バフェット氏が来日
米国の著名投資家バフェット氏が11日、来日して日本経済新聞社の単独取材を受けたことが同紙報道によりわかりました。バフェット氏が来日するのは2回目で、2011年に初来日してから12年が経過しています。
バフェット氏は2020年8月、同氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが、1年以上かけて日本の5大商社株(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)をそれぞれ発行済み株式数の5%超まで買ったと発表しました。バフェット氏は当時声明で、「日本の未来と、五つの商社の未来に参画することを楽しみにしている」と述べました。
あれから2年半たちました。5大商社の株価はバフェットが投資を発表してから、以下の通りいずれも大幅に上昇しています。
バフェットが投資を公表してからの5大商社の株価上昇率
コード | 銘柄名 | 2023年 4月11日 株価:円 |
2020年 8月28日 からの 株価上昇率 |
---|---|---|---|
8001 | 伊藤忠 | 4,247.0 | + 63% |
8002 | 丸 紅 | 1,849.0 | + 217% |
8031 | 三井物産 | 4,058.0 | + 128% |
8053 | 住友商事 | 2,380.0 | + 89% |
8058 | 三菱商事 | 4,853.0 | + 108% |
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成 |
株価は大きく上昇しましたが、バフェット氏はその間、5大商社株をさらに買い増していたことが、2022年11月21日に提出された「変更報告書」から判明しました。5社ともそろって発行済み株式数の6%超まで買い進めました。11日のインタビューで、保有比率をさらに7%超にあげたと語ったと報道されています。
バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイによる5大商社株の保有比率:2022年11月20日時点
コード | 銘柄名 | 保有 比率 |
前回報告 からの 増加分 |
---|---|---|---|
8001 | 伊藤忠 | 6.21% | +1.19% |
8002 | 丸 紅 | 6.75% | +1.69% |
8031 | 三井物産 | 6.62% | +1.59% |
8053 | 住友商事 | 6.57% | +1.53% |
8058 | 三菱商事 | 6.59% | +1.55% |
出所:2022年11月21日に提出の「変更報告書」 |
バフェット氏は11日のインタビューで、総合商社5社に投資した理由として、「バークシャーと非常に似ている」「世界の事情に精通」と話したと報道されています。
バフェット氏の投資姿勢として、「自分が理解できないものには投資しない」を貫いています。ハイテク株やIT株に積極的には投資せず、コカ・コーラやアメリカン・エキスプレスのような分かりやすい安定成長株を重視して投資してきました。
したがって、米国株の上昇をけん引してきたGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック(メタ)・アップル)などのハイテク株では、アップル以外には積極的に投資してきませんでした。
そのバフェットが積極投資したのが、日本の5大商社でした。日本の総合商社は、ビジネス構造が複雑すぎて「わかりにくい」と言われますが、バフェット氏にとっては「わかりやすかった」ことになります。
「成長が期待でき、割安な価格で投資できる世界中のあらゆるビジネスに積極投資するが、失敗したと思ったらすぐに撤退する」、そういうところが、日本の総合商社とバークシャーのビジネスモデルの共通点と考えられます。
私もこの5社について、2017年以降「買い」推奨を続けています。私は、過去25年のファンドマネージャー時代から、総合商社を高く評価してきました。その理由は、バフェット氏とほぼ同じです。
成長性があること、事業ポートフォリオのリスク管理がすぐれていること、株価がPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)・配当利回りなどから見て割安であること、が評価のポイントです。
日本株投資でも、心に留めておいていただきたいバフェットの言葉
バフェット氏の、若い頃の言葉を紹介する著作「Warren Buffett’s Ground Rules(ウォーレン・バフェットのグラウンド・ルール)」(Jeremy C. Miller著)を原書で読みました。私が、25年のファンドマネージャー時代にやってきたバリュー運用に通じる極意が、若きバフェットによって熱く語られており、感動しました。
私が強く共感した言葉を、二つ紹介します(日本語訳は窪田)。
(1)「企業の本源的価値がわかっていれば、それを生かして有利にトレードできる。株価が、本源的価値と比較して、ばかばかしい程、安い水準まで売られた時に買うことで、利益が得られる。」
(2)「最近、新時代の投資哲学を語る人が増えた。その哲学によると、木々が空まで伸びるように上昇し続ける株が出るという。そんな哲学に乗って割高株を高値づかみする位なら、過度に保守的といわれてペナルティを課せられた方がましだ。」
ファンドマネージャー時代に、バリューを重視して運用してきた私は、そうだそうだと納得です。ところで、今の日本株で、本源的価値を割り込んでいる株はあるでしょうか? たくさんあると思っています。
バフェット氏は、これからも日本株をさらに買い増しする可能性を示唆しています。実際に買うか否か、わかりませんが、バフェット氏の投資基準に合う銘柄を買っていくことは十分にあり得ると思います。
私が選ぶ「もしバフェ」候補5銘柄「もしバフェ5銘柄」
私が考える「もしバフェ銘柄」は、以下5銘柄です。「もしバフェ」とは、「もしバフェットが日本株ファンドマネージャーだったら買うと考える銘柄」という意味です。私が、バフェット氏の投資スタイルおよび過去の投資実績を見ながら、考えて選んだものです。
<もしバフェ5選:2023年4月11日時点>
コード | 銘柄名 | 株価 :円 |
配当 利回リ |
PER :倍 |
PBR :倍 |
1株 当たり 配当金 :円 |
---|---|---|---|---|---|---|
1605 | INPEX | 1,466 | 4.4% | 7.1 | 0.5 | 64 |
5020 | ENEOS HD | 471.2 | 4.7% | 10.1 | 0.5 | 22 |
6758 | ソニーグループ | 11,850 | 0.6% | 16.8 | 2.1 | 75 |
8306 | 三菱UFJ FG | 853.1 | 3.8% | 10.3 | 0.6 | 32 |
9433 | KDDI | 4,030 | 3.3% | 12.8 | 1.7 | 135 |
出所:各社決算資料より作成。株価・配当利回りは4月11日時点。配当利回りは、1株当たり年間配当金(今期会社予想)を株価で割って算出。PERは株価を1株当たり利益(今期会社予想)で割って算出。今期とは、INPEXは2023年12月期、その他は2023年3月期のこと |
上記5銘柄は、バフェットの投資基準になるべく合うと考えるものを、筆者が選別したものです。選んだ理由については、以下「著者おすすめのバックナンバー」に書いてあります。ご参照ください。
▼著者おすすめのバックナンバー
2023年2月8日:もしバフェ5選:もしバフェットが日本株ファンドマネージャーだったら買うと考える5銘柄
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