想定外の大幅下落が生じたときはどう対応するのか?

前回のコラムでは、最後にこんな質問をしました。

<問2:買い下がりの予定株数を買い終わった後、さらに株価が大きく下がったらどうするのですか?>

実は、逆張り投資ではこうしたシチュエーションのときどのように行動するかが、自身の投資成績を大きく左右することにつながるのです。

上記の問2に対して想定される解答は次の通りです。

  • すでに予定株数を買い終わった後なので、その後は株価が下がっても何もせず持ち続ける
  • そこまでの株価下落は想定していないので、異常事態ととらえて持ち株は売却する
  • 予定外の下落であるが、さらに安く買えるチャンスであるので買い増しを行う

筆者は原則として逆張りをしませんのでこうした事態にはよほどのことがない限り遭遇しませんが、もし自分がこのような状況に置かれたとしたら②の行動を取ると思います。

長期下落相場に転じたら逆張り買いはどうなる?

①の場合、株価が自身の想定を超えるレベルの下落をした場合は含み損を抱えた塩漬け株が生じてしまう危険性が高まります。もし、その株価下落がパニック売りによる一時的なもので、その後株価が戻るならば事なきを得ます。しかし株価の大きな下落が長期的な下落相場に発展した場合、含み損を抱えたまま持ち続けることになりかねません。

②については、予想外の緊急事態ととらえ、保有株を売却することでその後のさらなる損失発生を防ぐことができます。大きな損失を出さないという意味では筆者として共感できますが、そもそも下降トレンドにある株を逆張りで買わなければこうした事態に陥ること自体が防げたはずです。

③については、もともとの計画(株価が下げても一定数量を買い下がる)と異なった行動をしている点で、非常に危険であるといえます。いうなれば、③の行動は「無計画なナンピン買い」です。これを本格的な下落相場の初期段階から続けると、最後には資金が枯渇して含み損を抱えた塩漬け株ばかりになってしまうことは、バブル崩壊後の日本株で多くの個人投資家がいやになるほど経験したはずです。

9勝1敗でも資産半減の恐れすらある逆張り投資

筆者が順張りを徹底している背景には、逆張りを行った結果、自身の想定を超える大幅な株価下落に見舞われたとき、何も手だてを打つことができないという点があります。逆張りは株価が下がる中を「安く買える」と喜んで買い向かうわけですから、順張りのように「株価が下がったら損切り」という発想になかなかなりにくいのです。

確かに、自身の想定を超える大幅な株価下落というものはそう頻繁に起こるものではありません。今のような長期上昇相場であれば、一時的に株価が調整してもすぐに戻しますから、調整局面は逆張りでの買いチャンス、ということにはなります。

でも、株式投資というものは、例え9勝1敗であっても、その1敗が大きいものであれば、資金があっという間に半分とか3分の1になってしまいます。もし、いつまでも逆張りを続けていれば、長期下落相場に転じたことに気づいた時点では、すでに資金は半減している可能性も大いにあります。

逆張り買いを続ける個人投資家の末路は「いつか来た道」か?

投資主体別売買動向をみると、アベノミクス相場が始まって以降の大きな流れとして、個人投資家は一貫して売り越しです。ただし、株価が一時的に調整する局面では買い越しに転じる局面がよく見られます。現時点では、調整局面で逆張りの買いを入れた個人投資家は結果として成功を収めています。

でも、今後株価が人知れず天井をつけて下落に転じた場合、おそらく個人投資家は同じように株価下落局面を「押し目買いのチャンス」として逆張りの買いを続けるでしょう。そして、それまでと違って株価が下げ止まらないとしても、「今回は押し目が深いな」と思いつつ、安く買えるからラッキー、とすでに天井をつけてしまった株を買い下がってしまうでしょう。

筆者には、将来日本株が再度長期的な下落相場に突入したとき、バブル崩壊により日本株が天井をつけたにも関わらず「押し目買い」を続けた個人投資家が、塩漬け株のオンパレードで身動きが取れなくなったのと同じ光景を想像せずにはいられません。上記の①や③は、まさにバブル崩壊後の日本株における個人投資家の典型的な失敗パターンだからです。

逆張り投資の成功の秘訣は「ファンダメンタル分析の精度向上」だが・・・

実は、逆張り買いで成果をあげている個人投資家には共通点があります。それはファンダメンタル分析をしっかりと行っているという点です。つまり、例え日本株全体が長期下落相場に突入したとしても、業績が伸び続け、株価も右肩上がりに上昇する可能性が高い銘柄を見つけ、逆張りで安いところを買っているのです。

しかし、ファンダメンタル分析をしっかりと行うことのできる個人投資家は非常に少ないのが実態です。ファンダメンタル分析をしっかりとせずに何となく逆張りを行っている個人投資家は、上でお話ししたような事態に陥ってしまう可能性が高いと思います。

筆者は、せっかく株式投資で増やしてきた資金を半減させたくはありません。ですから7月8日~9日の急落場面で逆張り派の個人投資家が安値で買い仕込むことができたとしても、別に羨ましくありません。そして、売却した銘柄を今後多少高く買い戻さざるを得ないとしても、仕方ないことだと割り切っています。なぜなら、株式投資で最終的に大きな利益を得るためには、上昇相場でいかに利益を上げるかよりも、下落相場でいかに損失を抑えることができるかどうかの方が、はるかに大事なことであると、長年の投資経験から身をもって実感しているからです。

上昇相場が長く続くとなかなか理解してもらえないかもしれませんが、筆者が本コラムや著書等でお伝えしたいのは「致命的な大失敗を避ける」こと、これがすべての根底にあることはぜひご理解ください。