2017年の買い主体:最大の買い手は日本銀行、次が事業法人

 2017年は外国人の大量買いで、日経平均が大きく上昇したと考えている人が多いと思います。確かに、高値をつけた買い主体は、外国人投資家です。ところが、2017年の1月からの累計で見ると、意外にも外国人の買い越しは、あまり大きくありません。

2017年の日本株買い主体

注:日本銀行は直接日本株を買っているわけではない。上記に記載しているのは日本銀行のETF買付額。日本銀行が買い付けるETFを組成するために、証券自己部門などが日本株を買い越す。プラスは買い越し、▲は売り越しを示す
出所:日本銀行のETF買付額は日本銀行、事業法人・海外投資家は東京証券取引所「二市場一・二部 投資部門別売買状況」

 今年、最大の買い手は、日本銀行(ETF買い付け)で5兆7,509億円を買い越しています。次が、事業法人(主に自社株買い)で、1兆1,724億円買い越しです。外国人の買い越しは意外と少なく、6,453億円です。

 本コラムでたびたび指摘している通り、日本株を動かしているのは外国人投資家。外国人は売るときは下値を叩き、買うときは上値を追って買うので、結果的に、日経平均が大きく動くときは、いつも外国人が主導しています。

 今年も、高値をつけた買いは、外国人でした。ただし、今年は外国人の売買が不安定で、大量に買ったり、売ったりを繰り返していました。その結果、年間での買い越し額は、さほど大きくありません。

 日本銀行は、日経平均が上昇した日は買わず、下落した日に買う傾向がきわめて顕著です。日経平均を動かしてはいませんが、集計すると、今年最大の買い主体となっています。事業法人の自社株買いは、日経平均の動きにあまり関係なく安定的に出ますが、日経平均が大きく上昇した10月は、売り越しになっていることからもわかる通り、マーケットを積極的に動かす買い方はしていません。

 結果的に、買い越し額は小さくても、2017年も外国人が日経平均の動きを決めていたことに、変わりありません。

 

2017年の売り主体:最大の売り手は個人投資家、次が投資信託

 2017年、最大の売り主体は、個人投資家です。東京証券取引所の統計では、5兆7,993億円売り越しています【注1】。

【注1】個人投資家の売り越し額
実際の売り越し額は、ここまで大きくはありません。個人投資家が、新規公開株を引き受けて、上場後に売却した場合、統計上買いはカウントされず、売りだけがカウントされます。5兆7,993億円から、個人投資家が新規公開株を引き受けた金額を差し引いたものが、本当の売り越し額となります。ただし、それでも、個人が最大の売り越し主体であることには、変わりありません。

2017年の日本株売り主体

注:プラスは買い越し、▲は売り越しを示す
出所:東京証券取引所「二市場一・二部 投資部門別売買状況」

 次に売り越しが大きいのが、投資信託の1兆2,246億円です。ほとんどが、個人投資家による投資信託の解約によるものです。つまり、売りはほとんどすべてが、個人投資家ということになります。

 ちなみに、2017年の最大の買い主体は日本銀行で、5兆7,509億円を買い越しています。ということは、簡単にまとめると、2017年は個人投資家が大量に売った日本株を、日本銀行がひたすら買いまくった年ということになります。

 ところで、個人・投信についで売り越しが多いのは、金融法人(信託勘定での売買を除く)です。金融法人と事業法人の間の株式持合いを解消する売りが続いています。

 2017年は、信託勘定は、小幅の売り越しでした【注2】。年金から、日本株にアセットアロケーション調整の売りが出たと推定されます。

【注2】信託勘定の売買
主に年金の売買が反映されます。日銀のETF買いが信託勘定の買いに反映されたこともありますが、最近は、日銀のETF買いは証券自己を経由して出ていることが多いと推定されます。

 

2018年も外国人と日銀が、需給面で重要な役割を果たすと考えられる

 2018年も、外国人が日本株の動きを決めることは、変わらないと考えられます。これからも、外国人の動きを、一番注意してみている必要があります。

 次に重要なのが、日本銀行です。年間6兆円規模の買い付けをいつまで続けられるか、注目が集まっています。

 日本銀行の黒田総裁は、2018年4月に総裁任期を迎えます。現時点では、そのまま続投する可能性が高いと考えられています。総裁人事がどうなるか、6兆円規模の買い付けをいつまで続けるか、2018年は、日銀の動向から目が離せません。

 日銀がETF買い付けを減らす、あるいは、やめるという話が議論されると、日本株の需給面で、不安材料となります。

 

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