9月11日のTOPIX上昇、銀行株は急騰

 週明け11日の日経平均株価(225種)の終値は前週末比139円(0.43%)下がって3万2,467円となりました。というと、11日の日本株は全般に下がったように見えますが、そうではありません。この日のTOPIX(東証株価指数)は、前週末比0.06%上昇しました。銀行株指数はなんと4.69%高と急騰しました。

 日経平均株価は、最上位の東証プライム市場に上場する銘柄から225銘柄のみ選ばれていますが、TOPIXはプライム市場、スタンダード市場、グロース市場に上場する内国普通株式が対象で日本の株式市場を広範に網羅しています。

9月11日の日本株:主要株価指数の騰落率

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

植田日銀総裁の発言で金融政策正常化が早まるとの見通し広がる

 11日の日本株は、上の表を見て分かる通り、上がったものと下がったもので、はっきり二極化しました。

 このような二極化を生じたのが、9日に読売新聞オンラインに出た、日本銀行の植田和男総裁のインタビュー記事です。

 この記事によると、植田総裁は賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、マイナス金利政策の解除を含め「(金融政策正常化に向けた)いろいろなオプション(選択肢)がある」と語り、年内にも判断できる材料が出そろう可能性があると示唆しました。

 マイナス金利の解除、YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)政策の見直しなど金融政策の正常化は来年以降になるというのが、市場コンセンサスだったので、それよりも早くに正常化が始まる可能性を示唆したことはサプライズ(驚き)でした。

 これを受けて、11日の国内債券市場で、長期金利は、0.7%台に上昇しました。

日本の長期金利(10年国債利回り)の推移:2022年8月1日~2023年9月11日

出所:QUICKより作成

 長期金利上昇を受けて、大型グロース(成長)株が売られ、大型グロース株の構成比が高い日経平均はマイナスとなりました。一方、金利上昇で収益改善の期待が高まる銀行株は急騰。銀行株を含むバリュー(割安)株が全般に上昇しました。その結果、TOPIXバリュー指数は上昇、TOPIXは小幅高となりました。

インフレ・金利上昇はバリュー株に追い風

 2021年以降3年にわたり、日本株でバリュー株優位が続いています。それが、以下のTOPIXバリュー指数、TOPIXグロース指数の動きを見ると分かります。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の次推移:2009年末~2023年9月(11日)

出所:QUICKより作成。2009年末の値を100として指数化

 バリュー株とは、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低い、配当利回りが高いなど株価指標で見て割安な株のことです。金融株・資源関連株・素材市況関連株に、バリュー株がたくさんあります。

 共通点は、インフレが追い風になる「インフレ・メリット株」が多いことです。インフレが高まると、長期金利が上昇するので、金融株も上昇します。特に、低金利で痛めつけられてきた銀行株の上昇が目立ちます。

 グロース優位からバリュー優位への転換点となったのが、2021年です。その年から、世界中でインフレ・金利上昇が進みました。グロース株に逆風ですが、金融・資源関連・素材市況関連部の業績・株価には追い風となりました。

 一方、グロース株は、バリュー株とは逆の動きをしています。グロース株には、IT・ネット関連株やバイオ関連株が含まれます。2016~2020年の5年間、グロース株好調・バリュー株不振が続いていましたが、2021年以降は、インフレ・金利上昇によって売られるようになってきています。

 2023年に入り、生成AI(人工知能)がブレイクする期待から、米国ではナスダック上場の大型成長株が大きく上昇しています。日本にも、生成AI関連の成長株を買う流れは一時広がりましたが、相場の大きな流れを変えるには至っていません。日本は、2023年に入ってから、インフレ率が一段と上昇しており、インフレを追い風とするバリュー株の物色は続いています。

 私は、日本でインフレ・金利上昇はさらに続き、バリュー優位の物色動向は当面変わらないとみています。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)など、割安な金融株の保有を継続していくべきと考えています。

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