【今日のまとめ】
- トランプが勝利した
- 税制改革から着手することがシグナルされた
- 株式市場参加者は大型減税に期待を寄せている
- イスラム過激派に対し、タカ派の政権になる
- OPECは団結力を高めた
- 米国経済は加速し、インフレ圧力は強まる
- シクリカル(市況株)に傾斜したポートフォリオにすること
大統領選挙が終わった
11月8日の米国大統領選挙が終わり共和党のドナルド・トランプが勝利しました。なお、前回のレポートで紹介した薬価に関するカリフォルニア州提案第61号はレファレンダム(住民投票)で否決されています。
輪郭が見えてきたトランプ政権の方針
ドナルド・トランプは選挙後、いち早く「税制改革にまず着手する」ということをシグナルしました。
アメリカで本格的な税制改革が行われるのは実に30年ぶりのことです。
しかも今回の減税額は5兆ドルともいわれており、そもそもアメリカの連邦政府の債務残高が19.4兆ドルであることを考えれば、これはとてつもない減税であることがわかります。
市場参加者は減税が大好きです。議会も税制改革が議題に上ると、他のことを全部後回しにして税制改革論議に熱中する傾向があります。
これが現在のアメリカのマーケットを突き動かしている、最も重要な材料です。
トランプは首席補佐官にラインス・プリーバス氏を任命しました。これはホワイトハウスを切り盛りする重要なポストで、ゲートキーパー(門番)の役目です。
ラインス・プリーバスはポール・ライアン下院議長と同郷で、親友です。
ポール・ライアンは、長く下院歳入委員会の委員長を務めました。
下院歳入委員会は国家の予算や税金に関する草案を策定するところであり、下院の数ある委員会の中でも最重要で、最もプレステージの高い委員会です。
ライアンは長年、その委員長を務めた関係で、およそ法案を成立させるためにはどのボタンを押せば良いか?を熟知しています。つまり、税制改革案を成立させようと思えば、ポール・ライアンの協力が絶対に必要になるのです。
しかしドナルド・トランプとポール・ライアンは選挙期間中に反目し合いました。だからトランプが当選すると「ライアンの政治生命は終わった」と考えた人が多かったです。
しかしトランプは即座にライアンを盛り立てる方針をシグナルし、下院と協力して税制改革に取り組む姿勢を明確にしたのです。
株式市場がこれを好感したことは、いうまでもありません。
トランプの外交政策
これを書いている時点で、外交の要となる国務長官のポストは未だ誰になるか発表されていません。
しかしこれまでに発表された人事を見ると、かなりタカ派であることがわかります。
まずCIA長官にはマイク・ポンペオが指名されました。ポンペオはウエストポイント(陸軍士官学校)を卒業した後、従軍、ハーバード・ロー・スクール時代には、「ハーバード・ロー・レビュー」という学術誌の編集長を務めました。このポストはたいへんプレステージのある地位で、たとえばオバマ大統領も編集長を務めたことがあります。
そのポンペオは、イランの「六か国核合意文書」に反対の立場を取っています。折角、2017年からイランとのビジネスを再開しようとしてきたアメリカの銀行や実業界は、この人事を見て、イランとの商談に尻込みしています。
次に国家安全保障補佐官にはマイケル・フリンが指名されました。彼は陸軍中将としてアフガニスタンなどで従軍しました。
フリンは民主党の所属です。オバマ大統領から国防情報局長官に任命されたものの、アメリカのイラク政策が「ぬるい」と批判し、オバマ大統領から疎まれ、解任された経緯があります。
フリンは「イスラム過激派との戦いは、ちょうど冷戦がそうであったようにアメリカの全軍事力、経済力を傾ける必要がある」という意見を持っています。そして現在、アメリカが友好国と考えているサウジアラビアなどに対しても、イスラム過激派に「隠れ家」を提供した場合は、厳しく接するべきだと主張しています。
11月30日の石油輸出国連合(OPEC)総会で、減産が決まった背景には、回教国が多いOPECが、トランプ政権のタカ派的な人事を見て、(減産カードを持つことで交渉力を高める必要がある)と感じたことを反映していると言えます。
米国経済は加速
トランプは1兆ドルにのぼるインフラストラクチャ投資計画を公約しています。具体的な内容は明らかにされていませんし、その財源も明示されていません。
しかし上述の減税と合わせて考えれば、アメリカ経済にとってこれらの政策は極めて景気支援的であると言えます。
したがってGDP成長率は、今後上昇すると考えるのが自然です。
さらにOPEC減産合意が成立したこともあり、今後はインフレ・プレッシャーが一段と高まると予想されます。
つまり投資戦略を策定する上で、よりシクリカル(市況的)なセクターに傾斜したポートフォリオを心掛ける必要があるのです。
ポートフォリオ戦略
以上のような理由から、目先はエネルギー株、建設株、素材株、工業株などが良いと思います。
長期金利の上昇は、銀行の利ザヤの拡大を意味するので、メガバンクの株も良いと思います。
反面、REIT、公共株などのデフレ局面で人気化するセクターは避けた方が良いです。さらにネット株やバイオテクノロジー株もインフレ局面では打たれやすいので、避けた方が良いでしょう。
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