9月27日のNY時間にドルは主要通貨に対して上昇。ドル/円は年初来高値をつけました。

 ここで為替はなぜ動くのか、円高や円安はなぜ起こるのか、初心者にも分かりやすく解説します。

 以前のレポートで、外国為替市場では「外国為替」=通貨という商品が売買されていると書きました。

 この通貨の主な商品は「ドル」です。そのドルの値段が上がったり、下がったりするのはなぜでしょうか。当たり前の答えになりますが、通貨という「ドル」の「値段」はモノの場合と同じように需要(買い)と供給(売り)によって決まります。つまり、需給によって決まる需給相場ということになります。

■ドルの需要が多い → ドルの買いが多い → ドル高
この動きをドル/円相場の円から見れば、円の供給が多い → 円の売りが多い → 円安
 
■ドルの供給が多い → ドルの売りが多い → ドル安
この動きをドル/円相場の円から見れば、円の需要が多い → 円の買いが多い → 円高
 

需給相場とは

 要するに需給相場とは、ドルの買い手が多ければドル高となり、ドルの売り手が多ければドル安となるように需給によって動く相場のことを言います。

 ドル/円の相場を予測する上では、このドル需給の力関係を考え、お金の流れる方向を観察することが重要です。

 ここでいう力関係とは、需要(ドルの買い手)と供給(ドルの売り手)のかたよりのことを意味します。この需給のかたよりによって相場は動きます。

 

為替市場でのドルの買い手と売り手

 では、この需給のかたよりはどのような要因によって起こるのでしょうか。

 その前にドルの需要(買い手)と供給(売り手)の取引にはどのような取引があるのかを整理します。大別して下表の5つの取引が見られます。

  ドル売り円買い
(ドル安円高要因)
ドル買い円売り
(ドル高円安要因)
貿易取引 輸出取引 輸入取引
国内投資家 海外投資の戻り( 利金・配当・満期 ) 海外投資(外貨預金・外債・投信、海外企業へのM&A)
海外投資家 対日資本投資(株・債券の購入、日本企業へのM&A) 日本からの流出(利食い・満期)
投機筋 ドル売り投機 ドル買い投機
当局(財務省、日銀) ドル売り(円買い)介入 ドル買い(円売り)介入

 ドルの買い手と売り手という分け方で考えると上表のようになります。

 さらに、ドル安円高要因、ドル高円安要因の具体例を簡単に説明します。

貿易取引 輸入取引 ドル買い。輸入企業による輸入に必要なドルの購入
輸出取引 ドル売り。輸出企業による輸出で得たドル代金の円転
国内投資家 ドル買い 海外投資のためのドル買い。外貨預金、外国株、外国債券の購入。日本企業の海外企業の買収、海外現地法人の設立による資本出資。円高が続いた局面では日本企業による海外企業の買収が増加しました。
ドル売り 海外投資による資金の戻り。銀行、証券会社、投信会社を通して購入した外国株の配当、外国債券の利金あるいは満期金の円転(外貨を円に換えること)。海外現法の整理・撤退。
海外投資家 円売り
(ドル買い)
日本へ投資した資金の利食い、満期、事業の撤退
円買い
(ドル売り)
日本に対する投資。日本株、日本の国債の購入。
日本企業の買収(M&smp;A)、日本で現地法人の設立。アベノミクスによる株高は外人買いが大きく貢献しました。外人の株買いは円買いにつながるのですが、彼らは同時に円安への予防的手段として円売りヘッジをやっているため、為替での需給バランスはニュートラルと言われています
投機筋 ドル買い 代表はヘッジファンド。日本の個人投資家も東京市場の3分の1まで占めるようになってきていることを考えれば、投機筋と言えると思います。
ドル売り 投機筋はドル売りからでも入ってきます。日本の個人も数年前はドル買いが入口でしたが、最近ではドル買い、ドル売り両方から入ってくるようになりました。ヘッジファンドは相場の流れに乗る順張り戦法で、日本の個人投資家は相場の流れに逆らう逆張り戦法が主な手法となっています。
当局(財務省、日銀) ドル買い 円高局面でのドル買い・円売り介入。80円台前半で相場が動いていた時
、2010年9月15日に6年半振りの介入を実施。円売り介入では1日での最大規模。これまでの史上最大の介入は、2003〜2004年にかけての37兆円。介入は、基本的には需給バランスの調整であり、押し上げ介入は困難であるが、この37兆円介入は時間をかけて効果があった介入。
ドル売り 円安局面でのドル売り・円買い介入。介入は相手国の承認を取る必要があり、ドル売りは米国の嫌がるところ。日本ではほとんど見られない介入。1985年のプラザ合意による大規模介入が代表例。この時は協調介入。