2月29日の日経平均は前日比161円安の16,026円でした。先週末の海外市場で、1ドル113.99円まで円安が進んだことを受けて、日経平均は朝方276円高の16,464円まで上昇しました。ところが、東京市場で1ドル113円割れまで、再び円高が進んだことにより、後場は日本株に売りが増えました。

今週は、米国で重要な経済指標の発表が続きますが、弱めの指標が出ると、利上げは困難との見方が広がり、円高が進む可能性があります。また、海外で何らかの不安材料が出ると、安全資産として円が買われる地合いが続いており、しばらく円高に注意が必要です。3月1日日本時間午前6時30分現在は、1ドル112.77円です。

(1)米景気の見方割れる、2月のISM指数発表に注目

米景気は強いか弱いか、足元、見方が割れています。製造業の不振が続いていることが、弱気の見方につながっています。ただし、製造業は不振でも、米経済の好調は続くとの見方もあります。米国では、早くから製造業の空洞化(アジアや中南米への工場移転)が進み、IT・金融・サービス産業中心に成長する構造ができているからです。ただし、最近、好調だった非製造業にもややかげりが出ていて、それが米経済への不安につながっています。そのことが、1月までのISM製造業・非製造業景況感指数にあらわれています。

米ISM製造業・非製造業景況感指数の推移:2014年1月~2016年1月

(出所:米ISM供給管理公社より楽天証券経済研究所が作成)

今週、2月のISM指数が発表になります。本日(3月1日)製造業景況感指数が、明後日(3月3日)には、非製業景況感指数が発表になります。発表前後で、ドル円為替レートがどう動くか、注目されます。製造業景況感指数の50割れと、非製造業景況感指数の低下が続くと、ドルが売られやすくなります。ただし、予想外に改善が見られると、ドル高が進む可能性もあります。

(2)週末(3月4日)には2月の米雇用統計発表を控える

米雇用統計の中で、米景気の短期的変化を敏感にあらわす指標として、非農業部門の雇用者増加数が、一番注目されています。20万人を超える増加となれば、米景気は好調と判断されます。

昨年まで米国の雇用情勢は、非製造業の好調を受けて、改善が続いていました。ただし、1月の非農業部門雇用者数は、15万1千人増と、20万人増を下回りました。雇用にも短期的な調整色が出ている可能性があります。ただし、先月発表されたのは1月の速報値で、今月修正値が発表されます。

今週末発表される雇用統計で、2月の速報値が景況判断の分かれ目と言われる20万人増を上回れるか、1月の修正値が速報値(15.1万人増)を上回るか、注目が高まっています。

米雇用統計(非農業者部門の雇用者増加数):2014年1月―2016年1月

(出所:米労働省)

ただし、米国の完全失業率は、1月も低下が続いてます。失業率は、より長期的な米国の雇用情勢を表します。仮に短期的に雇用に調整色が出ているとしても、長期的な雇用情勢の改善は続いているとの見方が主流です。

米雇用統計(完全失業率):2014年1月~2016年1月

(出所:米労働省)

(3)不安が高まると、安全資産として円が買われるのはなぜか?

話題は変わりますが、先週、英国でEU(欧州共同体)離脱の世論が高まってきていることを材料に、英ポンドが売られました。キャメロン首相は6月23日にEU残留の是非を問う国民投票を実施すると宣言しています。EU残留を支持する国民が過半数を占めるので、EU離脱が決まる可能性が高いとは言えません。ただし、万一英国のEU離脱が決まると、ロンドンの国際金融市場としての価値は低下し、英国経済にダメージが及ぶと懸念されています。そうした不安が、英ポンド売りにつながりました。

この話題は、直接、日本に与える影響は大きくありません。それでも、英ポンドが売られると、日本円が買われるという現象も見られました。英ポンドを売った投機筋が、今は代わりにドルやユーロでなく、円を買うことが多いからです。このように、今の為替市場では、何か不安があると円を買うと単純に動く投機筋もいます。世界的に「リスク・オフ」が続く限り、円高への警戒も必要です。「リスク・オン」が復活し、円安が進むまでに、まだ時間がかかりそうです。

ところで、円はなぜ、安全通貨とみなされるのでしょうか?その質問の回答を、以下のレポートに記載しています。今でも、この質問を多数受けますので、回答を記載しているレポートへのリンクを改めて掲載します。

1月13日のレポート「読者の皆様からのご質問に回答