トウシル:リーマンショックのさなかでも、配当金が振り込まれるのを見て、どう思われましたか?

配当太郎:あの頃は市場が動いていないというか、ボラティリティが大きくなくて、日本もねじれ国会などで政情も落ち着いていなくて、こんな状態でジタバタ動いても仕方がないと、腹をくくっていました。ただ、そんな中でも、着実に配当金は入ってきていたので「配当ってありがたいなー」と思って、今後の投資はこのあたりを狙ってやってみようかな、と思い始めました。

 プライベートでもちょうど忙しくなってきた頃で、そうそう株価もチェックしていられなくなってきていて、配当金が入ってくる銘柄に寄せ始めていました。

トウシル:似たようなことをおっしゃる優待投資家さんも多いんです。株価が上がらなくても、優待品が送られてくるとかなりメンタル的に違うと。配当太郎さんが株主優待銘柄へ行かなかった理由はなんですか?

配当太郎:あ、優待銘柄も持っていましたよ。優待も嫌いじゃないですし、普通にうれしいです。優待目当てで日本マクドナルドホールディングス(2702)も保有していました。ただ、あれこれ保有しすぎると…だんだんめんどくさくなってきて。

トウシル:有効期限の管理などが面倒でしたか?

配当太郎:優待を選んだり、送られてくるのを受け取ったり、期限までに使い切らないといけないなど、けっこう煩雑でしょう? 「あれ? なんでこれにこんなに追われているんだろう?」と思ってしまって。

 それに優待って、企業都合で突然廃止されたりもするじゃないですか。これって結局、株主本位じゃない部分もあるな、と思って、少しずつ手を引いていきました。でもマクドナルドはよく行くので今も保有しています。

トウシル:確かに、配当銘柄は、手間はかかりませんよね。

配当太郎:そうなんです。会社が利益を出し続けてさえいれば、保有している限り、配当金が自動的に振り込まれるので本当に楽です。優待品が本当に欲しいなら、配当金を使って同じ商品を買えばいいし、優待割引になるお店だって、本当に行きたければお金を出して食べに行けばいい。配当金ならば使いみちも自由で、再投資にも回せます。

 でも、優待が楽しい人を否定するわけじゃないんです。優待が楽しい人はそれでいいけど、私は現金が分配される配当株投資が性に合っていたと思います。

トウシル:なるほど。確かに人を選ばない印象がありますね。

配当太郎:はい。それで保有銘柄も自然とインカムゲインがあるものに寄せていって、10年以上がたちました。今では保有銘柄の9割が配当銘柄で、安定的に配当金が入ってきています。

トウシル:10年かけて、コレと狙った優良銘柄を見つけて、地道に保有額を増やしていったんですね。

配当太郎:はい。それまでは業績など気にせず、まさに興味のおもむくまま、この銘柄が欲しい、あれも持ってみたい、と直感で投資をしていましたが、配当が得られる銘柄に寄せるようになってからは、しっかりと業績や数値をチェックするようになりました。

トウシル:配当金を得られるようになると「給与以外に定期収入がある」という、インフレや不況時代にも心強い支えができますね。

配当太郎:はい。株式投資をしている人の多くは、株価上昇→売却による「キャピタルゲイン」をメインに考えている方が多いように思うのですが、私は全く逆の見方をしていて、配当による「インカムゲイン」こそが主産物だと思っています。

トウシル:なるほど。「保有している株はよほどのことがないかぎり売るつもりはない」と著書に書いてあったのですが、保有額を増やす→配当金を増やす→再投資でさらに増やす、という手法で、着実に利益を増やしているんですね。

配当太郎:はい。書籍の中でも書きましたが、雪だるまを作るときは、最初は小さな塊から始めますよね。それと同じで、小さな塊をどんどん転がしていくうち、大きな雪玉が自然にできあがる、というのが、私が実践している投資のイメージなんです。

トウシル:最初の塊=投資資金は少なくてもいい、ということですか?

配当太郎:資金がない場合は仕方がありませんが、できれば100万円、と著書の中では書いています。ただ、それよりも、末永く持ち続けることが可能な「永続投資」であること、株価が下がるのを待つのではなく、買い続ける習慣を身に付ける、という継続可能な投資をすることを推奨しています。

 そして、配当株投資で着実に配当収入を増やしていくには、配当銘柄であるだけでなく、「増配する」企業を選んで、そこに資金を投入していくことが重要です。

 実は、私は、著書の中でも「高配当株投資」とは一言も言っていないんです。単に高配当株銘柄だけを選んでいるだけでは、なかなか配当金は増えていきません。基本的には「増配」銘柄を選んでいくことが重要なんです。

トウシル:あっ、本当だ…。「高配当株投資」をしよう、とはどこにも書いていない…。

配当太郎:そうなんです。だから、私は「高配当株投資家」ではなく…いうなれば「増配株投資家」という言い方になりますね。

トウシル:「増配株投資家」として配当収入を得るためには、増配銘柄をしっかり選んで、買い続けることが必要なんですね。ただ、「増配銘柄」の中にも、良しあしがあると思います。後編では、配当太郎さんの「長く付き合える増配銘柄」の選び方について伺います!

>>前編「小さいころから投資上手?肝の据わった子供時代 増配株投資家 配当太郎さんインタビュー前編」
>>後編「実況、優良増配当銘柄の探し方!増配株投資家 配当太郎さんインタビュー後編」