• 原油は近年“金融商品化”が進んでいる模様。ドル指数と逆の値動きが顕著
  • 重要イベントでドル指数の値動きが大きくなった場合の原油相場の値動きに注意

 

9月21日(水)の日銀金融政策決定会合および、FOMCに向けて様々な論が飛び交っておりますが、近年“金融商品化”が進んでいるとみられる原油相場を、“ドル指数”の値動きを元に、向こう数ヶ月間の下値の目途と上値の目途を試算してみたいと思います。

 

金融面から見た試算ですので、需給や在庫などの基礎的要因を考慮しておりません。しかしながら、近年のドル指数と原油相場の関わりが強くなる傾向があること、そして9月21日の重要イベントを機に金融面での影響が大きくなる可能性があることから、一つの参考になるのではないかと思います。

原油は近年“金融商品化”が進んでいる模様。ドル指数と逆の値動きが顕著。

図:NY原油とドル指数の動き

出所:ブルームバーグより筆者作成

2010年1月から2016年9月までの、2つの相関係数は「-0.9」でした。-1に近ければ近いほど逆相関の色が濃く、1に近ければ相関、0に近ければ無相関(2つの動きには関わりなし)とされています。

なぜ、逆の動きになる傾向があるのかという点については過去のレポート「原油価格下落の2つの理由」の“米利上げムードの醸成・ドルの強含みによる金融面での下落”の欄をご参照ください。

原油価格下落の2つの理由

また、以下は2つの値動きの回帰分析となります。

図:NY原油とドル指数の回帰分析(期間2010年1月から2016年9月)

出所:ブルームバーグより筆者作成

この2つの関係を示す「y = -0.2958x + 108.3」に当てはめ、以下のドル指数のいくつかの想定を元に、原油価格の上値・下値の目途を試算してみたいと思います。

重要イベントでドル指数の値動きが大きくなった場合の原油相場の値動きに注意

図:ドル指数の動き

出所:ブルームバーグより筆者作成

2015年の半ば以降、ドル指数は概ね92ポイントと100ポイントのレンジで推移しているようです。現在はおよそ96ポイントであるため、ちょうどレンジの真ん中にいることになります。

このようなタイミングで、9月21日の重要イベントを迎えた場合、さまざまなシナリオが考えられますが、“値動きが非常に大きくなった場合”を前提としますが(例えば、日銀追加緩和実施・FRB追加利上げ実施。もしくは日銀追加緩和なし・FRB追加利上げなし)、向こう数ヶ月間で、この「92から100のレンジをブレイクする」という動きが見られる可能性もあるのではないかと考えられます。

以下はそれぞれのドル指数の値位置とそれによって試算される原油価格のイメージです。

図:ドル指数の値位置と原油価格のイメージ

出所:筆者試算

これを原油価格のグラフに当てはめると以下のとおりとなります。

図:NY原油価格とドル指数との関係から試算されるレンジ

出所:ブルームバーグのデータおよび筆者推定

ドル指数と原油の値動きは逆の傾向があることから、ドル指数がドル安方向に(92および90ポイントに)なった場合、原油価格は上昇する計算となり、逆に、ドル指数がドル高方向に(100および102ポイントに)なった場合、原油価格は下落する計算となります。

冒頭で述べたとおり、この試算はドル指数との関連のみを元にしているため、需給・在庫ななどの基礎的要因は考慮されておりません。

しかし、日米の金融政策に関する重要なイベントが重なるタイミングであることから、各会合の内容によっては、想定を上回る値動きになる可能性もあると考えておきたい場面であると思われます。

想定を上回るとは、ドル指数が今後数ヶ月間をかけてこれまでのレンジ「92ポイントから100ポイント」をどちらかに放れる、ということで、その影響として原油価格が(同じ数か月間をかけて)「28ドルもしくは55ドル」に達するということです。

ここまで極端な「会合の結果」・「ドル指数の動き」・「原油価格の動き」についても、念のため心に留めておくことも大事なのかと思います。