18日の日経平均は前日比360円高の16,196円でした。先週、日経平均リンク債のノックイン(注)が集中したことに伴う先物売りで、日経平均は15,000円を割れましたが、今週は特殊な需給要因による先物売りが一巡したことから、テクニカルな反発が続いています。

ただし、一本調子の上昇は見込めません。日本時間19日午前6時時点で、CME日経平均先物は15,935円まで下がっており、今日の日経平均は下がって始まる見込みです。

(注)日経平均リンク債のノックイン:詳しい説明は、以下のレポートをご参照ください。

2月17日「日経平均を1,000円高や900円安にするのは誰か?」

(1)ここからの注目は、景気・企業業績の動向

ここから先、日経平均がどこまで戻れるかは、今来期の景気・企業業績によって決まります。そこで気になるのは、足元、今期(2016年3月期)企業業績予想の下方修正を発表する企業が多いことです。業績悪化が来期(2017年3月期)まで続くか、あるいは、来期には業績は回復に向かうか、慎重に見極める必要があります。

第3四半期(10-12月期)の決算発表がほぼ終了しましたが、今回発表された決算は、冴えない内容でした。下半期(2015年10月以降)に入ってから、①中国景気の悪化、②資源価格急落、③米アップル社のiPhone減産、④円高進行など、企業業績への逆風が増えており、海外で事業展開する企業に業績下方修正が増えています。

東証一部上場企業 主要837社の今期(2016年3月期)経常増減益率(会社予想):2015年12月末時点と2016年2月18日時点の比較

集計対象 社数 12月末時点 2月18日時点
全産業ベース 837社 +6.1% +3.7%
 内 金融以外 790社 +7.8% +5.1%
 内 金融 47社 ▲3.9% ▲4.1%

(注:集計対象は3月期決算の主要837社、IFRS・米国基準採用企業は連結税前利益を経常利益として集計、楽天証券経済研究所が作成)

(2)一時的な悪化要因か、来期まで続く悪化要因か、見極めが必要

足元の業績悪化が、一時的か長期化するか、見極めが必要です。業績悪化の要因別に、それぞれ以下のように考えています。

  • 中国製造業悪化の影響
    来期も継続する見込み。ただし、中国の消費は順調に成長が続くと予想。その結果、中国関連株は、設備投資関連が不振、消費関連は堅調と予想。
  • 資源価格急落の影響
    今期業績にマイナスだが、来期業績にはプラスとなる見込み。
  • iPhone減産の影響
    在庫調整は今期で終了する見込み。ただし、来期に入ってすぐに回復に向かうとは考えられない。回復には時間がかかる。
  • 円高の影響
    今期は為替予約もあるので、輸出企業に大きなマイナスとはならない。来期業績にはマイナス効果が及ぶ。

上記①―④を勘案し、来期の東証一部全産業ベースの経常利益は、1ドル100円を前提として考えると、一桁台前半(2-4%)の増益が可能と予想しています。

(3)下方修正を発表した主要企業

中国関連株・資源関連株・アップル関連株に、業績予想の下方修正を発表するところが増えています。いずれも、主に外需企業(海外で利益を稼ぐ企業)です。内需企業の業績は、比較的、堅調です。

今期経常利益(会社予想)の下方修正額が大きい28社:昨年12月末時点の予想と2月18日時点の予想を比較

(金額単位:億円)

  コード 銘柄名 12月末時点 2月18日時点 下方修正額
1 5020 JX HLDG 1,500 ▲ 550 ▲ 2,050
2 8053 住友商事 2,950 1,750 ▲ 1,200
3 6502 東芝 ▲ 3,000 ▲ 4,000 ▲ 1,000
4 6501 日立製作所 6,000 5,200 ▲ 800
5 1605 国際石油開発帝石 4,340 3,750 ▲ 590
6 5401 新日鐵住金 2,500 2,000 ▲ 500
7 5019 出光興産 390 20 ▲ 370
8 5411 ジェイエフイーHLDG 1,000 650 ▲ 350
9 5406 神戸製鋼所 550 250 ▲ 300
10 7011 三菱重工業 3,000 2,700 ▲ 300
11 5706 三井金属鉱業 180 ▲ 105 ▲ 285
12 7013 IHI 380 150 ▲ 230
13 6752 パナソニック 3,000 2,800 ▲ 200
14 5711 三菱マテリアル 880 730 ▲ 150
15 9101 日本郵船 800 660 ▲ 140
16 9107 川崎汽船 200 70 ▲ 130
17 6902 デンソー 3,830 3,700 ▲ 130
18 6479 ミネベア 625 500 ▲ 125
19 7240 NOK 700 580 ▲ 120
20 8253 クレディセゾン 600 485 ▲ 115
21 7012 川崎重工業 1,000 890 ▲ 110
22 5017 富士石油 41 ▲ 67 ▲ 108
23 9104 商船三井 420 320 ▲ 100
24 6988 日東電工 1,200 1,100 ▲ 100
25 3863 日本製紙 300 200 ▲ 100
26 6954 ファナック 2,363 2,269 ▲ 94
27 6770 アルプス電気 595 515 ▲ 80
28 6807 日本航空電子工業 240 167 ▲ 73

(注:各社資料より楽天証券経済研究所が作成)

資源価格が急落したことで、本来なら原料安メリットが得られる企業でも、今期は、マイナス効果が先行します。高値で購入した原料在庫に、在庫評価損(総平均法を使った場合に生じる利益の押し下げ効果)が発生するからです。原料価格と製品価格が同時に下落していることから、今期はマイナス効果が先行します。原料については高値在庫が残っているため原料安メリットが得られませんが、製品価格が下がるために、今期業績は悪化します。来期になると、高値で購入した原料在庫がなくなり、原料安メリットが得られるようになります。その結果、原料資源が急落した効果は、今期業績にマイナスで、来期業績にプラスの影響を与えます。

石油精製業・鉄鋼(高炉)などで、上記の現象が起こります。JX HLDG、出光興産、富士石油は高値の原油在庫を抱えているために、今期業績は大きな赤字となります。来期には高値在庫がなくなるため、利益の回復が見込まれます。

新日鐵住金、JFE HLDGは、今期、高値の原料在庫(鉄鋼石・石炭)を抱えているために、利益が大きく悪化します。ただし、高値在庫がなくなる来期には、利益の急回復が見込まれます。JFE HLDGは、今期経常利益を650億円と予想していますが、原料の高値在庫や、資源権益の減損などの、一時的な利益押し下げ効果がなければ、1,400億円程度の経常利益が得られていたと推定されます。来期経常利益は、さらなる環境悪化がなければ1,400億円以上に回復することが期待されます。