執筆:窪田真之
今日は、先物について日頃寄せられる疑問に答えます。先物を見ていない読者には関心のない内容になるかもしれません。今日のレポートは、以下のレポートの続編です。
9月14日「日経平均先物12月限を見るときの注意点」
今日のポイント
- 日経平均先物12月限の理論値は、9月27日までは、日経平均よりも130円低い水準である。9月27日までは、先物12月限が日経平均よりも130円程度低い値で推移していたが、それは先安感を表しているのではない。理論値どおりに値がついているだけである。
- 9月28日は、9月中間決算の権利落ち日である。9月に中間決算を迎える銘柄を、9月28日に買っても、9月中間決算の配当を受け取る権利は得られない。そのため、先物12月限の理論値は、28日から日経平均とほぼ同値となる。今後は、先物12月限と日経平均はほぼ同値で推移する。
(1)先物12月限は、9月27日までは日経平均より約130円低い水準、28日以降は日経平均とほぼ同値となる
今日の説明は、難解と思います。結論だけお読みいただければ、後半の説明まで、全部読んでいただかなくても問題はありません。
以下の結論①―⑤の中で、特に大切なのは、①と④です。①と④だけ頭に入れておいていただければ、OKです。
- 日経平均先物12月限の理論値は、9月27日までは、日経平均の値を約130円下回る。その間、先物12月限が日経平均より130円低い水準にあっても、それは、先安感を表しているのではない。理論値通りに値がついているだけである。
- 日経平均先物12月限の理論値は、9月28日以降は、日経平均とほぼ同値となる。9月28日から12月限の最終売買日である12月8日まで、先物12月限と日経平均は、ほぼ同じ価格で取引されることになる。
- 12月9日から、先物は3月限を中心に見ていくことになる。日経平均先物3月限の最終売買日である2017年3月9日まで、先物3月限と日経平均は、ほぼ同じ価格で取引されることになる。
- 2017年3月10日から、先物は6月限を見ていくことになる。日経平均先物6月限の理論値は、3月28日までは日経平均を146円下回る水準となる見込みである。その間、先物6月限が日経平均より146円低い水準にあっても、それは、先安感を表しているのではない。理論値通りに値がついているだけである。(注)理論値が146円低い水準になるというのは現在の予想で、その時の日経平均の水準や配当見通しによって変わる。
- 日経平均先物6月限の理論値は、3月29日以降は、日経平均とほぼ同値となる。3月29日から6月限の最終売買日である6月8日まで、先物6月限と日経平均は、ほぼ同じ価格で取引されることになる。
(2)実際の値動きをチェック
それでは、上の結論①と②について、具体例を見てみましょう。
日経平均先物(12月限)と日経平均の終値とその差額:2016年9月9日―9月28日
日経平均先物(12月限)は、27日までは、日経平均よりも130-140円低い水準にあることが多いことがわかります。上の表は、終値での比較ですが、日中の価格も、常に先物が現物を130-140円下回っています。
これを見て、「先物市場に先安感がある」と解釈する人がいますが、それは誤りです。先物(12月限)は、実際には、理論値通りに値がついているだけです。
9月28日からは、先物12月限の理論値は、日経平均とほぼ同値となります。28日の日経平均は前日比218円下がりましたが、先物12月限は前日比80円安でした。その結果、先物と日経平均の値段差は5円に縮小しました。
(2)なぜ、9月27日まで先物12月限の理論値は、日経平均より130円程度低い水準となるのか
理由は、9月中間決算での配当金にあります。それを1つの例で説明します。
9月9日から、12月8日まで、日経平均に投資したい投資家がいたとします。その投資家には、2つの方法が選択可能です。
- 日経平均の採用銘柄すべてを、指数構成比通りに買う方法
- それと同じ金額の日経平均先物(12月限)を買い建てする方法
①と②の場合で、リターンを比較しますと、以下の通りになります。
- 9月9日―12月8日までの日経平均の騰落 + 9月中間決算の配当金
- 9月9日―12月8日までの日経平均の騰落のみ
9月中間決算の中間配当金は、日経平均1単位に対して130円程度と予想されています。つまり、9月9日―12月8日まで日経平均に投資する場合、現物を持っていた方が、配当金(130円)分リターンが高くなると考えられるわけです。したがって、日経平均先物(12月限)の理論値は、130円程度、日経平均より低くなるわけです。
ただし、9月28日以降は、理論値が、日経平均とほぼ同値となります。9月27日までに株式を買えば、9月中間配当金を受け取る権利が得られます。ところが、9月28日は権利落ち日で、28日に買っても中間配当金を受け取る権利は得られません。
つまり、9月28日から12月8日まで日経平均に投資するならば、株式現物に投資しても先物に投資しても、リターンはほぼ同じになるわけです。したがって、9月28日以降は、日経平均先物(12月限)は、ほぼ日経平均と同じ値で推移することになります。
ここまで理解いただければ、まったく問題ありません。さらに詳しい数式を必要とされる方は、以下のをご覧ください。
日経平均先物(12月限)の理論値の計算方法
詳しい説明は割愛します。計算式だけ掲載します。
(日経平均先物12月限理論値)=(日経平均の値)-(12月8日まで日経平均現物を保有することで得られる配当金予想額)
+(日経平均現物を購入するのに必要な現金を12月8日まで短期金融市場で運用した時に得られる利息)
現在、短期金利はほぼゼロなので、金利要因は無視しても大丈夫です。配当落ちは、3月・9月が特に大きいです。6月や12月にもあります。
東京市場の取引時間中は、日経平均先物が理論値から大きくかい離することはありません。かい離すれば、裁定取引が入り、先物は常に理論値の近くに維持されます。ただし、東京市場の現物取引時間が終了すると(15時以降)、日経平均先物は理論値からかい離して動くようになります。裁定取引が入らないので、大引け後のニュースに反応して動くわけです。
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