先週、エネルギー資源の備蓄の管理や代替エネルギーの開発、気候変動の対応におけるエネルギー面での貢献等を協議する世界的な機関、IEA(国際エネルギー機関)が、2018年に米国の原油生産量が「爆発的に増加する」とレポートしました。

 特に2018年は、IEAのレポートのとおりに米国の原油生産量が増加した場合、原油価格が乱高下する可能性があると筆者は考えています。(参照レポート「過去100年間で最高!?歴史的水準まで増加する米国産原油」)

 米国の原油生産の動向は2018年の原油価格の行方を占うカギと言えます。今回はその米国の原油生産の歴史をテーマとしました。

以下は、筆者が作成した、米国の原油生産の歴史について説明した文です。

 穴埋め形式にしてありますので、ヒントをもとにトライしてみてください。解答は最後の問いの下にあります。

参考:米国の原油生産量 単位:万バレル/日量

出所:米エネルギー省(EIA)のデータより筆者作成


いくつ正解するかな? 米国の原油生産の歴史問題

問1:1850年代

 
【ヒント】
(1)    ペンシルベニア 、 テキサス
(2)    原油価格の上昇 、 外国資本の流入

問2:1900年~1950年ごろ

【ヒント】

(3)火力発電所の燃料 、 自動車の燃料
(4)セブンシスターズ 、 OPEC
(5)バルカン戦争 、 第一次世界大戦
(6)英国 、 ロシア
(7)フランス 、 オランダ

問3:1960年~1975年ごろ


【ヒント】
(8)    輸送の優先権 、 価格の決定権
(9)   スーパーメジャー 、 国際エネルギー機関

問4:2000年代

【ヒント】
(10)   石油パイプラインの整備 、 石油輸出入用の港湾の整備
(11)   脱パリ協定 、 脱中東
(12)   脱温暖化 、 脱中東
(13)   水 、 油

問5:2018年(予想)


【ヒント】
(14)    減産期間中 、 増産期間中

解答はコチラ

問1:1850年代

 米国にて世界で初めて本格的な掘削(原油を生産するための井戸掘り)が行われた。米国東部の(1)ペンシルベニア州ではじまった掘削をきっかけに、1900年ごろまで、掘削業者の増加・(2)外国資本の流入等で石油開発が飛躍的に進んだ。

問2:1900年~1950年ごろ

 それまでは石油の利用はランプ灯などの燃料が中心だったが、1900年ごろからはフォード社の発展により、(3)自動車の燃料として利用されるようになった。これをきっかけとして、米国だけでなく世界中に爆発的に石油の消費が拡大していった。このころの世界規模の石油会社はほとんどが米国資本の会社だった。

 当時の石油生産シェアの大半を占めた「スタンダード・オイル」は、1911年の「反トラスト法」の制定によって分割解体されたものの、解体後の会社は「エクソン」「モービル」(ともにエクソン・モービルの前身)や「ソーカル」(シェブロンの前身)を形成する元となった。

 また、他の米国資本の「ガルフ」や「テキサコ」(ともにシェブロンの前身)とともに、米国資本の石油会社は後に一時代を築く国際石油資本(4)セブンシスターズの中心的な存在となった。

 米国資本の石油会社が④セブンシスターズの中心的な存在として、世界の石油産業における立ち位置をさらに向上させるきっかけとなったのが、(5)第一次世界大戦での軍事需要の高まりと、戦後処理における中東での石油開発の本格的な始まりだった。

(4)セブンシスターズは、「ロイヤル・ダッチ・シェル」(6)英国(7)オランダ、「ブリティッシュ・ペトロリアム」(6)英国といった欧州資本の存在もあったが、米国資本の5社が優位を維持した。

問3:1960年~1975年ごろ

 1960年のOPEC設立、そして1970・80年代のOPECの勃興、非OPECであるロシアやブラジルの国営石油会社の登場などにより、(4)セブンシスターズの力は徐々に衰退し、数度の中東戦争などを機に(8)価格の決定権をほぼOPECに明け渡すこととなった。

 1973年の第四次中東戦争がその決定打となったが、世界の先駆けとして石油の生産をはじめてからここに至るまでの間で得た経験・技術は他国の追随を許さいない貴重な財産となった。

 このような経験・技術を活かし・さらに発展させ、現在でも「エクソン・モービル」「シェブロン」といった米国資本の石油会社は現在の(9)スーパーメジャーの一翼を担う重要な石油会社として存在し続けている。

 1850年ごろからのペンシルベニアでの開発開始以降、1973年ごろまでのおよそ120年間、米国が世界の石油産業を牽引したと言える。また、この間の米国の経済発展において、米国は石油産業とともに存在していたと言え、米国の近・現代の歴史は石油産業なしでは語れないといっても過言ではない。

 また、1973年は、トランプ米大統領が27歳の時だったが、トランプ氏が少年時代・青年時代、ビジネスマンと成長する中、米国が石油産業と共に発展していく様をどのように見つめていたのかは知る由もないが、おそらく、石油産業の偉大さ、自国と石油産業の関係の深さを感じていたと思われる。

問4:2000年代

 2017年1月に就任したトランプ米大統領が、「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」を謳ったが、それを米国の歴史とともに歩んできた石油産業の再興を一つの柱として推し進めようとしている可能性があるのは、前政権と異なり、トランプ大統領が、(10)米国内の石油パイプラインの整備(自国・隣国からの石油調達の拡大)、(11)脱パリ協定(石油消費の容認・需要の喚起)、(12)脱中東(自国の石油開発の促進、それによる雇用の創出)などの施策を進めているためである。

 2010年ごろから急速に開発が進んでいる「シェールオイル」も、このような政策面での後押しを受けている。

 シェールオイルは「非在来型原油」と呼ばれる。掘削した井戸から自噴あるいは圧縮した空気を送り込んで採集する方法ではなく、井戸に圧力をかけて⑬水を注入して地中の岩盤を破砕し、その岩盤の層に含まれる原油を採集する方法である。

 この方法による原油の生産は、米国の複数の箇所で行われ、その生産量の合計は米国の原油生産量(在来型+非在来型)のおよそ60%を超えている(2017年12月時点)。

 2017年初頭より、政策面での後押しに加え、原油価格が上昇しているため、シェールを中心として米国の原油生産量は飛躍的に増加している。そして2018年は、その増加が継続すると言われている。

問5:2018年(予想)

 米国の政府機関である米エネルギー省は、2018年2月に、米国の原油生産量が日量1,005万バレルに達するとしている。この量は、1970年11月につけた日量1,004万バレルを上回る、1920年1月以降の最高である。

 日量1,005万バレルを達成した場合、(14)減産期間中のために生産量を大きく増加することができないサウジアラビアの原油生産量とほぼ同等となる(サウジアラビアが2016年11月のOPEC総会で合意した減産期間中の生産量の上限は日量1,005万8000バレル。2017年1月の生産量は日量991万バレル)。

 このため、米国の原油生産量の増加が、“シェア争い”再燃のきっかけとなる可能性がある。

 

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