かされるような不安、死の恐怖を感じにくいことはあるかもしれませんが、この実験では他人のお金を数えただけ。にもかかわらず、不安や恐怖を感じる人が少なかった。これが意味するところは、人間がお金という存在に絶大な信頼を置いていることの表れなのです。お金には絶対的な価値があると盲信し、見たり触れたりするだけで心の平穏を得ることができるのです。

 このお金と死に対する心理を応用すれば、お金を貯めこともできます。普段から自分の死が身近にあるものだと考えるクセをつけるのです。

 なぜ死を考えるとお金が貯まるのかというと、二つ理由があります。

 一つは、いざというとき、例えば死に直面するような重い病いにかかったときなどのためにお金を準備しようと考える。もう一つは、死を目前にしたとき、周りから後ろ指を指されるような死に方はしたくないと考える。そうすると自分の人生をまじめに考えるようになり、計画的に生きる=結果的にお金を貯める行動が促されるのです。

メンタリストDaiGoインタビュー

(前編)投資の成功には他人を出し抜くメンタルが必要だ

(後編)「公言力」で変える!貯められない人の行動と心理

 

850万円がピーク!?年収と幸福感の相関性

 札束を数えるだけで安心するように、人間がお金に対して絶対的な信頼を寄せるのは、今に始まったことではありません。

 例えば古代ローマ時代には、アウレウス、デナリウスといった通貨が存在していましたが、これらはキリスト教国家であるローマ帝国のみならず、近隣のイスラム国家などでも流通していました。当時、異教徒の文化や習慣を受け入れるのは簡単なことではありません。でも通貨だけは別だった。お金は国家や人種、宗教、文化などを超える、唯一、不変の信頼システムなのです。

 お金は好きなものを買えるし、ぜい沢ができる。それだけではなく、信頼システムとして存在し、お金で精神的な安定も得ている。

 お金で精神の安定を買えるなら、稼げば稼ぐほど幸せになれると考えるかもしれませんが、実はそうとは限りません。ここに落とし穴があります。
一生懸命働いて年収が倍増した。ところが、満足感も充足感も得られなかったということが往々にして起こります。

 このことは経済学者がはっきりと指摘しています。

 米国の経済学者・リチャード・イースタリンは、1974年に「お金と幸福の逆説的な関係」という論文の中で、「貧しいときには収入が増えると幸福感が増す。しかし、年収が一定レベルに達すると、それ以上収入が増えても幸福感は変わらない」と発表しました。これは「イースタリンのパラドックス(逆説)」と呼ばれます。

 さらに2010年にも米国の経済学者であるダニエル・カーネマンが、「年収7万5,000ドル(日本円にすると850万円)を超えたあたりで幸福感の増加はストップする」と具体的な数字を挙げて主張。年収が300万円、400万円、500万円と増えていくと生活レベルが向上し、幸福感を感じるものですが、ある地点にたどり着くと自分の願望はほとんど叶えてしまうので、幸福感は薄れていくというものです。

 では、私たちにとって「幸福」はどんなときに得られるのでしょうか。一つ確実なのは、いくら稼ぐかよりも、どのように使うかが大事だということです。

 どんなにお金を稼ぐ方法を知っていても、正しいお金の使い方を知らないと決して幸福にはなれません。だから、ガンガン稼いでいるのに満足感も充足感も得られないという人は、自分がどのようにお金を使っているのかを一度見直してみるべきなのです。

 

正しいお金の使い方

 僕は学生の頃、お金にはとてもシビアで、学食2食分を抜いて文庫本を買っていました。それは本を読むことが自己投資、いつか自分の身に戻ってくると考えていたからです。結果、それは正しかった。

 学生の頃は誰しも食べたい盛り。でも僕は、お金の使い途を集中させていたのです。何に投資すべきか、何にお金を使うべきか、1点に集中させなければ人は突き抜けることはできない。お金、時間、労力など自分のリソースを1点に集中させることができない人、その勇気がない人は投資には向きません。これを集中させる意思決定力、すなわち前頭葉の力がなければ。

 投資に消極的な人の中には、「お金は汚い、投資までしてお金を増やすのか」という考えの人もいると聞きます。しかし、お金がないために自分の大切な人を助けられなかった、喜ばせてあげられなかったという経験があれば、お金は汚いという考えは絶対に出てこないと思います。

 僕も学生の頃は「お金じゃない、夢を追うことが尊い」と考えていた時期がありました。
僕は、母をがんで亡くしています。

 母は入院中、まだ食事ができていた頃に、東京・六本木にあるイタリアンのおいしい店で「一度でいいから、みんなで食事がしたいね」と話していました。

 学生だった僕はそれを聞いたとき、いつか稼ぐようになったら連れて行こうと考え、アルバイトで貯めた10万円でパソコンを買ってしまった。自分の夢を追うためです。

 結果的に、母をイタリアンの店に連れていくことはできなかった。それをとても後悔しています。なぜあのとき、夢なんか追ってしまったんだろう、なぜ早く稼いで、母においしいものを食べさせてあげなかったんだろう、母に喜んでもらえるようなことができなかったんだろうと。

 これはお金があれば、実現できたことです。お金は汚いと考える人は、お金の使い途、正しい生かし方を知らないのではないでしょうか。

 

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DaiGOさん(​メンタリスト・作家)

1986年11月静岡県生まれ。慶應義塾大学在学中、英国の世界的メンタリスト、ダレン・ブラウンに感銘を受け、メンタリズムの技術を習得。その後、国内唯一のメンタリストとしてテレビ番組に出演し、人気を博す。現在は企業のビジネスアドバイザーやプロダクト開発、作家、大学教授としても活躍中。『「好き」を「お金」に変える心理学』『ストレスを操るメンタル強化術』など著書多数。

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