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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
今週の2大イベント:FRBと日銀が金融政策発表へ。どうなる日本株?

米インフレ率上昇、日経平均は上昇

 先週(9月11~15日)の日経平均株価は、1週間で926円上昇して3万3,533円となりました。

 8月の米インフレ率(CPI[消費者物価指数]総合指数の前年比上昇率)が3.7%と2カ月連続で上昇したことを受けて、インフレ収束が遠のき金融引き締めが長期化するリスクが意識されています。それでも日本株の上昇は続きました。米国および日本の金利上昇への警戒はあるものの、それよりも、米国および日本の景気が堅調であることを好感した形です。

米インフレ(CPI総合・コア指数の前年比上昇率)推移:2020年1月~2023年8月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

日経平均・ナスダック総合指数比較:2021年末~2023年9月15日

出所:2021年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 過去2年にわたり、米景気がソフトランディングするかハードランディングするか、議論が続いてきましたが、いまだに結論が出ていません。2022年はハードランディングの不安が勝り、ナスダック(ナスダック総合指数)の下落が続きました。

 2023年に入り、米景気が堅調なうちに、米インフレが低下してきたことから、ソフトランディングの期待が高まりました。それでも、FRB(米連邦準備制度理事会)がいつまでも利上げを続ける姿勢を崩していないことに不安はあります。

 8月前半は、米国債格下げショック(米格付会社フィッチが米国債の格付をAAAからAA+へ1段階引き下げ)をきっかけに米長期金利が4%台に乗せると、ナスダックは下落しました。8月後半は、ソフトランディングへの期待が復活し、ナスダックは反発しましたが、8月の米CPIが3.7%まで上昇したことを受けて、9月は利上げ不安が蒸し返され、ナスダックは反落しました。

米長期(10年・2年)金利と短期金利(FF金利)の動き:2021年1月4日~2023年9月15日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 米景気は、長短金利が逆転してから1年くらい後にリセッション(景気後退局面)入りしたことがよくあります。ただし、そうならなかったこともあります。

 すでに長短金利が逆転してから約1年が経ちますが、米景気は堅調なままです。私は、今回はリセッションまで落ち込むことなく、持ち直すと予想しています。

米景気堅調で原油反発が続く

 8月の米CPIをもう一度見てください。総合インフレ率は上昇していますが、コア・インフレ率(エネルギーと食品を除くコアCPIの前年比上昇率)は低下しています。

再掲:米インフレ(CPI総合・コア指数の前年比上昇率)推移:2020年1月~2023年8月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 8月の総合CPIの上昇は、ガソリン価格の上昇が原因です。サウジアラビアとロシアが減産を延長したこと、米景気が堅調であることを受けて、原油価格の反発が続いていることが影響しています。

WTI原油先物(期近)推移:2021年1月4日~2023年9月15日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

今週の2大イベント

 金利上昇への懸念が強まる中、今週は2大イベントを迎えます。米国と日本の金融政策を決める会合が開かれることです。その結果によって、波乱もあり得ます。

【1】9月19・20日のFOMC

「利上げなし」と予想しています。市場コンセンサスも「利上げなし」です。ただし、年内あと1回0.25%の利上げがあるとの示唆は残ると考えられます。

 FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーによる2023年末FF金利予想から、あと1回の利上げがあるとの示唆が残る可能性があります。パウエルFRB議長の記者会見でも、インフレに対する懸念は続くとタカ派トーンでコメントする可能性があります。

 まとめると、9月の利上げはないものの、まだ年内利上げがあるかもしれないとの不安が残るFOMCとなると、予想します。

【2】9月21・22日の日銀金融政策決定会合

 金融政策「変更なし」と予想します。前回(7月27・28日)の日銀金融政策決定会合で、長期(10年)金利の上限を1%まで引き上げ、2023年のインフレ見通しも引き上げたばかりなので、今回は変更なしとなるでしょう。一部に「マイナス金利をやめる」政策変更があるという予想が出ていますが、今回はそういった変更はないと予想します。

 ただし、先行き、マイナス金利の解消はいずれ必要になるという思惑は残ると考えられます。

日本株投資戦略

 今週の日米金融政策の中身によっては、いったん調整入りする可能性もあります。ただし、日本株が割安で、長期的に良い買い場との投資判断は変わりません。時間分散しながら少しずつ割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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