FRB0.25%利上げ決定、パウエル議長会見はタカ派トーン

 米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は22日(日本時間23日午前3時)、0.25%の利上げを発表しました。主要政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を4.50~4.75%(中心4.625%)から4.75~5.00%(中心4.875%)に引き上げました。前回(2月1日)と同じ引き上げ幅(0.25%)で、利上げを継続しました。

米10年・2年金利とFF金利の日次推移:2021年1月4日~2023年3月22日

出所:QUICK・ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 事前の市場予想では、「0.25%の利上げ」だけでなく「利上げ停止」の見方もあり、二つに割れていました。後者は急激な金利上昇が原因で米地方銀行のシリコンバレー銀行が破綻し、さらに地方銀行全体に信用不安が広がっている事態をFRBが考慮して、利上げをいったん停止して状況の見極めを図るとの見立てでした。

 しかし、実際は利上げを停止せずに0.25%の引き上げを決めたことから、ややタカ派寄りの決定と言えます。

 利上げ後のパウエルFRB議長の記者会見は、インフレ抑制を優先するタカ派トーンでした。利上げ決定後もプラス圏で推移していたニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、パウエル議長のタカ派トーンを受けて下落し、22日は3営業日ぶりに反落し、前日比530ドル安の3万2,030ドルで取引を終えました。

「インフレは高水準」と物価高への警戒感を強調し、「年内の利下げを見込むFOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーはいない」として、年内利下げまで期待していた金融市場に水を差しました。同時に発表されたFOMCメンバーによる2023年末のFF金利予測(中央値)は5.1%でした。あと1回、利上げが見込まれています。

 パウエル議長は銀行不安についてもコメントしました。「放置すると金融システムに重大な影響が及ぶ」との認識を示したものの、「そのために断固とした措置は取った」とし、「銀行システムは健全で回復力がある」と、危機が拡大する懸念は小さいとの認識を示しました。

「銀行の規制を強化する必要がある」とし、規制が不十分だったことが危機を招いた原因だと考えていることが分かりました。銀行システムは健全で、利上げを停止する必要はないと判断したと思われます。

 確かに、シリコンバレー銀行の破綻は、同銀行の稚拙なALM(資産・負債のリスク管理)によるもので、それは同銀行に特有の問題です。

 ただ、地銀全般に信用不安が広がっている背景には、信用不安と金利上昇で資金供給が滞ったために、米国のオフィス市況が下落してきている影響もあります。さらなる利上げが、不動産市況のさらなる崩落を招き、米銀全般に不良債権が拡大する原因とならないか、慎重に見守る必要があります。

長短金利の逆転幅が拡大

 0.25%の利上げ実施により、長短金利(10年金利とFF金利)の逆転幅【注】はさらに拡大しました。

【注】長期金利は、短期金利より高いのが「普通の状態」です。ただしFRBが利上げ(短期金利の引き上げ)を続けると、短期金利が長期金利よりも高くなる「長短金利逆転」が起こることがあります。そうなると、金融引き締めによって米景気にブレーキがかかることになります。

米FF金利、長期金利、NYダウ月次推移:2004年1月~2023年3月(22日)

出所:QUICK、ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 米国景気には、長短金利が逆転してから半年~1年くらい後にリセッション(景気後退期)入りするという経験則があります。ただし、それはあくまでも経験則で、必ずそうなるわけではありません。今回、米景気は減速してきているものの雇用などは強いままで、これまでの経験則が当てはまらないという見方も根強くあります。

 それにしても長短金利逆転幅が開いてきたにもかかわらず、FRBがいつまでも利上げを続けるならば、米景気リセッション入りのリスクが高まります。今後いつ、FRBから「利上げ停止」についてのメッセージが明確に出てくるかが、今後のポイントです。

日本株・米国株は良い買い場、少しずつ買い増す方針継続

 日本株・米国株への投資方針は、毎週述べていることと変わりません。日本株・米国株とも、長期的に良い買い場を迎えていると考えています。ただし、短期的なショック安はまだ終わっていない可能性もあるので、リスク管理が大切です。時間分散しながら日本株・米国株への投資を少しずつ増やしていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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