「最初の1本」の次は、米国株と相関の低い資産を
前回の本連載では、近年、超過リターンを継続的に獲得することが難しくなっている米国株式市場の実情について解説しました。また、分散投資の観点で、優良なアクティブファンドが多い日本株や、アフターコロナの動きに注目が集まる新興国株式を組み合わせることの意義についても触れました。今回は、具体的な分散投資の実践方法について解説します。
S&P500種指数連動型のインデックスファンドをはじめ、米国株式を積立投資の「最初の1本」として選択することは決して間違っていません。というのも、S&P500指数は事実として、世界の株式市場の時価総額の約半分を占めるほどの存在感を示しているからです。
しかし、その事実が、必ずしも米国株式の右肩上がりの上昇を意味するわけではありません。あくまでも一国の株式市場ですから、良いときもあれば悪いときもあります。重要なのは、お金が必要になったときと、相場の「悪いとき」が重ならないようにすることです。
これを実現するには、「S&P500に弱点はある?やってはいけない投資行動とは」でも触れた通り、値動きの方向が異なる、つまり、相関の低い資産を意識的に複数保有するという方法が有効です。
金(ゴールド)、中国株に注目!
一般的に、米国株式と相関が低い資産としては、金(ゴールド)がよく知られています。金は、いわゆる「ショック」の際に、株式の下落を金の上昇で和らげる効果が期待できるためです。(※投資信託の金投資について、詳しくはこちらの記事をご参照。)
また、前回の本連載で少し触れた中国株式も、コロナ禍以降加速した米中経済のデカップリング(切り離し)の影響を受け、近年、米国株式との相関が低下しています。
中国株式の投資信託はアクティブ型が中心で、ファンドごとに特徴も値動きも異なるという点には注意が必要ですが、中長期にわたり、高い楽天証券ファンドスコアを獲得し続けている「フィデリティ・チャイナ・フォーカス・オープン」 を例に取って見てみましょう。
足元2年程度の運用成績の推移を「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と比較すると、「ジグザグ」の形状を描いていることが分かります。米国株式が振るわないときは、総じて中国株式のパフォーマンスが良く、逆もまた然りです。この傾向は、2021年の夏ごろから顕著に見られるようになりました。
日本株のアクティブファンドは、分散投資に向いている?
では、冒頭でも少し触れた、日本株のアクティブファンドはどうでしょうか。足元では、日経平均株価が1年8カ月ぶりに3万円を上回り、日本株に興味を持ったという方も多いかもしれません。日本株は、米国株と「相関が低い」と完全には言い切れないものの、分散投資の対象としては十分に機能すると、筆者は考えます。
現に、足元の日本株の上昇は、米国株式市場の動きと完全に連動しているというわけではなく、好調な企業業績やインバウンド需要というポジティブな要素と、債務上限問題などを抱えた米国株を買いづらいという複合的な要因によってもたらされています。
なお、これは日本株に限ったことではありませんが、アクティブファンドを選ぶ際は、過去の実績だけでなく、もう少しシンプルに、ファンドや運用会社の理念・哲学に共感できるがどうか、ということも大切にしてもらいたいと思います。
この点、日本株の方が、個々のファンドの運用方針や、ファンドマネジャーの考えをより身近に感じやすいかもしれません。
気になるファンドはある?安定のアクティブファンド13本
ここでは、中長期にわたり安定した超過収益を獲得しているアクティブファンドを、各ファンドの特徴なども考慮に入れ、以下の通り13本ピックアップしました。運用成績にばらつきが見られるのは、各ファンドの投資方針に特徴があり、組み入れ銘柄も異なるためです。
まずは気になったファンドの個性をざっくりと把握するところから始めてみてください。
ファンド名 | 運用会社 | 年率 リターン (%) |
設定日 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
3年 | 5年 | 10年 | |||||
1 | 小型ブルーチップオープン ★ | 野村 | 19.72 | 9.27 | 11.78 | 1996/7/31 | |
2 | 日興エボリューション | 日興 | 16.99 | 7.21 | 8.41 | 2000/4/21 | |
3 | ONE国内株オープン | AMOne | 17.75 | 7.37 | 13.56 | 2000/8/30 | |
4 | ミュータント | 日興 | 16.21 | 8.49 | 9.03 | 2000/9/28 | |
5 | 明治安田セレクト 日本株式ファンド |
明治安田 AM |
27.71 | 10.23 | 9.84 | 2000/12/27 | |
6 | 年金積立 Jグロース | 日興 | 14.42 | 6.38 | 10.70 | 2001/10/31 | |
7 | フィデリティ・日本バリュー・ ファンド |
フィデリティ | 19.86 | 8.27 | 8.56 | 2002/2/28 | |
8 | 日興中小型グロース・ ファンド ★ |
日興 | 17.89 | 4.49 | 11.80 | 2005/11/21 | |
9 | 大和住銀DC国内株式ファンド | 三井住友 DS |
20.02 | 7.84 | 9.17 | 2006/10/23 | |
10 | コモンズ30ファンド | コモンズ | 16.32 | 6.69 | 9.16 | 2009/1/19 | |
11 | スパークス・プレミアム・ 日本超小型株式ファンド ★ |
スパークス | 19.84 | 5.04 | - | 2015/9/30 | |
12 | 企業価値成長小型株ファンド ★ | AMOne | 20.68 | 16.20 | - | 2016/2/29 | |
13 | りそな日本中小型株式ファンド ★ | りそな | 23.90 | - | - | 2018/9/28 | |
※筆者作成。設定日の古い順に並び替え。データは全て4月末時点。★は中小型株ファンド。 |
著者の新刊「【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド」(SBクリエイティブ出版)が2023年4月、全国の書店で発売されました。詳細はこちらから。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。