タワマン節税の封じ込め、ポイントは?
前回に引き続き、「タワマン節税の封じ込め」についての重要ポイントについて解説していきます。
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まず、「タワマン」という言葉に多くの人がだまされていますが、最大のインパクトは、タワーマンションだけが規制の対象になるのではなく、3階建て以上のマンションは全て対象となるということです。
つまり、一般にマンションと呼ばれるものは全て、原則として今回の評価方法変更の対象
になるのです。
ただ、全てのマンションが評価方法変更により相続税の増税につながるというわけではなく、1区画当たりの敷地利用権(土地の持ち分のようなものと考えておけば大丈夫です)が広い低層マンションや、郊外に立地するマンションは、逆に評価額が下がり減税になるケースもありえます。
新しい評価額はどのようにして計算するのか?
改正案における、マンションの評価額の算定方法は次のようになっています。
まず評価乖離(かいり)率を求めます。
評価乖離率=A+B+C+D+3.220
A:マンションの築年数×▲0.033 (▲はマイナスの意味。以下同様)
B:マンションの総階数指数×0.239
C:マンションの一室が存在する階数×0.018
D:マンションの一室における敷地持分狭小度×▲1.195
総階数指数、敷地持分狭小度などは別途定義があるのですが、あまり詳細に説明しすぎると逆に分かりにくくなるので、ここでは割愛します。詳しくはこちらをご覧ください。
そして、1を評価乖離率で割った値である「評価水準」を求め、これが
・1を超える場合(評価乖離率が1を下回っている場合):評価乖離率を補正率とする
・1以下0.6以上の場合(評価乖離率が1~約1.66の場合):補正なし
・0.6未満の場合(評価乖離率が約1.66を超える場合):評価乖離率×0.6を補正率とする
という計算になります。
ざっくり言えば「時価の60%の水準より低ければ時価の60%まで評価を上げる」
おそらく、この数式だけを見ても分からないと思いますので、詳しく知りたい方は有識者会議資料をご覧いただければ、何となくイメージがつくと思います。
今回の改正で行おうとしているのは、現行のルールにより評価した相続税評価額が、時価の60%より低いと計算される場合は、時価の60%の水準まで相続税評価額を引き上げるということです。
例えば時価3億円、相続税評価額1億円のマンションであれば、相続税評価額は時価の33%の水準ですので、これを3億円の60%の水準である1億8,000万円に引き上げるのです。
また、時価3億円、相続税評価額2億円のマンションは、相続税評価額は時価の67%の水準であり、60%を上回りますから、このケースは何も調整はされず、増税とはなりません。
そしてこの「時価の60%」というのは、戸建て物件の平均的な相続税評価額の水準なのです。つまり、今回のタワマン節税の封じ込めは、完全に節税効果を封じ込めるのではなく、戸建て物件程度の節税効果は認めようというものなのです。
これで堂々とタワマン節税ができるわけではない点には注意
タワマン節税が流行した背景には、相続税評価額が時価よりはるかに低くなることによる高い節税効果がありました。
例えば通常のマンションであれば、3億円で購入したものが1億5,000万円程度の相続税評価額になるとしましょう。これでも1億5,000万円の評価額引き下げにつながります。
でも、タワーマンションなら、3億円で購入したものが6,000万円の相続税評価額になり、引き下げ効果は2億4,000万円となったりします。
このように、同じ資金でより大きな節税効果が狙えるのがタワマン節税だったわけです。
今回の改正案が通ると、令和6年以降の相続または贈与において、マンションの相続税評価額の下限が時価の60%水準になります。
上記の例であれば、通常のマンションもタワーマンションも3億円の60%である1億8,000万円の評価額に引き上がることになり、すでにマンションを保有している方にとっては増税につながります。
一方、これからマンションを買って節税効果を享受しようとする方としては、確かに節税効果は小さくはなったものの、時価の40%相当は節税できることになりますから、節税が封じ込められた、というのは言い過ぎで、節税効果が縮減したという表現の方が適切です。
ただし、タワーマンションの場合は、前回のコラムでご説明しました「総則6項」の発動に常に気を付けなければなりません。
例えば30億円を借り入れし、全額をタワーマンションに投じることで、相続税評価額が18億円になり、数字の上では12億円の評価額引き下げの効果が得られます。
でも、この行為そのものが、課税の公正の面からみて著しく不適当と課税当局に判断されれば、相続税評価額は18億円ではなく、時価である30億円に近い金額に是正される可能性も大いにあり得ます。
縮減はされるものの、まだ比較的大きな節税効果は維持されるマンションの相続税評価。一方で総則6項の発動により、節税効果をほとんど否認されてしまう恐れは引き続きありますから、節度ある節税対策が今後は求められそうです。
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