前回、プロ投資家の行うファンダメンタル分析では、個人投資家が参考にする企業発表の業績予想は用いていないという事実をお伝えしました。では個人投資家はプロ投資家に勝てないのかと言えばそんなことはありません。少し工夫することで十分勝負できます。

企業側から提示される情報の格差は明らかに縮まっている

多くの企業は、「アナリスト・機関投資家向け決算説明会」を開催しています。そして、プロ投資家はそれらに参加してより詳しい情報を企業から得ています。一方、「個人投資家向け決算説明会」を開催する企業はまだまだ少ないのが実情です。

でも、多くの企業では、ホームページにおいてアナリスト・機関投資家向け決算説明会の資料が閲覧・ダウンロードできるようになっています。企業によっては、決算説明会の様子を動画で視聴できるところもあります。

証券会社所属のアナリストが作成する各個別企業のアナリスト・レポートも、個人投資家が目にすることができる機会が増えています。

このように、企業側から提示される情報についてのプロ投資家と個人投資家との格差は、昔に比べて格段に縮まっています。

そのことと個人投資家がプロ投資家並みのファンダメンタル分析ができるかどうかはまた別問題ですが、ファンダメンタル分析を行う能力に長けた個人投資家にとっては、昔より明らかに成果を出しやすくなったといえます。

また、個人投資家が行うファンダメンタル分析は精度が低いとはいえ、やらないよりは絶対やった方がよいです。簡単なファンダメンタル分析を行うだけで、例えば倒産リスクの高い銘柄を排除することができます。

実はプロでも2年後、3年後の企業業績を正確に予測することは難しい

プロ投資家は当期・来期だけでなく、再来期以降の企業業績を独自に予測したうえで、その企業に投資するかどうかを決定しているという点は前回のコラムでご説明したとおりです。

では、プロ投資家が2年後、3年後、5年後の企業業績を「正確に」予測することはできるかというと、決してそんなことはありません。プロ投資家がどんなに頑張っても、やはり未来の予測は困難なのです。

結局、当期・来期の業績予想がそれほど良くないのに株価が上昇を続けているのは、再来期以降の業績が大きく伸びるからではなく、再来期以降の業績が大きく伸びると「予想」しているプロ投資家が多いからなのです。

プロ投資家が叡智を絞って3年後の企業業績を予測したとしても、外れることは多々あります。プロ投資家の叡智を結集した予測でさえ外れることが多いのなら、時間もなく能力もプロにかなわない個人投資家が、プロ投資家が行うような本格的なファンダメンタル分析を無理に行う必要などないのではないか、というのが筆者の考え方です。

ではどうするかと言えば、自分ができる範囲のファンダメンタル分析をしつつも、株価トレンド分析を組み合わせます。上昇トレンドになったら新規買いして、上昇トレンドが続く限り保有継続します。下降トレンドになったら保有株は売り、下降トレンドが続く限り新規買いは見送ります。

個人投資家はプロの「叡智の結集」に基づく行動に乗せていただく

多くのプロ投資家が「この銘柄は将来大化けするかもしれない」と思った銘柄は、じわじわと株価が上昇していきます。プロ投資家1人ひとりは、自らの買いで株価が急騰しないよう、2カ月とか3カ月程度かけてゆっくりと買い仕込むことが一般的です。でも、それを他の多くのプロ投資家が行っていたなら、どうしても買い需要が売り需要より多い状況が続きますから、株価は上昇を続けてしまいます。

ですから、私たち個人投資家が「この銘柄は素晴らしい」と思った銘柄があれば、その銘柄の株価チャート(できれば日足チャート)を毎日チェックしてください。もし、同じようにその銘柄を素晴らしいと思っているプロ投資家が増えてくれば、下降トレンドにある株価が上昇トレンドに転じ、そこから長期間株価の上昇が期待できます。そこで、上昇トレンドに転じたらすぐに新規買いをすればよいのです。

また、すでに株価が上昇を始めていたときは、株価が25日移動平均線から大きくかい離(10%以上)していなければ飛び乗ってしまえばよいと思います。

ポイントは、どんなに自分が「この銘柄が素晴らしい」と思っていても、下降トレンドの間は手を出さないという点です。他の投資家も同様に「素晴らしい」と思ってくれなければ株価は上昇せず、その結果上昇トレンドにならないからです。独りよがりにならないよう注意しましょう。

個人投資家は「ファンダメンタル分析+トレンドに応じた売買」が現実的

以上をもとに、個人投資家が取るべき戦略をまとめると次のようになります。

  • 個人投資家の行うレベルのファンダメンタル分析も決して無意味ではないので大いに行うべき
  • ただし、個人投資家のファンダメンタル分析は精度が低いので株価トレンド分析を組み合わせ、上昇トレンドの間は新規買い及び保有継続、下降トレンドの間は保有株は売り、新規買い見送りとする
  • プロ投資家も買っている銘柄であれば、必ず株価が上昇トレンドになるため、自分が「これは将来有望」と思う銘柄については毎日株価チャートをチェックし、上昇トレンドの初期段階で新規買いできるようにしておく

実は、一歩も二歩も踏み込んだファンダメンタル分析を実行しているプロ投資家であっても、「見込み違い」で損切りを余儀なくされることが多々あります。もともとファンダメンタル分析の精度でみれば個人投資家はプロ投資家にかなわないですし、プロ投資家のファンダメンタル分析も外れることが良くあるのが実情です。

ですから、自分で可能な範囲のファンダメンタル分析を実行し、売買のタイミングは株価トレンド分析により見極める、という投資スタイルが個人投資家には向いているのではないかと思います。

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