2024年、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が大きく変わります。恒久化や投資できる額の拡大など、資産づくりを後押しする内容にパワーアップ。個人投資家にとって、使い方の幅がぐっと広がります。

 楽天証券はこのほど、新NISAについて学ぶオンラインセミナーを開催しました。第2部は、個人投資家のテスタ氏、小林亮平氏、たぱぞう氏を招き、それぞれの投資スタイルや新NISAの活用方法について話してもらいました。

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新NISAの感想は?

武田 それでは第2部をスタートします。ここからは、「正解は?新NISAの使い方をみんなで考えよう」と題し、人気の個人投資家さん、インフルエンサーの方々をお迎えして、新NISAの活用方法や新制度を踏まえた今後の投資戦略についてディスカッションしていきます。

 ご登場いただくのは、資産60億円を超えるカリスマ投資家のテスタさん、人気投資YouTuberのバンクアカデミーこと、小林亮平さん、たぱぞう投資大学を運営するたぱぞうさんです。みなさん、今日はよろしくお願いします。

テスタ 小林 たぱぞう よろしくおねがいします。

左から、たぱぞう氏、テスタ氏、小林氏

武田 さて、新NISAすごい制度になりますね。それぞれの率直なご感想をまずお聞きしてみたいと思います。小林さん、初心者の方向けに新NISAについて多くの発信をされていますが、印象としてはどうですか?

小林 かなり良い制度になりそうだと思っています。僕は現在つみたてNISAをやっているんですが、新NISAは非課税枠が大幅に拡大するほか、非課税保有期間が最長20年から無期限になるなど、制度としてかなりパワーアップするので、2024年が楽しみですね。

武田 続いて、米国株中心に資産形成全体の情報発信をされているたぱぞうさん、ご感想はいかがでしょう?

たぱぞう 生涯投資枠1,800万円ということで、一気に投資できる枠が大きくなりますね。制度設計する側の人の悲願も込み込みでの実現。私たち個人投資家も、その枠を生かして自分たちの将来につなげられるといいなと思いました。


武田 最後に、テスタさん。ご自身はすでに60億円以上の資産をお持ちなので、NISAという範囲に収まらないとは思いますが、ご意見を教えてください。

テスタ NISAは株式投資の入り口として良いんじゃないかと思います。僕の周りでも株式投資はしていないけどNISAはやってる、という人がたくさんいます。そこでいろいろ調べて、NISA枠以外で株をやる人も増えている。政府が掲げる「貯蓄から投資へ」の入り口として良い制度だと思ってみてますね。

武田 資産形成という点で、NISAは重要な制度だと思います。新NISA、個人的にどんな風に使うご予定か、もう決めてますか?

小林 2024年から年間投資上限の360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)を5年間続け、最速で1,800万円の投資枠を使ったらどうなるかをシミュレーションしています。YouTubeでもいくつか上がっている情報ですよね。

武田 1部では、もし投資する5年間がマーケットの頂点で、そこから下がっていく相場だとしたら厳しいのでは、という話もありました。そのあたりはどうでしょうか。

小林 うーん…投資したらじっくり運用していけばいいと思っているので、「入れてあとはほったらかし」という考えができているのであれば、良いんじゃないかと思いますね。10年、15年と時間分散して投資するというのもありですが、それも相場次第なので。

自分に合う投資スタイルで資産づくりを

武田 いったんNISAは横において、お三方がどんな投資方法で資産づくりをされてきたか聞いてみましょう。まずはテスタさん、いつからどんな風に投資を始めましたか?

テスタ 2005年の終わりからなので19年目になります。最初の10年くらいは毎日取引して小さい利益を積み重ねるデイトレードをやっていて、それが10億円くらいの大きな資産になると回転しづらくなるので、中長期とかスイングトレード(数日から数週間の短期間で完了する取引)とかいろんな投資をやるようになりました。今はデイトレードをやっていないですが、資産は数十億になりました。

武田 現在中長期で持っている投資対象はどう選んでいますか。

テスタ 基本的には自分の資金に合った銘柄選びが大事です。小さ過ぎるとたくさん買えないし、大きくなればなるほど安定するけど(値動きが大きく)動かなくなる。今はデイトレードをやっていないので、決算を見ることが増えましたね。3カ月ごとに企業決算があり株価が動く可能性があるので、決算を予想したり発表された実績をみたりして、買う銘柄を決めています。

武田 中長期と言っても基本的に投資対象は個別の株ということですね。

テスタ そうですね。僕は日本株です。これは生活スタイルによると思うんです。僕は専業でやっているので毎日数字を見れますけど、毎日見れない人は(指数に連動する値動きを目指して運用する)インデックス投資も一つの対象になるでしょうし。

 ただ、株式投資は仮に始めるのが遅くても、他にお仕事があっても、少しずつ学ぶことはできるはずです。インデックス投資に丸投げしてそれだけで終わらせるのではなく、個別株も対象にすると、そこから先視野が広がってチャンスが増えていきます。やっぱり勉強は止めないでほしい。もったいないですから。

武田 ありがとうございます。たぱぞうさんは、どうやって資産を増やしてきましたか?

たぱぞう 年齢や資産額によって投資の形は変わっています。気が付けば、昨年末くらいで株式とハードアセットの割合が半々になりました。

武田 ハードアセットとは?

たぱぞう 太陽光発電や不動産など、保有して運営することで(使用料や賃料などの収入を)増やすものです。私はデイトレの才能が全然なかったんですけど、それでも若い頃は1週間、2~3カ月と値動きのチャートを見たりもしてました。以前は上昇率を追って投資していましたけど、今は上昇額を意識して、よりわずかな労力で確実性を高める、というスタンスです。 

武田 最後に、小林さん。元銀行員ということで金融の知識も一定ある、という状態だったと思うのですが、どのように資産形成を始めましたか。

小林 先ほどのテスタさんのお話は耳が痛かったんですが…自分の経験で言うと、個別株は諦めて、インデックスファンドの積立投資は楽だなと思って始めました。時間を極力かけずにできるものはないかな、と思っていたので。積み立ての設定だけすれば、後は自動でコツコツ買ってくれる。そんなに大きいリターンを狙うことはできないけれど、それでも多くの人にとって一度始めればほったらかしでもそれなりのリターンを期待できる。自分はインデックスファンドで引き続きやってきたいなと思ってます。

武田 本当に皆さん、投資のやり方は全然違いますよね。正解は一つではない、ということだと思います。難易度的に、テスタさんのやり方はなかなかマネができないように思うんですが。 

小林 いろいろお話を聞いた僕の中の結論、自分にはとても難しそうだなと思っちゃいました(笑)

たぱぞう テスタさんはやっぱり、天才ですね。控室でもお話ししたんですが、将棋の羽生名人みたいな極めた世界観があるんですよね。まあ、羽生名人とお話ししたことないんですけどね(笑)なおかつ、テスタさんは投資が広がるといいよね、という発想もお持ちで、すごく視野が広くて人間も大きくて、ファンになりました。

武田 テスタさんはご自身の投資スタイルについて、他の人もできるものだと思いますか。

テスタ 誰でもできると思っています。僕はそんなに、特段何かの能力に長けているわけではないと思ってますし…。株は、ダイエットと一緒でやればやるほど結果がでるものだと思うんですよ。それを中途半端なところでやめてしまったり、楽して稼ぐ方法はないかな、という入口で始めてる人が多いと思うんです。僕もそうでしたけどね。ただ、たくさん稼ぐとかちゃんと勝つためには、やはりこの世界でも努力しないといけない。僕は最低限やってきたと思う。やれば結果はでます。

武田 逆に、小林さんの方法は王道とも言われるインデックスの積立投資。そこに米国株を加えたのがたぱぞうさんの手法と理解しています。お二人の投資手法をどう思われますか。

テスタ 素晴らしいと思います。みなさん性格も違うし資金の用途も年齢も生活環境も違うわけですよね。どれが誰にあってるのかは、外野からはわからない。本人が試してみてこれが向いてるな、と思うものを突き詰めた結果成功されているので、それは正解だと思う。

 一番駄目なのは、何も考えずに現金をただ銀行に預けている、というもの。物価は上がっていくし預金金利はつかないので、その状態を脱却するのが第一です。少額で試してみたり、勉強だけだったら1円もかからずできるわけですし、その中から自分の得意なモノだけを残していくのが大事だと思います。

知っておきたい、投資の注意点

武田 ここまで、NISAのメリットや投資のいい話ばかりをしてきたので、投資で注意するべきことも教えていただきたいと思います。

たぱぞう 自分は当然だと思ってたんですが、ブログやTwitterを通じて知ったこととして、元本が割れることについて不愉快に思われる人が多い、というのがあります。でも、投資商品は上にも下にも行くリスクがあるんですよね。だから基本的には老後・教育・住居の三大支出に備えて資産形成するのが一般的なやり方です。あまり投資に対してのエクスポージャー(特定のリスクにさらされている資産の割合)を自分の許容よりも大きくしてしまうと、しんどくなってしまう人が多いのかなと、コロナ・ショックをみて思いましたね。

小林 投資に見えたけど、中身は全然投資じゃなかったという、詐欺にも気を付けてほしいですね。その結果、やっぱり投資はやらなきゃよかった、と思われるのは寂しいと感じます。

武田 テスタさんは投資詐欺への警鐘をかなりしっかりやられている印象があります。どう気を付ければよいでしょうか。

テスタ 今は金融教育があるけど、今の大学生より上の世代は自分から習いに行かない限り誰からも習わないことですよね。詐欺もアップデートされるので、常に最新知識をいれて防御態勢をとっておくことは大事です。

 詐欺から身を守るためには、たとえ信頼していても人にお金を預けないことです。信用していると思っているその人本人も、無自覚で誰かにだまされているパターンだってあります。増やすことを考えがちですが、減らさないことは増やすことと同じです。

小林 投資で得られるのはお金だけじゃなくて、そこでいろんな学びがありますよね。インデックスファンドの利回りが年4~5%という目線を持っておけば、毎月数10%をうたう金融商品がおかしいことにも気付きますし、それがなんでだろうと考える。投資を始めることは、自分の中で気付きを得るきっかけになるんじゃないかと思います。

つみたて枠、成長投資枠、どう使う?

武田 新NISAをどう使えばいいのか、という話を具体的に聞いてみます。小林さん、つみたて枠、成長投資枠をどんな商品でどれくらいの金額で使う、というプランを教えてください。

小林 入口は今までのつみたてNISAのイメージで、インデックスファンドで積立投資、というのがシンプルに分かりやすくていいんじゃないかと思います。今のつみたてNISAで選べるインデックスファンドは、新NISAのつみたて枠でも成長投資枠でもどちらでも選べる、ということに今のところはなりそうです。あまりいろいろ考えずに、まずやってみるなら全世界株式のインデックスファンドを一つ買ってみる。月3,000円でも1万円でも、余裕資金の範囲でOKなので、まずは始めてみましょう。その上で、個別株やETF(上場投資信託)など別の商品に興味を持つのか、成長投資枠の方でスポット投資するのか、アレンジしていけばいいと思います。

武田 全世界株式のインデックスファンド、年利でいうとどれくらいの期待リターンでしょうか。

小林 大体4~5%くらいが現実的なところです。

武田 たぱぞうさんは、いかがですか。

たぱぞう 自分自身が投資を始めたときにインデックス投資をして今の資産を築けたかというと築けないんですよね。ここは、永遠の課題です。今新しいNISAが立ち上がり、低信託報酬の良い商品がある。それが答えになりがちですが、じゃあそれだけで自分もFIREして独立できていたのかというとまずできていない。何か自分を変えたい、自分の人生を変えたい、フェーズを変えたいというのであれば、やっぱり勉強をし続けて、プラスアルファの何かを求めるのも同時に大事というのを、申し添えておきたいですね。

武田 たぱぞうさんは、今までの投資をならすと年利どのくらいで増やしたんでしょうか。

たぱぞう はっきりとはわからないです。ただ、確実に言えるのは、私の前の仕事で純粋に所得を貯蓄し続けたとしたら、今と同じ資産を積み上げるのに100年以上かかるんですよ。それを考えると、やっぱり投資って素晴らしいと思いますね。フェーズを変えるには、ある程度エッジを利かした投資が必要なのも事実。奥深いと思います。

武田 テスタさんは、何%増やしたいのか、額で考えるのか、どちらですか。

テスタ 元々投資を始めたときは、株式投資で生活できるようになったらこんな良いことないな、と思って始めました。そこから年間のマイナスが今のところはなく、毎年プラスを積み重ねて9,000万円になったときに初めて1億円を目指しました。そこから、2億、3憶と少しずつ目標を上げています。誰かと比べることはなく、自分自身の過去の年間最高を更新したいという思いです。

投資の楽しみ、ありますか?

テスタ 投資は楽しむことが結構大事だと思うんです。固く難しいイメージが先行するけど、根本にそれを楽しいと思えるか。楽しいから勉強できるし、続けられる。今は本やTwitter、YouTubeなど勉強の方法がたくさんあるので、これだったら続けられるなと思う方法を見つけて楽しみながらやってほしいです。

武田 インデックス投資は、比較的義務的ですよね。その中に楽しみを見つけるのは難しくないですか。

小林 無茶苦茶難しいです。インデックスは基本的に配当も受け取らないし、とにかく毎年お金を出し続けて長期での値上がり益を期待する、苦行とも感じられるものです。僕は米国株で高配当ETFを買ったりもしてるんですが、定期的に分配金をもらって日々の楽しいことに使い、インデックスと両方やるのも個人的にはありなんじゃないかと思います。新NISAではつみたて枠と成長投資枠が併用できるので、どちらも非課税で楽しめる。投資を続けるモチベーションになりますよね。 

たぱぞう 私の場合は、元々決算を見たりお金のことを計算するのが好きだったんです。結果、大学の友達がクルマを買う中で、自分は株を買いました。好きの対象は人それぞれですけど、お金、計算が好きというのが人生を変えるんだなと思いますね。

武田 テスタさんは、稼いだお金を使うことの楽しみもありますか。

テスタ 使う方です。僕、節約は有限だから、するべきではないと思うんですよ。例えば、生活費が月20万円だったらどんなに頑張って節約しても上限は20万円。一方で、利益を増やす方は無限に可能性がある。だから、同じ時間と頭を使うなら節約ではなく増やすことに力を使うべきと思っています。

武田 新NISAのスタートで、資産づくりや投資が一気に普及するタイミングです。今まで投資したことがないという人もたくさんいると思います。メッセージをお願いします。

小林 制度として素晴らしいものになると思うので、少しでも興味がある人は少額でも試してみてほしいです。いろいろ分からないことがでてきたら自分で興味をもって調べて、知識をつけていって、投資を楽しいものにしてもらえたらうれしいと思います。

たぱぞう 投資というのは、自分も家族も周りの人たちも豊かになれる素晴らしいものだと思います。NISAというきっかけがあるので、まだやったことのない人は取り組んでみてもらえたらうれしいです。

テスタ 投資は、難しいようで大きな可能性もあります。今は銀行に預けても金利が低いので、これを政府からのメッセージと思って、チャンスに変えてほしい。リスクを極力とらずに勉強できることはたくさんあります。まずはお金を守ることから勉強し、少しずつお金を入れて、慣れていくこと。楽しみながら資産を増やしてほしいです。

武田 投資のやり方はいろいろありますが、無理をし過ぎないことと、詐欺にだまされないこと、自分の身を守ることが大事だと改めて思いました。その上で、NISAを賢く使って、資産づくりに活用いただけたらと思います。今日は本当にありがとうございました。