FOMCの結果は市場予想通り0.25%の利上げ実施

 米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は13日(日本時間14日午前3時)、事前の市場予想通り、0.25%の利上げを発表しました。具体的にはFF金利の誘導目標を1.50~1.75%(中心1.625%)から1.75~2.00%(中心1.875%)へ引き上げました。

米FF金利の推移:2000年12月~2018年6月

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 利上げ自体は予想通りでサプライズ(驚き)はありません。市場の注目点は利上げの有無ではなく、今後の追加利上げのペースに移っていました。「利上げ加速の見通し」が出るか、「利上げにやや打ち止め感」が出るか、そこが注目点でした。

 

FRBは、年内さらに2回の利上げ見通しを公表

 今後の利上げペースを考える上で市場が注目していたのは、以下の2点です。

(1) FOMCメンバーは、今年あと何回利上げがあると予測しているか

(2) FOMC声明文、パウエルFRB議長の記者会見は、タカ派(追加利上げに積極的)か、ハト派(追加利上げに消極的)か

 FOMCメンバー予測(中央値)による、年末のFF金利の予測(中央値)は、3月時点の予測よりも0.250%引き上げられ、2.375%となりました。つまり、年内、さらに2回の利上げが予測されていることになります。

 従来の見通し(年末FF金利中央値2.125%)では、2018年の利上げは3回(3月・6月の実施分も含めた合計)でしたが、今回、4回に引き上げられました。利上げ加速が示唆されたことを受けて、為替は一時、ドル高(円安)に動きました。

 ただし、その直後にドルは売られました。米国が中国に対し制裁関税を発動すると一部報道があり、米中貿易摩擦が激化する不安からドルが売られました。日本時間で14日午前6時20分時点では、1ドル110.34円と、ほぼ利上げ発表前の水準に戻っています。

ドル/円為替レートの動き:6月14日0時~6時20分(日本時間)

出所:ブルームバーグのデータより作成

FOMCメンバーによるFF金利の予想(中央値) 

出所:FRB

パウエルFRB議長の発言はややタカ派トーン

 FOMC声明文のパウエルFRB議長のコメントでは、米景気・雇用の現状が強く、利上げをさらに続ける見通しが示されています。ややタカ派と取れる内容でした。

 

材料出尽くしで、円安、株高が一服するか?

 今回の米利上げを事前に織り込んで、5月からドル高(円安)が進み、円安を好感して日経平均も上昇してきました。これで材料出尽くしとなるか、注目されています。

 利上げ加速の見通しが出たものの、FOMCメンバーが長期的なFF金利の適正水準を3%程度と見ていることを勘案すると、長期的には、利上げの打ち止めが視野に入り始めているとも言えます。したがって、長期金利は3%を超えて、大きく上昇していくことは困難になったと考えられます。短期的な利上げ加速と、長期的な打ち止め感の両方が、市場に影響を与え始めてます。

 13日のNYダウは、利上げ加速の見通しを嫌気して、119ドル安の2万5,201ドルと小反落。

 では、日経平均はどうなるでしょう? 利上げ加速の見通しが示されたにもかかわらず、ドルの上値が重く、円安が進まなかったことから、今日の日経平均は続落が見込まれます。上値抵抗線と考えられている2万3,000円を超えていくことは、当面、難しくなったと考えられます。

 

新興国から資金が流出し、米国に集まる流れは続いている

 米ドル、米国株は堅調ですが、気になるのは、米利上げを織り込みつつ、低信用国の通貨が大きく下がっていることです。トルコリラは、トルコ中銀が利上げしたことでいったん反発しましたが、また上値が重くなっています。それ以外の新興国通貨は下落トレンドが続いています。

 米金利上昇の副作用として、低信用国の通貨・国債がさらに売られるようだと、「新興国危機」が意識されるリスクもあります。今後、トルコ、アルゼンチン、メキシコ、ブラジル、ベネズエラなど対外負債の大きい新興国の通貨がどう動くか、注目されます。

▼他の新着オススメ連載

今日のマーケット・キーワード:『米朝首脳会談』、非核化に向けた合意文書に署名