私は、米国株も日本株も長期的に良い買い場を迎えていると判断しています。短期的な下値不安は払拭(ふっしょく)できませんが、時間分散しながら投資していくことが長期的な資産形成に寄与すると思います。投資方法として、米国株と日本株両方に積み立て投資をしていくのが良いと思います。

米国株をグロース投資のコアに

 いつもは日本株の投資判断を中心に書いているので、今日は米国株の投資魅力について私の考えをお伝えします。米国株は、グロース(成長株)投資のコア(中核)として投資していくべきと考えています。これには五つの理由があります。

【1】米企業が世界のITインフラを支配
【2】シェール・オイル&ガス革命の恩恵が米国に大きい
【3】移民パワーが、米国の成長力を高めてきた
【4】資本主義、民主主義を重視する国であること
【5】米国には世界中の成長企業が上場している

 それでは以下、一つずつ説明します。

米国株の魅力を高めている五つの要因

 米国株を資産形成のコアとすべきと考える理由は五つあります。

【1】米国の巨大テック企業が世界のITインフラを支配

 GAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック<メタ>・アップル・マイクロソフト)など世界のITインフラを支配する巨大テック企業は、米国に集中しています。今後、世界でAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)による技術革新が加速するに従い、米IT大手の成長が続くと考えられます。

 GAFAMと比較すると、日本のIT大手の業績はさえません。世界標準を取ることができず、狭い日本で過当競争に陥り、収益が悪化している例が増えています。

 中国には、アリババ・テンセント・バイドゥなど、中国市場を支配して巨大化したIT企業があります。ただし、米IT大手のように、世界のインフラを支配する力はありません。中国政府が最近、アリババなどハイテク大手への締め付けを強化していることが不安視されています。

【2】シェール・オイル&ガス革命の恩恵が米国に大きい

 米国はかつて、世界最大の原油輸入国でした。ところが、シェール・オイルの増産が続き、2018年には世界最大の産油国となりました。かつて採掘することができなかったシェール層から大量のシェール・オイル&ガスを産出するようになった効果はとても大きく、米国経済の競争力を高めました。その恩恵が、今も続いています。

【3】移民パワーが、米国の成長力を高めてきた

 トランプ元大統領が「移民拒否」を打ち出し移民が入りにくくなる懸念が一時出ていました。それでも米国が世界でもっとも移民を受け入れてきた国で、これからも移民無しでは成り立たない国であることに変わりはないと思います。「移民に寛容」といわれるバイデン大統領に変わってから、再び移民の流入が増加しています。

 移民は当初、低賃金の労働力として米国経済を支え、一定の貯蓄をつくると有効需要(消費)の拡大に寄与します。また、米国発の巨大ITベンチャーの創業者に移民が多いことからも分かるように、米国経済の発展に移民は多大な貢献をしてきました。

【4】資本主義、民主主義を重視する国であること

 トランプ前大統領が「保護貿易、反グローバリズム」を打ち出したことで、米国が資本主義から遠ざかっていく懸念が一時出ていました。それでも世界中の資本主義国を比較すると、米国が規制が最も少なく自由な競争経済を実現している事実に変わりありません。

 資本主義・民主主義は、株式投資が高いパフォーマンスを実現するために必要な仕組みです。それを守っている米国は、グローバル投資のコアとして外せません。

【5】米国には世界中の成長企業が上場している

 米国に投資するだけで、世界中の成長企業の多くに投資することが可能となります。なぜならば、米国には世界中の成長企業が上場しているからです。例えば、中国のIT大手アリババも、米国で最初に上場して時価総額を大きく伸ばしました。米国上場は、世界中の成長企業が目指してきたことです。米国が世界の金融の中心で、成長企業に潤沢な成長資金を提供できるからです。

NYダウは過去33年日経平均を上回るパフォーマンス

 日経平均株価がバブル相場で最高値(3万8,915円)をつけた1989年12月末から比較すると、日米の株価パフォーマンスには圧倒的に大きな差がついています。

日経平均・NYダウの月次推移比較:1989年末~2023年4月(16日)

出所:1989年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 上のチャートを見ると、NYダウ(ダウ工業株30種平均)がバブルのように見えますが、そうではありません。バブル相場では、利益を無視して夢だけで株価が上昇しますが、NYダウは利益を無視して上昇してきたわけではありません。1株当たり利益の増加を反映して、上昇しただけです。

 株価の割安度をはかる代表的な指標にPER(株価収益率)があります。1株当たり利益の何倍まで株価が買われているか、示します。世界各国の主要株価指数は、だいたいPER10~20倍の範囲で評価されてきました。米国株のPERは、だいたい13~22倍の範囲で推移してきました。現在18~19倍で評価されているので、割高感はありません。

 ただ、よく見ると、NYダウも32年間継続して上昇相場だったわけではありません。株価が大きく上昇したのは、1990~2000年までの10年と、2010~2020年までの10年です。その間の10年(2000~2010年)はほぼ横ばいで上昇していません。2回の暴落(ITバブル崩壊とリーマン・ショック)に見舞われたことが影響しています。

 2010年以降、米国株は利益も株価も継続的に上昇してきました。シェール・オイル&ガス革命、世界のITインフラ支配、移民パワーなどによって、米国企業は利益を拡大させ、それに伴って株価が上昇してきました。

 ここまで聞くと、米国株だけ投資していれば良いのではと思う方がいると思います。私は、米国株と日本株、両方に投資するのが理想的と思っています。日本株には、米国株ほどの成長性はありませんが、割安株としての魅力が高い銘柄が多数あります。

 日本株の特異性は、財務内容が良好で収益力も堅固なのに、株価がPERやPBR(株価純資産倍率)で見て、極めて割安な銘柄が多数あることです。そのような割安株に長期投資していくことも、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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