長期上昇相場では上昇波が3回訪れる

今年に入り、日本株は非常にやりにくい相場が続いています。前回のコラムを執筆した時点(3月9日)では、上昇トレンドに転じつつある銘柄が増加していたので、ポジションを多少積み増していたことをコラム内でも書きました。ところが、3月12日~14日にかけての急落で多くの個別銘柄が再び下降トレンドに戻ってしまいましたので、ポジションを再び縮小せざるを得ませんでした。

さて、2012年11月中旬から華々しくスタートしたアベノミクス相場。すでに1年4ヶ月が経過しました。昨年末には、日経平均株価が昨年5月高値を更新し、多くの個別銘柄も日足チャートでみた上昇トレンド入りが濃厚になったため、いよいよ上昇第2波スタートか、と期待したのですが、結局は頭打ちとなってしまいました。

長期的な上昇相場は、上昇の終了までに大きな上昇波が3回訪れるというのが一般的です。アベノミクス相場がまだ終わっていなければ、今後上昇第2波がやってくるはずです。昨年前半の上昇第1波にうまく乗ることができなかった方も、いつ上昇第2波が訪れてもよいように、また、上昇第2波の終了時にしっかりと利益を残せるように、どう行動していけばよいのかを、今までのアベノミクス相場における個別銘柄の値動きを参考にして考えていきたいと思います。

多くの銘柄は昨年5月高値のあとは調整が続く

個別銘柄の株価の動きはまちまちですが、昨年5月ごろに高値をつけたあと、その高値を抜けずに調整が続いている銘柄が多い印象です。こうした銘柄を2012年中に底値圏で安く買い仕込むことができた方は、今まで保有を続けていても十分に含み益がある状態ですが、上昇がスタートしてしばらくした後に買った場合、持ち続けると含み損を抱える結果になっているものも少なくありません。

例えばケネディクス(4321)は、2012年11月の100円前後の株価から、昨年4月に849円まで上昇し、その後6月に311円まで下落しました。高値からの下落率は63%にも達しています。現時点(3月14日終了時点)も329円と、ほぼ同じ株価水準で低迷したままです。ケネディクス株を昨年3月中旬以降に買って保有を続けている投資家は、総じて含み損が生じてしまっている状況です。

ただ、ケネディクスをはじめ、多くの銘柄は昨年5月ごろまでの上昇が上昇第1波です。アベノミクス相場が今後も続くならば、やがて調整局面が終了し、上昇第2波がやってきます。そうなれば、多くの銘柄が昨年5月前後の高値を抜いて再び大きく上昇するはずです。

上記で挙げたケネディクスは、昨年4月に高値をつけた銘柄です。多くの銘柄は5月に高値をつけていますので、他の銘柄より先立って高値をつけたことになります。また、東京都競馬(9672)などのいわゆる「含み資産株」と呼ばれる銘柄も同様です。

一般に、いちはやく調整入りした銘柄ほど、調整が終了して再度上昇に転じるタイミングも他に先んじる傾向があります。その意味では、4月高値銘柄の今後の株価の動向を注目しておく価値はあるはずです。

上昇第2波以降はトレンド反転後の持ち越しは避けるべき?

筆者は、アベノミクス相場がしばらくの間続くものと思っていましたので、昨年5月に多くの銘柄が高値をつけたあと日足のトレンドが下降トレンドに転換した後も、保有株を全て売却することはしませんでした。半分~3分の1程度は週足チャートでのトレンドが下降トレンドに転換するまで保有を続けていました。

しかし、ここまでの個別銘柄の値動きをみると、特に上昇第2波以降は、株価のトレンドに忠実に行動すべきではないかと思っています。

なぜなら、上のケネディクスの例をみても分かるように、上昇第1波の高値をつけたあと、大きく下落する銘柄がかなり多かったからです。なかには、これで大天井をつけてしまったのではないかと思える銘柄さえあります。

さらに、上昇第2波にて大天井をつけてしまう銘柄は相当数にのぼるものと思われます。こうした銘柄は、上昇第2波終了後に調整を挟んだあと上昇第3波が訪れても、上昇第2波でつけた高値を超えることができないのです。

2003年~2007年の上昇相場でも高値をつけた時期は銘柄により異なった

例えば、2003年から2007年まで続いた上昇相場では、日経平均株価や一部の銘柄の高値が上昇第3波の2007年だったのに対し、多くの中低位株が高値をつけたのは上昇第2波が終わった2006年前半でした。

トヨタ自動車(7203)の高値は2007年2月で、月足チャートをみるときれいに上昇の3波動を描いていることがわかります。一方、大成建設(1801)の高値は2006年1月でした。トヨタ自動車が高値をつけた2007年2月に大成建設も戻り高値をつけていますが、2006年1月の高値からは約24%も低い水準でした。

トヨタ自動車(7203)

大成建設(1801)

ですから、上昇第2波が終了したと思われる場合は、いつまでも持ち続けるのではなく、できれば日足チャートの下降トレンド転換、遅くとも週足チャートの下降トレンド転換で売却しておくのが無難ではないかと考えています。

個人投資家好みの銘柄は大きく上昇したら持ち越しよりも利益確定を

また、個人投資家に人気の高い、値動きの激しい新興市場銘柄は、株価が大きく上昇しても結局はもとの水準まで戻ってしまうことが多くみられます。

これは、株価の調整が深くなり、信用取引の評価損が膨らんでくると、損失穴埋めのため個人投資家好みの銘柄に次々と売りが出されるためです。

銘柄Aが大きく下落⇒その穴を埋めるため銘柄Bにも売りが出る⇒その結果銘柄Bも大きく下落し、その穴を埋めるために銘柄C、D、Eにも大量の売り…とスパイラル的に急落が広がっていくのです。この動きは、直近では2月4日に向けた株価下落局面でみられました。

こうした銘柄はいつまでも保有を続けるのは得策ではありません。株価が短期間に大きく上昇したり、日足のトレンドが転換した局面でしっかりと利益確定しておくことが重要です。

上昇第2波スタートを感じ取るための今後の注目ポイントは?

昨年5月以降の相場では、5月に一旦の天井をつけた銘柄はその後明確かつ継続的な上昇トレンドが生じていません。もし、上昇第2波に突入するのであれば、昨年末と同様に多くの銘柄がまずは日足ベースで上昇トレンドとなり、そして昨年末のように頭打ちになるのではなく、そのトレンドがしばらくの間継続するようになります。

また、上昇第1波のときも同じでしたが、上昇第2波に入って初期の段階で買うことができれば、多少利益確定のタイミングがずれたとしても、ある程度の利益を得ることができます。その意味でも、できれば、50銘柄ほどの株価チャートを定期的(可能なら毎日)チェックし、トレンドの変化を感じ取れるようにしておきましょう。

明確な上昇トレンドが表れるまでは、方向性のはっきりしないストレスのたまる相場が続きそうです。こんな時は無理に勝負をすることは避け、キャッシュポジションを厚くし、上昇第2波に備えた準備をしておくのがよいでしょう。