株価変動リスクを抑えつつ株主優待を受け取る「優待タダ取り」とは?

 今回も前回に引き続き、株主優待目的の銘柄選びや投資そのものにおいて注視すべきポイントを4つほどお伝えします。

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 まず初めに「優待タダ取り」についてです。

 株主優待品が欲しいけれど、株価の変動により損失が生じるのは避けたいという個人投資家が行っているのが「優待タダ取り」。

 これは、株主優待品を欲しい銘柄の株を現物にて買うとともに信用取引を使って、同じ株を同じ株数だけ信用売り(空売り)をするというものです。

 そして株主優待の権利確定の翌日(権利落ち)になったら、空売りしている建玉を現渡しにより決済することで、株価変動のリスクなく株主優待品を受け取ることができます。

 細かく言えば、取引手数料や、信用売りの金利といったコストがかかりますが、それを上回るメリットがあるのであれば有効な手法でしょう。

 信用売りする際、制度信用取引を使うと、逆日歩(ぎゃくひぶ)というコストがかかることがあり、時に想定外の額となって株主優待を受け取るメリットを上回る恐れがあります。

 楽天証券であれば、一般信用取引を使えば逆日歩は発生しませんので、こちらを使うのが安全です。

そもそも信用買いだと優待をもらえない

 投資初心者や初級者の方は意外と勘違いをしていることも多い注意点ですが、株主優待を受け取るには、その株を「現物」(現金で購入すること)で保有している必要があります。

 信用取引でも株主優待を実施している株を買うことができますが、実は信用取引による買いは、株そのものを保有した状態ではないのです。

 そのため、株主優待を受け取る権利もありませんし、株主総会で議決権を行使する権利もありません。配当金を受け取る権利もないのです(ただし配当落調整額といった、配当金の代わりになるものは受け取れます)。

 ですから、株主優待を受け取りたければ必ず現物で買い、株主優待の権利確定日まで保有するようにしてください。

バイ・アンド・ホールドするなら銘柄分散をしておこう

 株主優待メインに株式投資をする場合、例えば株価が上昇トレンドだから買うとか、下降トレンドに転じたから売る、といった行動をする方は少ないと思います。

 基本的には買ったらそのまま保有するバイ・アンド・ホールドが主流でしょう。

 また近年は、保有期間が長いほど株主優待の内容がグレードアップするという銘柄も増えていますので、なおさらバイ・アンド・ホールドの傾向が強くなっていると思われます。

 しかし、バイ・アンド・ホールドの場合、確かに株主優待は受け取れますが、株価下落により多額の含み損が生じてしまう場合もあります。

 ですから、そのリスクを避けるため、一部の銘柄に資金を集中させるのではなく、できるだけ多くの銘柄に資金を分散させておくのが望ましいです。

 銘柄によっては、保有株数により優待内容が大きく異なるものも少なくありません。よりグレードの高い株主優待を受け取りたいからと、一部の銘柄への投資額を高めてしまうと、株価が大きく下がった場合、株主優待を大きく上回る含み損を抱えてしまう恐れもあります。

 株主優待のグレードアップよりも、大きな損失を避けることの方が株式投資でははるかに重要ですので、十分に気を付けてください。

 幸いなことに、例えば同じ株を100株保有しても200株保有しても株主優待の内容が同じ、という銘柄が多いので、自然と投資する銘柄は分散する傾向にあるのが株主優待目的の投資です。それでも、できれば10銘柄以上に資金を分散させることがリスク軽減につながりますので、ご自身のポートフォリオを見直してみてください。

株主優待の廃止が相次いでいる点には十分に注意

 株主優待目的の個人投資家が最も警戒すべきリスク、それは「株主優待制度の廃止が相次いでいる」という点です。

 実は株主優待は、株主間の不公平につながっている制度であることはご存じでしょうか。
例えば100万株を保有している大株主は、100株しか保有していない株主の1万倍の株主優待を受け取っているかといえば、そんなことは全くありません。銘柄によっては、100万株保有の株主と、100株しか保有していない株主とで、株主優待品の内容が同じということもあります。

 そのため、外国人投資家や機関投資家からは、各上場企業に対して株主優待の廃止が求められている状況です。

 現に、個人投資家に人気の銘柄であるJT(日本たばこ産業、2914)は、2022年12月末の株主への株主優待を最後に株主優待制度を廃止しましたし、オリックス(8591)は、2024年3月末をもって株主優待制度を廃止すると発表しています。

 それ以外にも、今年に入ってからもトプコン(7732)ノエビアホールディングス(4928)あさひ(3333)など、30社を超える企業が株主優待の廃止を発表しているのです。

 特に、業績が思わしくないにもかかわらず、株主優待が個人投資家に人気のため値を保っていると思われるような銘柄は、株主優待の廃止により、優待品ももらえず、株価も急落して大きな損失を被るという、二重のリスクを抱えていることになります。

 したがって、少なくとも上で述べたように1つの銘柄に資金を集中させるのではなく、数多くの銘柄に資金を分散させて、こうしたリスクを軽減するような手だてをしておくようにしましょう。

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