三大割安株の上昇続く

 2022年以降、グロース株(成長株)が不振の中、バリュー株(割安株)の株価上昇が続いてきました。

TOPIXバリュー指数・TOPIXグロース指数・日経平均の推移比較:2020年末~2023年9月13日

出所:2020年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 中でも、「三大割安株」と私が呼んで推奨してきたバリュー株が好調です。「三大割安株」とは私が勝手にネーミングしたもので、金融株・資源関連株・製造業(自動車・素材など)のことです。

 その三セクターに、利益も配当もしっかり出してきているのに株式市場で「オールド株」とみなされて人気が無く株価が低迷してきた銘柄が多数あります。結果的に、配当利回りが高く、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)が低い銘柄が多いので、私は三大割安株と名づけました。

 今日は、1株単位から売買できる楽天証券の「かぶミニ」を使って、三大割安株をまとめ買いする方法をご紹介します。その前に、三大割安株の近年の株価変動要因をレビューします。

三大割安株が2020年まで低迷、2021年から好調な理由

 三大割安株が2020年まで不人気だったのは、それまでの経済環境が逆風だったからです。2021年以降、株価が好調なのは、経済環境が追い風になったからです。

【1】金融株

 2020年まで世界的に金利低下が続いたため、金融株が売られました。金利が低下すると銀行などの金融株は利益が出しにくくなるというイメージがあったからです。実際には低金利でもしっかり利益を稼ぐ金融株は多数ありました。きちんと利益も配当も出しているのに、金利低下で株価の低迷が続いたため、金融株には割安株が多くなりました。

 2021年以降、FRB(米連邦準備制度理事会)が急激な利上げを行い、ドル金利が上昇に転じたことによって世界的に金融株が上昇に転じると、日本の金融株も上昇し始めました。

 2022年12月に日本銀行が日本の長期(10年)金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げると、日本の金融株の上昇が加速しました。中でも、銀行株の上昇が目立ちました。2023年7月、日銀が長期金利の上限を1%まで引き上げると、銀行株はさらに上昇しました。

 日本の銀行は、長期金利をゼロ近辺に固定する日銀による*YCC(イールドカーブコントロール)政策で痛めつけられてきたので、日本のインフレ率の上昇に伴い、長期金利が上昇していることが、銀行株の株価に強い追い風となっています。

*YCC…長期金利と短期金利の誘導目標を操作し、イールドカーブを適切な水準に維持すること

日本の長期(10年)金利推移:2022年8月1日~2023年9月13日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【2】資源関連株

 2020年まで世界的に原油などの資源が慢性的に供給過剰で価格下落が続いたため、資源関連株は不人気でした。それでも資源関連株はそこそこ利益を出していましたが、株価低迷が続いたため割安株が多くなりました。

 2021年以降、世界景気回復で資源価格が上昇を始め、さらに2022年2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、エネルギー価格が急騰すると、資源価格の上昇に弾みがつきました。

 その後、世界景気の減速を受けて資源価格は下落に転じていましたが、足元、米景気がしぶとく好調であることを受けて、反発に転じています。資源価格は高止まりしており、資源関連株の株価は堅調に推移しています。

 以下、CRB指数の動きから、それがわかります。CRB指数とは、エネルギーや貴金属、農産物などの価格を幅広く取り込んだ指数で、世界的な資源・穀物価格の推移を表す代表的指数です。

CRB指数の月次推移:2000年1月~2023年9月(13日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【3】製造業が低迷した理由

 2020年まで、世界的にデフレが広がったことが製造業に逆風でした。モノは一時的に不足しても、すぐに大量生産されて供給過剰になって、価格が下がってしまうのが、当たり前でした。

 製造業では稼げない時代になったと考えられていたため、自動車・鉄鋼・化学などの製造業株は、そこそこ利益を出しても株価の低迷が続きました。自動車などの製造業には、割安株が増えました。

 2021年以降、米国や欧州を中心に、深刻なインフレが起こったことが、製造業全般に追い風となりました。当初はエネルギー・穀物中心の物価上昇でしたが、次第に賃金・物価全般に上昇が広がっており、それが製造業全般の業績を押し上げる段階に入っています。

 インフレは製造業にとって追い風です。値下げが当たり前だった製造業で、値上げが通るようになると、業績にプラスです。原料高に対応した値上げができずに業績が悪化する製造業もありますが、製造業全般を見渡すと、値上げや数量増の恩恵で増益となる銘柄が増えています。

日本のインフレ率(CPI総合・コアコア指数前年比上昇率)推移:2020年1月~2023年7月

出所:総務省より楽天証券経済研究所が作成

「三大割安株」投資の参考銘柄、PBR1倍割れから選別

 三大割安株は、2023年に軒並み急騰しています。それでも株価指標でみると「まだ割安」と判断しています。予想配当利回りの高い銘柄が多く、引き続き投資価値が高いと判断しています。

 そこで、今日は「かぶミニ」を使って三大割安株を「金融株」「資源関連株」「製造業」に分けて、まとめて買う方法をご紹介します。今日は、中でも、PBRが1倍を割れている銘柄から選別します。

 日本では、解散価値であるPBR1倍を割り込んだ銘柄が東証プライム市場でも半数以上あります。これに対し、東京証券取引所(東証)が、PBR1倍割れ銘柄に対し、株主価値の改善策の開示・実施を要請したことが話題となっています。この要請を受けて、財務内容が良好なのにPBR1倍を割れている銘柄には、これから、自社株買いを増やす動きが続くと予想しています。

三大割安株、PBR1倍割れから選別した投資の参考銘柄:2023年9月13日時点

出所:楽天証券経済研究所が作成。配当利回りは1株当たり配当金(今期予想)を9月13日株価で割って算出。今期とはINPEX・クラレは2023年12月期、その他銘柄は2024年3月期のこと。1株当たり配当金は、会社予想。PERは、今期1株当たり利益(会社予想)を9月13日株価で割って算出。告知事項:筆者は三井住友FG株を9,000株保有

 ご覧いただくと、配当利回りが高く、PER・PBRが低い銘柄が多いことがわかります。財務が良好で、利益も配当もしっかり出しているのに不人気で、株価が長く低迷してきたために、足元株価が急騰していても、なお株価指標で割安と判断できる水準です。

 上記の三大割安株について、筆者は「買い」と判断しています。ただし、個別銘柄のリスクは大きいので、なるべく複数銘柄をセットで買った方が良いと思います。以下、楽天証券のかぶミニを使って、金融株・資源関連株・製造業の割安株に幅広く分散投資する方法をご紹介します。それぞれ9月13日時点で、約2万円で買えるポートフォリオとしています。

金融株・資源関連株・製造業のかぶミニポートフォリオ:2023年9月13日時点

金融株ポートフォリオ(予想配当利回り3.3%)
銘柄名 配当利回り 株価 投資株数 投資金額 投資比率
三菱UFJ FG 3.1% 1,317.0 5 6,585 33.5%
三井住友FG 3.4% 7,419.0 1 7,419 37.7%
オリックス 3.3% 2,841.0 2 5,682 28.9%
合 計 3.3%   8 19,686 100.0%
資源関連株ポートフォリオ(予想配当利回り3.6%)
銘柄名 配当利回り 株価 投資株数 投資金額 投資比率
INPEX 3.3% 2,241.5 3 6,725 34.7%
ENEOS HD 3.7% 591.5 11 6,507 33.5%
住友商事 3.9% 3,083.0 2 6,166 31.8%
合 計 3.6%   16 19,398 100.0%
製造業ポートフォリオ(予想配当利回り2.9%)
銘柄名 配当利回り 株価 投資株数 投資金額 投資比率
本田技研工業 2.0% 5,061.0 1 5,061 26.0%
クラレ 3.0% 1,692.0 4 6,768 34.8%
三菱ケミカルG 3.4% 952.0 8 7,616 39.2%
合 計 2.9%   13 19,445 100.0%
出所:楽天証券経済研究所が作成、投資金額合計には買付にかかるマーケットインパクト、スプレッドを含めていない

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