今回は前回の続きとして、思惑で株価が動く銘柄の見つけ方や売買方法などについて、筆者の実践を踏まえてお話していきます。

株価が大きく上昇する前にその銘柄に気づくことが大切

いくら画期的な新製品の開発という思惑で株価の大きな上昇が期待できるとしても、すでに株価が底値から10倍、20倍と上昇してしまった状態で新規買いするのは、さすがに抵抗がありますし、勇気がいります。何よりも高値掴みの危険性が格段に増します。

思惑で株価が大きく上昇した銘柄は、下落するときもあっという間に大きく下がります。特に損切りができない個人投資家は、高値掴みは大ケガにつながりかねません。

ですから、まだ株価が大きく上昇する前の段階で、その銘柄が有する思惑や好材料を知り、できるだけ早く新規買いしておくことが重要です。

特に、株式市場では「旬なテーマ」を好みます。そのテーマに合致した銘柄の株価は大きく上昇することが多いのです。昨年前半はバイオ関連株やスマホ向けゲーム関連株がテーマとなりましたし、最近はLINE関連、ロボット関連、水素ステーション(燃料電池車)関連の銘柄の株価が急上昇しました。

またテーマ性のある銘柄は、大天井をつけるまでは、一旦株価の上昇が止まっても時間を置いて再び株価が動意づくことも多々あります。

したがって、旬のテーマ・材料を有する銘柄の株価の初動にできるだけ早く気づくことが大切です。
そのために必要なことはつぎのような点です。
・テーマ性のある銘柄をあらかじめリストに入れておき日々の株価をチェックする
・日々の株価上昇率上位銘柄をチェックし、どのような理由で株価が上昇したのかを確認する(テーマ性のある銘柄は同じ日に大きく買われることが多いため)。

どれだけ下準備していても、急上昇銘柄を安値圏で買うことは運の要素もそれなりにあります。急騰した銘柄の一部でもうまく乗ることができれば、それで十分としましょう。底値から大きく上昇したところで飛び乗ると、高値掴みになるリスクが格段に高まりますので、あまり欲張らないことが肝要です。

あくまでも基本はトレンドにのっとった売買

いくら株価急騰の可能性を秘めている銘柄であっても、あくまでも基本は株価のトレンドにのっとった売買であることを心得ておきましょう。

例えば、ロボットスーツを開発しているCYBERDYNE(7779)は、前評判も非常に高く、足元の業績は赤字だが今後業績の飛躍的な伸びが期待される、まさに思惑で株価が動く典型的なパターンでした。

ところが、株価は上場直後に高値をつけた後下落に転じ、高値からの下落率は50%を超えました。将来性抜群と考えて上場直後に新規買いした投資家は、損切りをしなければたちまち大きな含み損を抱えることになってしまったのです。

しかし、株価が過熱しやすい新規公開直後の飛びつき買いを避け、日々の株価をウォッチしていると、6月に株価が25日移動平均線を下から上に突き抜け、それまでの下降トレンドから上昇トレンドに転じたと思われるタイミングで新規買いすれば、6,000円台で買うことができたのです。上場直後に10,000円前後で買うのと、6,000円台で買うのとでは、すでに買いコストの面で大きく投資成績に差がついていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

なお、CYBERDYNE株は上場直後の高値を超えましたので、上場直後に新規買いした後保有を続けていれば含み損は解消しましたがこれは結果論に過ぎません。今後同じようなことを繰り返せば、いつかは痛い目にあうことになりますから十分気を付けてください。

思惑が事実に変わっても必ずしも直ちに売る必要はない

また、株価上昇の初期段階でうまく買うことができた銘柄について、事実が確認できたからといって必ずしも株価が下落するとは限らない点にも注意が必要です。思惑で株価上昇→事実確認でさらに株価上昇、ということもあるのです。最近ではミクシィ(2121)のように、投資家が思っていた以上に業績の改善がすごかった、というケースです。

その場合も、株価のトレンドを基準に売買を判断していけば問題ないでしょう。事実確認後、株価が下落に転じれば、トレンドも下降トレンドに転じますのでその段階で利食い売りをします。逆に、事実確認後も株価が堅調な動きだとすれば、格言通りにすぐに売ってしまうのではなく、上昇トレンドが続く限りは保有をすることで、機会損失を防ぐことができます。あまりにも株価が急騰した場合は、下降トレンドへの転換を待たずに持ち株の一部利食いも良いでしょう。

時には「あきらめ」も必要だが…

トレンドに従って売買する限り、下降トレンドの銘柄には投資しないのが基本です。でも、下降トレンド真っ只中にある銘柄に好材料が突然出現し、その後ストップ高買い気配の連発で買うに買えなかった、ということも時には生じます。直近ではそれまでの軟調な値動きから突如18日にストップ高になったアスカネット(2438)があります。そんな時は「この銘柄には縁がなかった」と思って潔くあきらめましょう。

もし、そうしたことを絶対に避けたいというのであれば、株価のトレンドにかかわらず、常に一定数量を保有していることが必要になります。しかし、それでは株価が下落すれば含み損を抱えることになりますから、リスクの高い行動であることは間違いありません。それでも良いからこの銘柄の上昇を取り逃すことだけは絶対に避けたい、というのなら、自身が納得できる最低限の数量は常に持っておくのも1つの戦略ではあります。

もう1つ、高値掴み覚悟で飛び乗る、という方法もあります。短期的な急上昇後の飛び乗りは損切り価格の設定が難しいこともあり、筆者はあまりお勧めできませんが、どうしても欲しい銘柄であればやむを得ないでしょう。