恐怖指数とブラックスワン指数からみる米国株式動向
米中貿易摩擦の行方や米国によるシリア攻撃の可能性など不透明要因がいまだ多いなか、国内株式に影響度が大きい米国株式には調整一巡の兆しもみてとれます。下の図表1の上段グラフが示すとおり、S&P500指数は2月以降の株価下落を経て、200日移動平均線(中期的な支持線)付近で下値固めに移行しつつあります。
図表1の下段グラフは、オプション市場で算出されている「恐怖指数」と「ブラックスワン指数」の推移を示しています。恐怖指数(VIX)は投資家の予想変動率を示すもので、2月初旬の50%をピークに現在は20%程度まで低下。ブラックスワン指数(SKEW Index)は、「株価が大幅に下落する確率÷株価が大幅に上昇する確率」を指数化したものです。ブラックスワン指数が上昇するのは、「株価の大幅下落を警戒する投資家が増えている」状況を示唆します。
ブラックスワン指数は、2月の「VIXショック」に続く3月の「貿易戦争懸念」で上昇した後は急低下しました。経験的に、恐怖指数とブラックスワン指数の両方が同時上昇する場面で株価調整は厳しくなった経緯がありました。現在は、2月と3月に「まさかの黒い白鳥」を織り込んで株価が下落して以降、「当面も変動率は高そう」と見込まれる一方、「ここからの株価下落余地は限定的」と見込む向きが増えている状況を示しています。新たなブラックスワンが登場しない限り、米国株は下値を固めながら、徐々に戻り基調をたどる動きを見込んでいます。
図表1:米国株式に調整一巡の兆しがみてとれる
アノマリー(季節的傾向)からみる日米株価の行方
国内株式の先行きについては、トランプ大統領の政治的な発言や行動に加え、国内の政治動向に振り回されるリスクが否定できません。ただ、4月入りして以降の相場は日米とも底堅い動きもみられます。米国では、ダウ平均、S&P500指数、ナスダック総合指数が月初来プラスを維持しています(11日時点)。今後ドル円相場も底入れを鮮明にするなら、日経平均やTOPIXが戻りを試す動きに転じることが期待できます。参考までに、長期市場実績を振り返ると、米ダウ平均も日経平均も「3月下旬あたりから春相場(スプリングラリー)を示現してきた」とのマーケットアノマリー(季節的傾向)がみられます。図表2は、過去20年(1998年~2017年)における米ダウ平均と日経平均の年間パフォーマンスを平均して指数化(年初=100)したグラフです。
概観すれば、「年末に向けた株高の反動で、年初は利益確定売りが先行して株価は調整」→「3月下旬あたりから税還付による資金の再投資で5月にかけ株価が回復(春相場)→5月から6月にかけ再び弱含んだ(セル・イン・メイ)」といった平均的傾向がみてとれます。先週号でご紹介しましたが、1950年以降の米国市場実績では、4月は米ダウ平均の平均騰落率が+1.9%と最も堅調な月でした。
また、2006年から昨年(2017年)まで4月のダウ平均は12年連続で上昇してきました(平均上昇率は+2.5%/出所:Stock Trader’s Almanac 2018)。東証・投資主体別売買動向によると、「3月最終週に外国人投資家は12週ぶりに日本株を買い越した」事実が確認されました。あくまで過去の市場実績ですのでその「再現」を保証することはできませんが、市場参加者の多くがこの「季節的傾向」を念頭に売買していく可能性が高いことには留意したいと思います。
図表2:過去20年における日米株価の季節的な傾向
がんばれ大谷選手!大活躍で関連銘柄に注目
前述したとおり、当面の株式市場はいまだ外部環境に不透明要因が多く、楽観はできません。そうしたなか、スカっとするほどの明るいニュースが大リーグでの大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンゼルス)の大活躍です。公式戦開幕以降、大谷選手はピッチャーとして2連勝、DH(指名打者)で出場した3試合連続でホームランを打ちました。
米メディアは「ベーブルース以来の空前絶後の二刀流(two-way player)」と報道し、所属するエンゼルスは1982年以来36年ぶりとなる開幕好スタート。エンゼルスは13戦10勝3敗でアメリカン・リーグ西地区の単独首位に立ちました(11日時点)。そして、開幕戦を除き、大谷選手が出場した試合全てでエンゼルスは勝利してきました。大谷選手はアメリカン・リーグの週間MVPに選ばれるほどの大活躍で、エンゼルスファンだけでなく、米国大リーグファンのハートをとらえ、「Sho Time(翔平のショータイム)」、「Angels’ Shohei Ohtani:A Star Is Born(スター誕生)!」(9日のフォーブス電子版)」などと注目されています。こうしたなか、国内市場でも「大谷選手関連銘柄」が注目され始めました。
図表3は、大谷選手やエンゼルスとスポンサー(CM)契約やアドバイザリー契約を締結している7銘柄の一覧(参考情報)です。期待先行の部分もありますが、大谷選手が活躍するに連れ、7銘柄の月初来平均騰落率(+2.8%)は市場平均(TOPIXは+0.1%)より優勢となっています(12日時点)。大谷選手が活躍し続けることを願いながら、「大谷選手関連銘柄」の株価堅調にも注目したいところです。
図表3:大谷選手の大活躍で関連7銘柄の平均騰落率が堅調
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