日経平均は調整局面?下落局面?

 日経平均株価は調整色を強めそうな状況です。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を通じて投資を始めた投資家の皆さまは、初めての下落局面を受けて、不安になっている方も多いのではないでしょうか。

 決して不安になる必要はありません。調整局面は株式市場では当然の動きですし、1月から3月までの上昇相場は、歴史的とも言える非常に珍しい状況でした。そもそも、株式は10年、20年という長い期間をかけて、上昇、下落を繰り返し醸成されていくものと考えますので、今の調整局面はさほど気にする必要はないと思います。

 ちなみに、私は調整局面と下落局面は厳密には意味合いが少し違うと思っています。調整局面は、基本上昇しているが、少し下落した場合に調整という用語を使用しています。一方、下落局面は年初来安値更新など上昇以上に下落した際に使用しています。具体的には、日経平均株価は調整局面ですが、年初来安値を更新したグロース市場250指数は下落局面と考えます。

 今回の調整局面で、二点気を付けてほしいことがあります。まず一点目ですが、現実を直視する勇気を持ってもらえればと思います。上昇局面以上に調整局面で「何が起こっているのか?」「なぜ下げているのか?」といった事実を知ることは、今後の投資人生の中で非常に重要です。

 別に保有資産がマイナスとなっている口座の画面を見る必要はありません。誰だってそんな画面見たくないでしょうし、「あー、なんでー」という気持ちをわざわざ蒸し返す必要もないと思います。私はマイナス額を計算して、今購入したら平均購入単価がこれだけ下がる、といった考えが真っ先に浮かぶタイプですが、かなりまれなタイプだと思いますので参考程度で結構です。

 調整局面は、長い投資人生の中で必ず付き合わなくてはならない状況ですので、「NISAのつみたて投資枠でうまく拾える」「資金が必要となる20年後に上昇していればいい」「下がった局面でバリュー銘柄を拾ってみようかな」ぐらいの感覚で見ていけばいいと思います。

 二点目は、調整局面で不安が高まっている投資家の心理状態を突いた「投資詐欺」にご注意ください。昨今、生成AIを駆使した著名人の「なりすまし」による投資詐欺の被害報告が、国民生活センター、消費生活センターや消費者庁、警察などに数多く寄せられています。この投資詐欺は、実業家の前澤友作氏、堀江貴文氏が声を上げたことで知られることとなりました。

 また、なりすましではない古典的な「ポンジスキーム(出資してもらった資金を運用せず、後から参加する人に配当として渡す)」による詐欺も頻繁に発生しています。いずれも、投資家の「不安」もしくは「欲」を突いてくるパターンです。

 SNS広告上の内容では「投資詐欺」なのかどうかを判断するのは難しいですので、まずは広告を出している法人が、金融庁に登録済の事業者であるかを確認しましょう。

 金融庁のホームページで、証券会社であれば「第一種金融商品取引業者」、投資助言事業者などであれば「投資助言業者」、暗号資産の売買であれば「暗号資産交換業者」などのリストがありますので、どなたでも調べられます。

 また、「疑う」という気持ちを持っていれば、ローリスクでハイリターンな金融商品が存在しないことに早い段階で気付きますので、SNS広告は「性悪説」ぐらいの気持ちで見ておいた方が安全です。

日経平均はなぜ調整局面を迎えているのか?

 では、足元の日経平均株価がなぜ調整局面を迎えているのか、簡単にご説明します。

 4月11日の「海外投資家の買いはこれから?日本の中小型株5選」内でもご説明していました3月12日の安値3万8,271円38銭をついに下回ったことがポイントと考えます。実はこの水準、重要な意味があったのです。

 日経平均株価の日足チャート上、3月7日高値の4万472円11銭と3月22日高値の4万1,087円75銭の二つの山の間にこの水準はありました。この3月12日安値の3万8,271円38銭を17日に割り込んだことから、きれいなダブルトップが出来上がったのです。

 ダブルトップとは、「二点天井」とも呼ばれておりローマ字の「M」に似た形です。一般的には、天井圏で出現しやすく、相場の天井を示す「売りサイン」の一つと考えられます。

 3月12日安値の3万8,271円38銭は、ダブルトップを判断する上で「ネックライン(トレンドの転換点を示すライン)」として非常に重要な水準でした。この水準を下回ったことから、ダブルトップを形成したと判断され、3月22日の年初来高値がいったんの天井として意識されると考えます。

 つまり、1月から続いていた日経平均株価の上昇基調はいったん終了したと判断します。

 実際、17日にネックラインを割り込んだ後は下げ足を強め、75日移動平均線の3万7,889円水準も下回り、19日には2月以来となる3万7,000円割れとなりました。さすがに、19日の1,300円超下げたタイミングで、25日移動平均線との下方乖離(かいり)率が7%を超えたことから、短期的な売られ過ぎ感は意識され、そろそろ下げ止まるとは考えます。

 ただ、日経平均は、指数ウエートの関係上、値がさ半導体株である東京エレクトロン(8035)アドバンテスト(6857)などの影響を大きく受けます。世界的な半導体株の調整が長引けば、日経平均株価は一段安の可能性もありますので注意は必要です。

調整局面で、NISAを使っている人はどうすればいい?

 では、調整局面が今後も続くケースであれば、NISAで通じて投資をしている投資家はどのようなアクションを起こしたらいいでしょう。「つみたて投資枠」「成長投資枠」に分けてお話しします。

「つみたて投資枠」の場合、高配当銘柄やREIT(リート:不動産投資信託)、投資信託を積み立てているのであれば、淡々と機械的に購入する、だと思います。長期間にわたって上昇局面でも調整局面でもコツコツと決まった金額で購入する、まさに「ドルコスト平均法」の考えを実践するわけです。調整局面を生かした投資手法ですので、今のような地合いにはちょうどいいでしょう。

 一方、「成長投資枠」ではこれらの投資信託に加え、個別株にも投資できます。「つみたて投資枠」のようにコツコツと同じ額を購入する使い方もできますが、より短期投資のイメージで、値上がり益を狙うアクティブな手法をとる選択肢もあります。

 日経平均は調整局面入りと考えますが、グロース市場は年初来安値を更新している銘柄も多く存在します。好業績なのに売られている銘柄や、キラリと光る技術やテーマを持っているのに売られている銘柄も多くあります。投資家のマインドが悪化しているタイミングで、こうした銘柄にスポットを当てて投資することもできます。

田代くんの気になる5銘柄はコレ!調整局面、NISAで仕込みたいグロース株5選

 NISAの成長投資枠を使って、こうしたアクティブな投資手法に挑戦したい人向けに、注目の5銘柄を紹介します。今の地合いであれば、グロース市場のこの5銘柄は、業績や話題性などの観点で投資対象になると考えます。

銘柄名 証券コード 株価(円)
(4月24日終値)
ポイント
Macbee Planet 7095 12,960 2024年4月期は大幅な増収増益見通し
トライト 9164 708 人手不足業界からの引き合い多い
GENDA 9166 3,295 M&Aに積極的で業容拡大中
サンウェルズ 9229 2,323 2026年3月期まで増収増益を見込む
ispace 9348 762 宇宙事業は「国策に売り無し」

Macbee Planet(7095)

 顧客生涯価値(LTV)予測をベースとしたコンサルティング事業を手掛けています。2024年4月期の業績見通しは大幅な増収増益を見込んでいますが、株価は年初来安値を更新しています。逆張りの発想で見直される展開に期待します。

トライト(9164)

 人手不足の介護や看護、残業規制の建設業界などに対する人材紹介や派遣を行っています。引き合いが多く、2024年12月期業績は前年比二けたの増収増益を見込んでいますが、株価は3月以来の水準まで調整しています。昨年末の上場来安値を起点としたじりじりとした反発が続いていることから狙いどころと言えるでしょう。

GENDA(9166)

 アミューズメント施設「GiGO」を展開しており、M&A(買収や合併)に積極的です。好業績なのですが、2025年1月期の業績予想で前期実績よりも伸び率が縮小していることや、株価が上場来高値を更新していたことから、決算発表後の3月上旬に売られました。足元調整局面入りですが、3,000円水準では下げ渋っていますので、狙いどころと考えます。

サンウェルズ(9229)

 パーキンソン病専門の老人ホーム「PDハウス」などを展開しています。中期経営計画では2026年3月期まで増収増益が続くと見込んでおり、足元の業績は好調ですが、株価は年初来安値圏で推移しています。逆張りの発想で見直される展開に期待します。

ispace(9348)

 経済産業省が力を入れるなど国策の宇宙事業を手掛けており、月面着陸に挑戦しています。業績は赤字が続いていますが、宇宙事業という政府主導の高いテーマ性から「国策に売り無し」の考えで注目しています。