執筆:窪田真之

28日の日経平均は13円高の15,323円でした。ブレグジット(英のEU離脱)可決ショックが継続していて、欧州関連株を中心とした輸出株や金融株が売られましたが、建設・食品・医薬品・小売りなどのディフェンシブ株には、押し目買いが入りました。

日経平均の下値リスクはまだ残っていますが、投資資金にゆとりのある方は、時間分散しながら、少しずつ株を買い増ししていっていいと考えています。予想配当利回りが4~5%に上昇している割安株が増えているからです。

今日は、二極化しつつある物色動向と、投資銘柄を選ぶ際の、逆バリ・順バリ戦略について考えていることを書きます。

(1)ブレグジット可決後、銘柄の二極化が一段と鮮明に

ブレグジット可決ショックで、日経平均は6月24日―28日の3営業日で5.6%下がっています。その間、日本株の物色動向にはっきりとした二極化が起こっています。輸出株・金融株が大きく下がる一方、内需ディフェンシブ株は堅調です。

6月24-28日の株価下落率上位25銘柄とその予想配当利回り・PER(株価収益率):東証一部上場の時価総額1.7兆円以上の銘柄から集計

No コード 銘柄名 騰落率 配当利回り PER:倍
1 8725 MS&ADインシュアランス -16.7% 4.1% 8
2 6501 日立製作所 -15.2% 2.9% 10
3 7203 トヨタ自動車 -13.3% 3.0% 10
4 8591 オリックス -12.7% 3.7% 6
5 8306 三菱UFJ FG -12.7% 4.0% 7
6 6981 村田製作所 -12.4% 2.0% 13
7 8316 三井住友FG -11.8% 5.2% 6
8 7270 富士重工業 -11.7% 4.2% 9
9 7201 日産自動車 -11.5% 5.3% 7
10 8766 東京海上HLDG -11.4% 4.3% 9
11 5401 新日鐵住金 -10.9% 3.0% 11
12 6752 パナソニック -10.8% 2.9% 14
13 6326 クボタ -10.5% 2.3% 11
14 8411 みずほFG -10.4% 5.1% 6
15 6503 三菱電機 -9.9% 2.3% 13
16 6301 小松製作所 -9.1% 3.4% 18
17 6367 ダイキン工業 -9.1% 1.5% 17
18 6902 デンソー -8.9% 3.5% 12
19 7267 本田技研工業 -8.8% 3.5% 12
20 8801 三井不動産 -8.6% 1.4% 18
21 7751 キヤノン -8.5% 5.2% 16
22 6273 SMC -8.2% 0.8% 20
23 5108 ブリヂストン -7.8% 4.4% 8
24 6971 京セラ -7.6% 2.1% 21
25 7974 任天堂 -7.3% 1.1% 47

(注:楽天証券経済研究所が作成)

6月24-28日の株価騰落率上位25銘柄とその予想配当利回り・PER(株価収益率):東証一部上場の時価総額1.7兆円以上の銘柄から集計

No コード 銘柄名 騰落率 配当利回り PER:倍
1 9843 ニトリHLDG 4.6% 0.5% 28
2 9432 日本電信電話 4.3% 2.5% 13
3 2269 明治HLDG 1.7% 0.9% 31
4 9437 NTTドコモ 1.1% 2.9% 16
5 4452 花王 0.3% 1.5% 25
6 4528 小野薬品工業 0.1% 0.9% 42
7 4503 アステラス製薬 -0.2% 2.1% 17
8 2503 キリンHLDG -0.2% 2.2% 26
9 6098 リクルートHLDG -0.3% 1.3% 35
10 4519 中外製薬 -0.6% 1.4% 40
11 4661 オリエンタルランド -0.6% 0.5% 28
12 9433 KDDI -0.6% 2.6% 14
13 9020 東日本旅客鉄道 -1.0% 1.4% 14
14 9022 東海旅客鉄道 -1.7% 0.7% 10
15 2914 日本たばこ産業 -1.9% 3.1% 19
16 6861 キーエンス -1.9% 0.3% 27
17 4543 テルモ -2.1% 0.9% 30
18 4523 エーザイ -2.2% 2.6% 56
19 3382 セブン&アイHLDG -2.3% 2.1% 21
20 4502 武田薬品工業 -2.3% 4.1% 39
21 9735 セコム -2.5% 1.9% 20
22 2502 アサヒグループHLDG -3.0% 1.6% 19
23 4507 塩野義製薬 -3.2% 1.2% 25
24 1925 大和ハウス工業 -3.4% 2.8% 12
25 4568 第一三共 -3.6% 2.8% 26

(注:楽天証券経済研究所が作成)

(2)輸出株・金融株には配当利回りの高い銘柄が、ディフェンシブ株には配当利回りの低い銘柄が多い

上の表を見ていただくと、下落率上位の輸出・金融株には、予想配当利回りが高く、予想PERが低い銘柄が多いことがわかります。円高リスクや、マイナス金利のリスク、ロンドン金融市場の価値が低下するリスクなどが織り込まれ、株価が、配当利回りやPERから見て、割安になっていると考えられます。

一方、騰落率上位のディフェンシブ株には、予想配当利回りが低く、予想PERが高い銘柄が多いことがわかります。円高や海外経済の不安の影響を受けにくい銘柄が多いため、株価が、配当利回りやPERから、相対的に割高になっていると考えられます。ただし、通信株など、ディフェンシブでも配当利回りの高い株もあります。ディフェンシブで配当利回りが高めの通信株は、世界経済に不安材料がある中で投資するのに適していると考えています。

(3)逆バリ投資と順バリ投資

業績悪化のリスクはあるものの、配当利回りが高い銘柄群(上記の下落率が高い25銘柄など)に投資することを、逆バリ投資といいます。今、嫌われて下がっているが、株価が割安なことに注目して長期投資を開始する戦略です。短期的な下値リスクがまだ大きいので、たくさん買い過ぎずに、少しずつ投資することが肝要です。

一方、業績がディフェンシブで、株価が相対的に堅調であった銘柄群(上記の騰落率上位25銘柄など)に投資することを、順バリ投資といいます。

私がファンドマネージャーをやっていた時、順バリ投資6割、逆バリ投資4割くらいの割合で、投資銘柄を選び、ポートフォリオを組んでいました。相場の転換点が近いと考えれば、逆バリ投資を増やしていきますが、通常は、相場の流れに逆らわない順バリ銘柄を中心に組み入れておく必要がありました。

今日は、投資銘柄を選ぶ際の、逆バリ・順バリ戦略の考え方をお話ししました。今、日本株に投資すること自体が、逆バリ投資なので、慎重に時間分散しながら買うことが肝要と考えます。

なお、好配当利回り株投資について、さらに詳しく解説した以下の6月23日のレポートも、併せてお読みいただけると、幸甚です。

6月23日 3分でわかる!今日の投資戦略「好配当利回り株への投資を今どう考えるべきか」