1月28日の夜、スカイマークは民事再生法の適用を申請し、経営破たんしました。アベノミクス相場が始まって以降、多くの上場企業の業績も回復していた中での久しぶりの大型倒産でした。

今回のコラムでは、このスカイマークの経営破たんを踏まえ、筆者が個人投資家の皆さまへお伝えしたいことをいくつか書き綴っていきたいと思います。

スカイマークの経営破たんは事前に予想できたか?

スカイマークの経営破たん、果たしてこれを事前に予想することができたでしょうか。まずはスカイマークの業績をチェックしてみましょう。直近4年間の業績の推移(2015年3月期は予想数値)は以下のようになっています。(単位:百万円)

  売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月期 80,255 15,283 15,747 7,705
2013年3月期 85,943 4,674 8,091 3,778
2014年3月期 85,975 ▲2,506 ▲403 ▲1,845
2015年3月期(予) 88,295 ▲12,428 ▲11,582 ▲13,676

(四季報を基に作成)

2012年3月期は営業利益が150億円、当期純利益も77億円と過去最高益を達成しました。しかし2013年3月期は大幅な減益、そして2014年3月期は赤字に転落しています。2015年3月期は140億円近い大赤字が予想されていました。

データは割愛しますが、2014年9月末時点で有利子負債はゼロ、利益剰余金も100億円以上あり、財務面だけをみると一見問題なさそうに見えます。でも、やはり大赤字というのは経営破たんの兆候として最も注意すべきシグナルの1つです。大赤字はそれまでの健全な財務面をも大きく毀損することにつながるからです。

そして最も注目すべきは、決算書に「継続企業の前提に疑義の注記がある」という点です。この注記がある銘柄は、他の銘柄よりも経営破たんのリスクが高いことを端的に表しています(詳しくはこちらのコラムをご覧ください)。もちろん、業績が急速に改善するなどして疑義の注記が解消されることもありますが、少なくとも現時点では経営破たんの危険性があることが、十分に予測できるのです。

また、経営破たん直前までの日足チャートをみると、破たんの1週間以上前から株価は25日移動平均線を割り込んでいました。仮に昨年12月~今年1月はじめの株価上昇時に買っていたとしても、株価が25日移動平均線を割り込んだ後速やかに保有株を売却したならば、今回の経営破たんによる株価急落を回避することができました。

以上より、スカイマークの経営破たんを100%事前に予想するのは不可能であるものの、経営破たんの危険性は高いという認識を持つことはできた、そして経営破たんが発表される以前に保有株を売却しておくこともできた、というのが筆者の見解です。

初心者・初級者は継続企業の前提に疑義の注記がある銘柄をできるだけ避ける

ところで、継続企業の前提に疑義の注記がある銘柄であっても、その後の業績次第では注記の記載対象から外れ、株価も大きく上昇することが珍しくありません。よって、リスク管理をしっかり行うことができる中級者以上であれば、リスクが高い点を承知の上、こうした銘柄へ投資することも立派な戦略の1つです。

とはいえ、リスクが高いことは間違いありませんから、経営破たんにより投資資金がゼロになってしまうことも考慮に入れた上での投資戦略を立てることが重要です。

筆者も継続企業の前提に疑義の注記がある銘柄を買うことはありますが、できるだけ小さい資金、最高でも投資可能資金全体の0.5%以内にとどめるようにしています。いつ経営破たんが生じて投資資金がゼロになってしまっても痛手が小さく済むようにするためです。

一方、初心者、初級者の方は、大赤字であったり、継続企業の前提に疑義の注記がある銘柄については、専門家が買い推奨していたとしても安易に手を出すべきではないと思います。

実際、ある株式投資サイトにおいて、経営破たんの可能性は低いとしてスカイマークを買い推奨していた専門家もおり、これを信じてスカイマーク株を購入した個人投資家の方もいたでしょう。でも、その結果経営破たんにより多額の損失を被ってしまっても誰もその損失を補てんしてはくれません。

初心者、初級者の方は、リスクの高い銘柄はできるだけ避けるべきです。それよりも好業績で株価も右肩上がりの銘柄を買っておいた方がよっぽど安心です。

業績悪化銘柄の決算発表直前には要注意

今回のスカイマークの経営破たん発表は、第3四半期決算発表予定日の前日の夜でした。

実は、決算発表の直前に経営破たんを発表するケースは珍しくありません。意外に思うかもしれませんが、会社更生法や民事再生法を申請することにより経営破たんする場合、企業内にある程度のキャッシュが残っている必要があります。経営破たんするのにもお金がかかるのです。

もし、大赤字の決算発表をしたり、決算発表で多額の債務超過に転落したら、投資家だけでなく取引先までもが経営破たんの危険性を強く感じ取ってしまいます。取引先の中にはその後の取引を中止したり、現金での即時決済を要求してくるところも出てくるでしょう。このような動きが強まれば、まともに事業を継続することができなくなってしまう恐れがあります。銀行も新規融資はしてくれないでしょうし、逆に貸し付けたお金の回収に走るでしょう。そうなると、瞬く間に資金繰りに窮してしまうことになります。

でも、ひとたび会社更生法や民事再生法の適用を申請すれば、債権者に対するお金の支払いはストップされ、ひとまずその時点で企業が有する財産は保全されることになります。

そのため、決算発表を間近に控え、「この決算を発表してしまったらたちまち資金繰りに窮してしまう恐れが高い」ことが分かった段階で、自力での再建をあきらめ、会社更生法や民事再生法といった法的整理の道を選ぶことになるのです。

ですから、特に業績が大きく悪化していたり、債務超過に陥っているような銘柄については、決算発表直前の突然の経営破たんリスクには十分に注意しておいた方がよいと思います。

自身がデイトレードに向いているかどうかを試す格好の機会

スカイマーク株は3月1日で上場廃止となります(最終売買日は2月27日)。経営破たんにより上場廃止となる銘柄は、その多くが最終売買日までに株価が1円まで下落します。そして、上場廃止後は売買ができなくなり、最終的には株は紙くずになります(100%減資の場合)。

経営破たんにより上場廃止が決まった銘柄は、ファンダメンタルで株価が動く要素はほぼゼロとなり、需要と供給だけで株価が動く「マネーゲーム」状態となります。

デイトレードは、日々の株価の変動をうまく掬い取って利益を積み重ねるスタイルです。ポジションを翌日以降に持ち越さずに当日中に売買を完結させるため、株価が下がった場合はできるだけロスの小さい段階で損切りをすることが求められます。

通常の銘柄の場合、損切りができなくとも保有を続けていれば、時には買い値まで戻って命拾いするかもしれません。しかし、経営破たんをした銘柄は、損切りを躊躇していると最後には株価は1円にまで下がってしまい、買値まで戻ることは二度とないのです。

このように、しっかりと損切りをしないと投資資金が限りなくゼロになってしまうというシビアな状況でマネーゲームが繰り広げられるのが、経営破たん銘柄です。もし、経営破たん銘柄でデイトレードを繰り返し、しっかりと利益を得ることができるようであればデイトレードの素質は十分に備わっているといえます。逆に、大きく損失を出してしまったり、損切りできずに保有を続けてしまうようであれば、デイトレードには向いていないと判断できます。

したがって、経営破たん銘柄のデイトレードは、自分がデイトレードの適性を持っているかを知るための格好の機会となるのです。デイトレードに興味のある方は、試してみてはいかがでしょうか。