執筆:窪田真之
- 日経平均の13週・26週移動平均線がゴールデンクロス。日経平均に底入れ機運。ただ、17,000円・17,600円の節目を抜けて上昇するには、出来高がまだ不足。
- 年内に米利上げが実現すれば、1ドル105円に向けて円安が進み、日経平均は18,000円を目指すと予想。米景気指標はそこそこ堅調で、年内に米利上げが実現する期待が続いているものの、米景気の回復力は鈍く、年内の利上げが決定的な状況とは言えない。
(1) 日経平均週足を見ると、上値トライの準備を整えつつあるように見えるが、戻り待ちの売りをこなすには出来高が不足
日経平均週足:2015年1月5日―2016年10月7日
上の週足をご覧いただくとわかる通り、日経平均は、二番底(15,000円を割れたところ)をつけてから反発局面に入りつつあります。9月末には、13週移動平均線が26週移動平均線を下から上へ抜ける「ゴールデンクロス」が出ています。テクニカルで見ると、底打ちの兆しが出ています。
ただし、一本調子の上昇は期待しにくいところです。なぜならば、上値(17,000円と17,600円)に戻り売りのターゲットとなる節目が控えているからです。
日経平均週足(再掲):2015年1月5日―2016年10月7日
上の週足をご覧いただくとわかる通り、日経平均は、1月以降、15,000-17,600円の範囲でボックス相場に入っています。最近は、値動きが小さくなり、16,000-17,000円の範囲でやや膠着感が出ているところです。
上値をトライしようとしても17,000円で打ち返される一方、下値をトライしようとしても16,000-16,500円で打ち返される展開が続いています。
(2)1ドル100円でも日本の企業業績は堅調
今でも、日本株市場をめぐるリスク材料が多い状況は、変わっていません。ただ、投資家は、個々のリスクに対して、パニックにならず、冷静に影響を見極める姿勢に変わってきています。
以下に、今年前半の日本株を急落させた恐怖要因を羅列します。
- 円高(1ドル100円)への恐怖
- 資源バブル崩壊への恐怖
- 米景気失速への恐怖
- 中国景気失速への恐怖
- ドイツ銀など欧州銀行の信用不安への恐怖
- ブレグジット(英国のEU離脱)への恐怖
- ドナルド・トランプ大統領登場への恐怖
- 中国の海洋進出・北朝鮮の暴走・ISテロの広がりへの恐怖
①~⑧の中で、日本株に一番大きな影響を与えたのは、円高への恐怖です。昨年度(2016年3月期)の平均為替レートは、1ドル120.04円でした。一気に20円近く円高が進んだ今年度(2017年3月期)は、円高が企業業績の大きな減益要因となっています。
ただし、今後、1ドル100円が定着したとしても、今期(2017年3月期)の全産業ベース最終利益(純利益)は、小幅の増益を維持できると予想しています。一時1ドル100円まで円高が進んだ割りに日本の企業業績見通しは堅調といえます。
(3)年内の米利上げが実現すれば、円高圧力は低下する見込み
日経平均が上値トライできない最大の理由は、現時点で、1ドル100円を割れる円高が進むリスクを完全には払拭できないことにあります。私は、年内に米利上げが実現するならば、1ドル105-107円へ円安が進み、日経平均は18,000円以上へ上昇すると予想しています。
ただし、年内に米利上げができなくなると、1ドル100円を割れる円高が進む可能性もあります。鍵を握っているのは、米景気です。
先週、米雇用統計およびISM景況指数が発表になりました。ISM景況指数が強く、米利上げを後押しする材料となりました。ただし、米雇用統計は、事前の市場期待を下回りました。米雇用統計は、期待以下ではありましたが、アメリカの雇用市場が堅調であるとの見方を覆すものではありませんでした。結果的に、年内に米利上げが実現するとの期待はキープされました。
米ISM製造業・非製造業景況指数の推移:2014年1月―2016年9月
ISM製造業景況指数は、8月に景況感の分かれ目である50を割りましたが、9月は51.5と、50を回復しました。8月に低下したISM非製造業景況数も、9月は大きく反発しました。
米雇用統計:2014年1月-2016年9月
雇用統計では、非農業部門の雇用者増加数が、利上げ判断に一番大きな影響を与えます。8-9月は、米景気が好調と判断される20万人増を下回っています。ただし、15万人以上の増加が続いており、失業率が低水準にあることも併せて考えると、米雇用情勢はそこそこ堅調といえます。
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