景気の「冬」でも業績予想上向き、日経平均2万7,500円前後

 日経平均株価(225種)は2万7,500円を中心に上がったり下がったりを繰り返していて、この状態が1年以上続いています。

 2月9日掲載の「日経平均に売りシグナル再点灯!企業業績悪化の深まりに要警戒」において、最も警戒をしないといけない2回目の企業業績の悪化シグナルが出たので、日経平均は「良くて横ばい、企業業績悪化の度合いが深まれば大きく下がることもある要警戒の時期」とお伝えしました。その後、企業業績見通しがどうなっているのかについて、今回、ご報告したいと思います。

 まずは、約3年半でサイクルする中期視点での景気循環において、今、どの位置にあるのか見ていきましょう。

(図1)景気循環に伴う株価のイメージ

出所:マネーブレインが作成

 景気循環において、それぞれの局面を「春」「夏」「秋」「冬」という季節になぞらえていて、昨年11月4日に1回目の企業業績悪化のシグナル[独自分析による日経平均の予想EPS(1株当たり利益)4週前比のマイナス転換]が出たことにより、現在は「冬(前半)」に位置しています。

 この「冬(前半)」において、過去、日経平均がどのような動きをしてきたのか、日経平均と景気循環の関係を確認していきましょう。

(グラフ1)日経平均株価と企業業績、景気循環の関係

*グレーは「冬」の時期。そのうち、薄いグレーは「冬(前半)」の局面。
出所:日経平均株価は日本経済新聞社の公表データを基に作成。予想EPSはIFIS提供データを基にマネーブレインが独自分析し作成。景気循環についてはマネーブレインが独自分析し作成

 上のグラフ1では、薄いグレーの「冬(前半)」に当たる2015~2016年と、2018~2019年の日経平均(緑線)はともに大きく下がっています。このことから、「冬(前半)」は、他の時期と比べて警戒しないといけない時期といえます。

 2015~2016年、2018~2019年について、それぞれ企業業績との関係も含めて詳しく分析してみましょう。

(グラフ2)日経平均株価と予想EPSの前年比増減率(2015年7月~2016年7月)

出所:日経平均株価は日本経済新聞社の公表データを基に作成。予想EPSはIFIS提供データを基にマネーブレインが独自分析し作成

(グラフ3)日経平均株価と予想EPSの前年比増減率(2018年7月~2019年7月)

出所:日経平均株価は日本経済新聞社の公表データを基に作成。予想EPSはIFIS提供データを基にマネーブレインが独自分析し作成

 グラフ2、グラフ3ともに、企業業績が悪化(予想EPS 4週前比(青線)がマイナス転換)した後、いったん持ち直しますが、再度悪化しています。予想EPS 4週前比はマイナス2%程度にまで下落し、その動きに沿う形で日経平均も2段下げをしています。

大幅下落に引き続き警戒!金融不安、業績見通し反映これから

 では、現在はどうなっているのでしょうか?

(グラフ4)日経平均株価と予想EPSの前年比増減率(2022年7月~)

出所:日経平均株価は日本経済新聞社の公表データを基に作成。予想EPSはIFIS提供データを基にマネーブレインが独自分析し作成

 今回においては、昨年11月4日に企業業績悪化のシグナルが出た後、いったん持ち直し、今年1月27日に再度悪化のシグナルが出ましたが、予想EPS 4週前比の値は悪化が深まることなく、逆にプラスに戻る形となっています。

 このように、今回は2015~2016年、2018~2019年とは違って、企業業績の見通しは悪化するどころか、また伸びてきているので、日経平均が2万7,500円前後に保たれているともいえます。

 では、これで安心かというと、中期視点での景気循環においては現在、「冬(前半)」に位置しているので、やはり安心できるとはいえないと考えています。

 3月9日あたりから金融不安が広がり始めていますが、それがアナリスト見通しに本格的に反映されてくるのはこれからとみられます。極端な例ですが、過去において、金融不安が大きくなり、2008年9月のリーマン・ショックに至ったのもこの「冬(前半)」でした。

 2月23日掲載の「日経平均、本格上昇は早くて年末からか!在庫循環から読み解く」で述べたように、現時点では、「冬(後半)」になるのは今年10月下旬か来年1月下旬あたりとみています。それまでの「冬(前半)」は、やはり警戒が必要な時期と考えています。

 このため、引き続き、「日経平均は良くて横ばい、企業業績悪化の度合いが深まれば大きく下がることもある要警戒の時期」と私自身はみています。

 投資はあくまでも自己責任で。