FOMC結果発表へ

 3月22日(日本時間では23日午前3時)、FRB(米連邦準備制度理事会)が、FOMC(米連邦公開市場委員会)結果を発表します。【1】0.25%の利上げ実施、または【2】利上げ見送り、のどちらかと考えられます。利上げ停止ならば好感されますが、0.25%の利上げ実施ならば金融不安がさらに深まる不安が残るでしょう。

 発表後の記者会見でパウエルFRB議長がどういうメッセージを出すかも重要です。早期の利上げ停止、年後半に利下げも織り込む金融市場にショックを与えるのか否か、今晩の発表が注目されます。

「豹変」を繰り返してきたパウエルFRB議長

 利上げ停止ならばパウエルFRB議長の「豹変(ひょうへん)」となります。3月7日の議会証言で「必要ならば利上げ幅拡大もあり得る」と発言したばかりだからです。その時点では利上げ幅を0.5%に拡大することを考えていたようです。最近のパウエル発言はタカ派色が強く、インフレ退治のために拳を振り上げた状態です。

 ただ、振り返ってみると、パウエルFRB議長は就任以来「豹変」を繰り返してきました。就任直後の2018年はタカ派色を前面に出して、利上げ停止を求めるトランプ元大統領と対決しつつ4回利上げを実施しました。

 2019年になってからは、世界景気減速が鮮明になると「豹変」して急激な利下げに転じました。2020年にコロナショックが起こると、量的緩和の大盤ぶるまいを実施して、強烈にハト派色を出しました。2021年にインフレが深刻になっても「インフレは一時的」と主張してハト派議長を続けました。

 2022年にインフレが深刻になると再び「豹変」して強硬タカ派に転じました。そして、今もタカ派色を強く出しています。

 私はパウエル議長がいずれまた「豹変」してハト派になることもあり得ると思っています。ただし、いつそうなるか全くわかりません。22日FOMCでは、0.25%の利上げを強行する可能性もあります。FOMC結果とパウエル議長の会見の内容次第で、金融市場に波乱が起こる可能性もあり、目が離せません。

 米利上げに関するコメントは以上です。ここから先は、日経平均先物の見方について解説します。

結論:これだけ覚えておいてください

 ここから先の内容は、中・上級向けです。日経平均先物についてあまり詳しくない方は、以下の結論だけお読みください。

<結論>

◆3月29日までの日経平均先物(6月限)は、日経平均より約270円低い水準で推移する

 先物が270円低くても、それは先安感を表すものではなく、理論値通りに値がついているだけです。例えば、「前日のシカゴ(CME)日経平均先物の終値が2万7,000円」だったとすると、新しい相場変動要因がその後何も出なければ、「今日の日経平均は2万7,270円くらいでスタートする」と考えることができます。

◆3月30日以降、日経平均先物(6月限)は、日経平均とほぼ同値で推移するようになる

「前日のシカゴ日経平均先物の終値が2万7,000円」だったとすると、新しい相場変動要因がその後何も出なければ、「今日の日経平均は2万7,000円くらいでスタートする」と考えることができます。

 今日は、先物の値動きが上記のようになる理由を解説します。「なぜ、そうなる?」まで、きちんと勉強したい方は、以下をお読みください。

日経平均先物の夜間取引は、翌日の日経平均を先取りすることもある

 朝、東京証券取引所が開く前に、「シカゴ日経平均先物が(前日の日経平均終値と比べて)大幅安」というニュースを聞くと、ヒヤリとします。その日の日経平均が大幅に下がって始まることが多いからです。

 逆に、「シカゴ日経平均先物が大幅高」と聞くと、期待が高まります。その日の日経平均が大幅に上昇して始まることが多いからです。

 通常、日経平均先物(期近)の理論値は、日経平均とほぼ同値です。したがって、「CME日経平均先物が、(前日の日経平均終値より)270円安い」と聞くと、「今日の日経平均は270円くらい下がって始まる可能性がある」と解釈する人が増えます。普通は、その解釈でOKです。

 例外として、3月10日(3月のSQ)から3月29日(3月の権利つき最終売買日)の間に日経平均先物(6月限)を見る場合だけ、見方が異なります。「約270円下でCME日経平均先物(6月限)の値がついていれば、当日の日経平均は上がりも下がりもしないで始まる可能性が高い」と解釈されます。

3月17日の日経平均先物(6月限)は、日経平均より約270円低い水準で推移

 百聞は一見にしかず。それでは、実際に3月17日の日経平均先物(6月限)の値動きを、日経平均と一緒にご覧ください。

日経平均と日経平均先物(6月限)の日中足:2023年3月17日9:00~15:00

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ご覧いただくとわかる通り、株式現物と日経平均先物の売買が両方ともできる時間帯(9時~11時30分、12時30分~15時)、日経平均先物(6月限)は日経平均よりも常に約270円低い値がついています。

 これを見て、「日経平均先物(6月限)に日経平均の先安感が表れている」という誤った解釈をしないようにしてください。先物(6月限)は、理論値通りに値がついているだけです。

 3月の配当金の権利つき最終売買日である3月29日まで、この状況が続きます。ただし、配当金の権利落ち日である3月30日以降は、日経平均先物(6月限)は、日経平均とほぼ同値で推移するようになります。

これだけ覚えてください!二つのポイント

 少し難しくて、わかりにくい話になっているかもしれません。すみません。とにかく、以下二つのポイントだけ頭に入れていただければ、後半の説明はやや難解ですが、わからなくても問題ありません。

<ポイント1>

 日経平均先物6月限の理論値は、3月29日までは、日経平均の値を約270円下回る。その間、先物が日経平均より270円低い水準にあっても、それは、先安感を表しているのではない。理論値通りに値がついているだけである。

<ポイント2>

 日経平均先物6月限の理論値は、3月30日以降は、日経平均とほぼ同値となる。3月30日以降は、先物と日経平均は、ほぼ同じ価格で取引されることになる。

3月決算の配当金の権利落ち(予想額)は270円

 3月29日まで、日経平均先物(6月限)は、日経平均よりも約270円価値が低いわけです。その理由は、3月決算での配当金にあります。

 日経平均(現物)を保有していると、3月決算の配当金の権利落ち日(今年は3月30日)に、配当金を受け取る権利が確定します。ところが、日経平均先物(6月限)を買い建てしていても、3月配当金を受け取る権利は得られません。

 3月末基準の配当金は、約270円と予想されています。したがって、日経平均先物(6月限)は、日経平均(現物)よりも、270円低い値段が付くのです。

 ところが、3月30日以降は、日経平均と先物(6月限)は、ほぼ同値で売買されることになります。3月29日までに日経平均(現物)を買えば、3月末基準の配当金が得られますが、権利落ち日の3月30日以降に買っても、配当金は得られないからです。先物を持っていても、現物を持っていても、3月末基準の配当が得られないのは、同じです。

 したがって、3月30日から6月8日(先物6月限の最終売買日)まで、日経平均先物(6月限)を保有しても、日経平均を保有しても、どちらも3月配当金が得られないという点で、同じです。したがって、3月30日以降は、両者はほぼ同値で推移することになります。

<参考>日経平均先物(6月限)の理論値の計算方法

 詳しい説明は割愛します。概算値を出す計算式を掲載します。

(日経平均先物6月限理論値)=(日経平均の値)-(6月8日まで日経平均現物を保有することで得られる配当金予想額)+(日経平均現物を購入するのに必要な現金を6月8日まで短期金融市場で運用した時に得られる利息)

 現在、短期金利はほぼゼロなので、金利要因は無視して大丈夫です。配当落ちは、3月が特に大きいですが、9月や12月にもあります。

 東京市場の取引時間中は、日経平均先物が理論値から大きくかい離することはありません。かい離すれば、裁定取引が入り、先物は常に理論値の近くに維持されます。

 ただし、東京市場の現物取引時間が終了すると(15時以降)、日経平均先物は理論値からかい離して動くようになります。裁定取引が入らないので、大引け後のニュースに反応して、日経平均の理論値から離れて動くわけです。

 今日の説明は、わかりにくくてすみません。途中に掲載した「これだけ覚えてください!二つのポイント」だけ、頭に入れていただければOKです。

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