結論:これだけ覚えておいてください。

 今日のリポート内容は、中・上級向けです。日経平均先物についてあまり詳しくない方は、以下の結論だけお読みください。

<結論>

◆3月27日までの日経平均先物(6月限)は、日経平均より約220円低い水準で推移する

 先物が220円低くても、それは先安感を表すものではなく、理論値通りに値がついているだけである。例えば、「前日のCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)日経平均先物の終値が3万8,500円」だったとすると、新しい相場変動要因がその後何も出なければ、「今日の日経平均は3万8,720円くらいでスタートする」と考えることができます。

◆3月28日以降、日経平均先物(6月限)は、日経平均とほぼ同値で推移するようになる

 例えば、「前日のCME日経平均先物の終値が3万8,500円」だったとすると、新しい相場変動要因がその後何も出なければ、「今日の日経平均は3万8,500円くらいでスタートする」と考えることができます。

 今日は、先物の値動きが上記のようになる理由を、解説します。「なぜ、そうなる?」まで、きちんと勉強したい方は、以下をお読みください。

日経平均先物の夜間取引は、翌日の日経平均を先取りすることもある

 朝、東京証券取引所が開く前に、「CME日経平均先物が(前日の日経平均終値と比べて)大幅安」というニュースを聞くと、ヒヤリとします。その日の日経平均が大幅に下がって始まることが多いからです。

 逆に、「CME日経平均先物が大幅高」と聞くと、期待が高まります。その日の日経平均が大幅に上昇して始まることが多いからです。

 通常、日経平均先物(期近)の理論値は、日経平均とほぼ同値です。従って、「CME日経平均先物が、(前日の日経平均終値より)220円安い」と聞くと、「今日の日経平均は220円くらい下がって始まる可能性がある」と解釈する人が増えます。普通は、その解釈でOKです。

 例外として、3月9日(3月のSQ)から3月27日(3月の権利つき最終売買日)の間に日経平均先物(6月限)を見る場合だけ、見方が異なります。「約220円下でCME日経平均先物(6月限)の値がついていれば、当日の日経平均は上がりも下がりもしないで始まる可能性が高い」と解釈されます。

3月13日の日経平均先物(6月限)は、日経平均より約220円低い水準で推移

 百聞は一見にしかず。それでは、実際に3月13日の日経平均先物(6月限)の値動きを、日経平均と一緒にご覧ください。

<日経平均と日経平均先物(6月限)の日中足:2024年3月13日9:00~15:00>

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ご覧いただくと分かる通り、株式現物と日経平均先物の売買が両方ともできる時間帯(9時~11時30分、12時30分~15時)、日経平均先物(12月限)は日経平均よりも常に約220円低い値がついています。

 これを見て、「日経平均先物(12月限)に日経平均の先安感が表れている」という誤った解釈をしないようにしてください。先物(6月限)は、理論値通りに値が付いているだけです。

 3月の配当金の権利つき最終売買日である3月27日まで、この状況が続きます。ただし、配当金の権利落ち日である3月28日以降は、日経平均先物(6月限)は、日経平均とほぼ同値で推移するようになります。

これだけ覚えてください!二つのポイント

 少し難しくて、分かりにくい話になっているかもしれません。すみません。難しい理屈はどうでもいいですが、とにかく、以下二つのポイントだけ、覚えてください。

 以下2点だけ頭に入れていただければ、後半の説明は分からなくても問題ありません。

<ポイント1>日経平均先物6月限の理論値は、3月27日までは、日経平均の値を約220円下回る。その間、先物が日経平均より220円低い水準にあっても、それは、先安感を表しているのではない。理論値通りに値が付いているだけである。

<ポイント2>日経平均先物6月限の理論値は、3月28日以降は、日経平均とほぼ同値となる。3月28日以降は、先物と日経平均は、ほぼ同じ価格で取引されることになる。

3月決算の配当金の権利落ち(予想額)は220円

 3月27日まで、日経平均先物(6月限)は、日経平均よりも約220円価値が低いわけです。その理由は、3月決算での配当金にあります。

 日経平均(現物)を保有していると、3月決算の配当金の権利付き最終日(今年は3月27日)に、配当金を受け取る権利が付きます。ところが、日経平均先物(6月限)を買い建てしていても、3月配当金を受け取る権利は得られません。

 3月末基準の配当金は、約220円と予想されています。従って、日経平均先物(6月限)は、日経平均(現物)よりも、220円低い値段が付くのです。

 ところが、3月28日以降は、日経平均と先物(6月限)は、ほぼ同値で売買されることになります。3月27日までに日経平均(現物)を買えば、3月末基準の配当金が得られますが、権利落ち日の3月28日以降に買っても、配当金は得られないからです。先物を持っていても、現物を持っていても、3月末基準の配当が得られないのは、同じです。

 従って、3月28日から6月13日(日経平均先物6月限の最終売買日)まで、日経平均先物(6月限)を保有しても、日経平均を保有しても、どちらも3月配当金が得られないという点で、同じになります。従って、3月28日以降は、両者はほぼ同値で推移することになります。

<参考>日経平均先物(6月限)の理論値の計算方法

 詳しい説明は割愛します。概算値を出す計算式を掲載します。

(日経平均先物6月限理論値)=(日経平均の値)-(6月13日まで日経平均現物を保有することで得られる配当金予想額)+(日経平均現物を購入するのに必要な現金を6月13日まで短期金融市場で運用した時に得られる利息)

 現在、短期金利はほぼゼロなので、金利要因は無視しても大丈夫です。配当落ちは、3月が特に大きいが、9月や12月にもあります。

 東京株式市場の取引時間中は、日経平均先物が理論値から大きくかい離することはありません。かい離すれば、裁定取引が入り、先物は常に理論値の近くに維持されます。

 ただし、東京市場の現物取引時間が終了すると(15時以降)、日経平均先物は理論値からかい離して動くようになります。裁定取引が入らないので、大引け後のニュースに反応して、日経平均の理論値から離れて動くわけです。

 今日の説明は、分かりにくくてすみません。途中に掲載した「これだけ覚えてください!二つのポイント」だけ、頭に入れていただければOKです。

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2023年9月20日:日経平均先物を見る時の注意点:9月27日まで日経平均より約208円低い値で推移する