外国人が買えば上がり、売れば下がる日本株
外国人投資家は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売る傾向があるので、短期的な日経平均の動きはほとんど外国人によって決まります。
日経平均と外国人投資家の売買動向(買い越しまたは売り越し額、株式現物と日経平均先物の合計):2016年1月4月~2017年12月20日(外国人売買動向は12月8日まで)
2016年は年初から外国人の売りが急増し、日経平均は急落。2016年11~12月は、外国人の買いが急増し、日経平均は急騰しました。
2017年は、3月に外国人の売りが増えると、日経平均は下がりましたが、4月後半から、外国人の買いが増えると、一転して上昇しました。8月後半から外国人が再び売り越すと、日経平均は再び、下がりましたが、9月後半から、外国人が買い越すと、日経平均は一気に高値を更新しました。
このように外国人が日本株を動かす状態が、30年近く続いています。
先物を使う外国人は、株式現物を売買する外国人より、早く動く
今年9~12月の、外国人売買を、先物と株式現物に分けてみると、以下の通りとなっています。
外国人投資家による株式現物・先物売買動向、および日経平均の変動幅:2017年9月4日~12月15日(外国人売買動向は12月8日まで)
先物を使う外国人は、株式現物で売買する外国人より、早く動きます。9月前半は、先物が買い越しに転じ、日経平均が反発した後、株式現物が買い越しに転じています。10月後半~11月は、先物が売り越しに転じ、遅れて、株式現物が売り越しに転じています。
外国人投資家といっても、いろいろな種類があります。株式現物を買ってくるのは、海外年金やソブリン・ウエルス・ファンド(国家ファンド)などの長期投資資金です。買ってすぐに売ることはまれです。
ただし、日本株を買う外国人は、長期資金ばかりではありません。株価指数先物(日経平均先物など)を買う海外ヘッジファンドは、投機マネーです。日本株の上昇が見込める環境で、先物をどんどん買いますが、環境が悪化すると、すぐに売りに転じます。
外国人の売買動向が変わるか判断するには、先物の売買動向をしっかり見ている必要があります。
「裁定買い残」の変化に、外国人の先物買いの動向が表れる
私がファンドマネージャー時代に、日経平均先物のトレーディングをする上で、重視していた需給指標が、裁定買い残の変化です。詳しい説明は割愛しますが、裁定買い残の変化に、外国人による投機的な先物買いの変化が表れます。
外国人が先物を買うと、日経平均が上昇し、裁定買い残が増加します。外国人が先物を売ると、日経平均が下落し、裁定買い残が減少します。
近年の日経平均および裁定買い残は、以下のように推移しています。
日経平均と裁定買い残高の推移:2007年1月4日~2017年12月20日(裁定買い残は12月15日まで)
裁定買い残は、アベノミクス開始後の2013~2015年は3.5~4兆円まで増加すると、減少に転じていました。日経平均は、裁定買い残が増加している間、つまり外国人が先物を買っている間は上昇します。ところが、裁定残が減少に転じる、つまり外国人が先物売りに転じると、下落に転じます。
2013~2015年は、裁定買い残が、3.5~4兆円まで増加したところで、日経平均先物を売れば、タイミングよく日経平均が下げに転じ、利益を得られる可能性が高かったと言えます。
2013~2015年の部分を拡大したのが、以下の図です。
日経平均と裁定買い残高の推移:2013年1月4日~2016年1月8日
裁定買い残は、約3兆円まで増加。まだ警戒が必要なレベルとは考えていない
12月15日時点で、裁定買い残は、3兆542億円まで増加しています。裁定買い残が、近年のレンジ上限(3.5~4兆円)に達したわけではありません。すぐに警戒が必要なほど、裁定買い残が、ふくらんでいるとは考えていません。裁定買い残高が3.5~4.0兆円に膨らむ時は、売りを考えた方がいいと思います。
なお、裁定買い残高がいくらまで膨らんだら、日経平均が天井をつけるかは、その時々によって変わります。過去には、裁定買い残高が6兆円まで膨らんだこともあります。裁定買い残高だけで相場の転換点を知ることはできません。裁定買い残高と、マーケットに出ている外国人の動きに関するさまざまな情報を合わせて、判断していく必要があります。
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