※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「1ドル130円まで円高が進むと日本株どうなる?」
円高で日経平均はやや上値重く
先週(営業日11月27日~12月1日)の日経平均株価は、1週間で約194円下落して、3万3,431円となりました。企業業績好調を背景に上昇してきた日本株ですが、足元、為替が円高にふれたことを警戒して、上値が重くなっています。
日経平均週足:2023年1月4日~12月1日
今日のレポートは、11月30日のレポート「1ドル130円まで進むと日本株どうなる?」の続編です。
今年は、米FRB(連邦準備制度理事会)が利上げを続ける中、日本銀行は金利引き上げに慎重だったため、日米金利差が拡大する思惑で円安が続いてきました。
ところが、11月下旬より円高に転じています。来年にかけて、米利上げ終了、場合によっては米利下げもあり得るとの見通しが広がってきた影響です。また、日銀がさらなる長期金利上昇を容認せざるを得なくなるとの見方も、円高圧力となっています。これまでとは逆に、米金利が低下、円金利が上昇して、日米金利差が縮小する思惑が出ています。
もし来年にかけて実際に日米金利差が縮小トレンドとなり、1ドル=130円まで円高が進むと、日本株はどうなるでしょう?
私の考えは、以下の通りです。
【1】米景気がソフトランディングする(減速するが景気後退とはならない)中で1ドル=130円まで円高が進むなら、東証プライムの純利益は増益を維持し、日本株は上値トライすると予想。
【2】米景気がハードランディングする(景気後退に陥る)中で1ドル=130円へ円高が進むならば、東証の純利益は減益となり、日本株は下落すると予想。
円高になると日本株が売られる理由
円高は、「日本の企業業績にとってマイナス要因」なので日本株が下がりやすくなります。ただし、それだけではありません。日本株の動きを支配している外国人投資家が、「円高になると日本株を売りたくなる」ことが、日本株が下がりやすくなる最も直接的な理由です。
日経平均・ドル建て日経平均とナスダック総合指数の動き比較:2019年末~2023年12月1日
外国人投資家は、ドルを円に転換して、日本株に投資します。したがって、日本株(円建て)が上昇するまたは円高(対米ドル)が進むと、外国人投資家にとってのリターンは高まります。
逆に、日本株(円建て)が値下がりする、または円安が進むと、外国人投資家にとってのリターンが悪化します。つまり、日経平均に投資した外国人のリターンは、「ドル建て日経平均」の動きに表れているわけです。
上のグラフを見ていただくと、円安(ドル高)が進んだ2021年から2022年にかけて、日経平均はほとんど横ばいなのに、ドル建て日経平均は大きく値下がりしています。日経平均に投資している外国人投資家は、円安によって投資価値が目減りしていったわけです。
外国人投資家にとって、円安が進む時は、次の二つのことが同時に起こるので、円安では外国人は日本株を買いやすくなります。
【1】ドル建て日経平均が値下がり(日本株を安く買えるようになる)
【2】日本株の業績が円安で改善する期待が出る
逆に、円高が進む時は、外国人にとって次の2つのことが同時に起こるので、円高では外国人は日本株を売りやすくなります。
【3】ドル建て日経平均が値上がり(日本株を高く売れるようになる)
【4】日本株の業績が円高で悪化する懸念が出る
ただし、米景気がソフトランディングするならば、東証は来期、増益を続けると予想しています。ソフトランディングが実現すれば、米国株も上昇が見込めると思っています。したがって、ソフトランディングの中での円高ならば、私は日経平均はさらに上昇すると予想しています。
東証プライム上場主要841社の業績予想
楽天証券経済研究所では、メインシナリオで、米景気ソフトランディングを予想しています。その前提で、東証(東京証券取引所)の連結純利益は、来期(2025年3月期)、以下の通り、増益を予想しています。
東証プライム上場主要841社の連結純利益、前期比(%):2020年3月期‐2025年3月期(楽天証券予想)
来期、1ドル=142円を前提とすると、今期(11.3%増益)に続いて、7.9%の増益となると予想しています。ただし、1ドル=130円の場合は、3.1%増益になると予想しています。円高になると、増益率は低くなりますが、それでも増益を維持すると予想しています。
▼著者おすすめのバックナンバー
2023年11月30日:1ドル130円まで円高が進むと日本株どうなる?(窪田真之)
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。