先週の日経平均は2万7,453円で終了

 先週末2月24日(金)の日経平均株価は2万7,453円で取引を終えました。

 週足ベースで2週連続の下落となりましたが、前週末終値(2万7,513円)からは約60円安と小幅にとどまり、結果的に株価水準があまり変わらなかった格好です。ただ、先週の日経平均の値動きを振り返ると、心理的にかなり揺れ動いていた様子がうかがえます。

図1 日経平均(日足)とMACDの動き (2023年2月24日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日本株市場は、2月23日(木)が祝日のため4営業日でしたが、あらためて、先週の日経平均の値動きを上の図1で追っていくと、週初からの2営業日である2月20日(月)と2月21日(火)は、前週からの流れを引き継ぎ、2万7,500円水準での小動きが続いていました。

 こうした状況に変化が訪れたのは、祝日の2月23日(木)をはさんだ、2月22日(水)と2月24日(金)の取引です。

 2月22日(水)の日経平均は大きく下落し、いわゆる「窓」空け で2万7,500円水準を下放れしたほか、3本の移動平均線(25日・75日・200日)も下抜ける動きとなりました。

 通常であれば、このまま株価下落が加速してもおかしくはなかったのですが、祝日明けの2月24日(金)に、3本の移動平均線を上抜ける大きな陽線が出現したことによって、ネガティブなサインはひとまず否定された格好です。

 また、週足ベースで下落したものの、2万7,500円の株価水準は維持できたといっていいですし、複数の移動平均線をまたぐローソク足の出現は、抜けた方向への強いサインとされています。

 とはいえ、先週の株価下落局面で、移動平均線がサポートとして機能しなかったことや、週末24日(金)の買い戻しが入った局面でも2万7,500円台に乗せる場面がなかったこと、下段のMACDも下向きが続いていることを踏まえると、チャートの見た目以上に、相場のムードが悪くなっている可能性があります。

 目先の日経平均のレンジについては、前回のレポートでも紹介した、移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドで探っていきます。

 前回は25日移動平均線で見ていきましたが、先週の日経平均は「窓」明け  で、25日移動平均線をまたいで下落してしまったため、今回は75日移動平均線で確認します。

図2 日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2023年2月24日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末2月24日(金)時点の75日移動平均線の値は2万7,300円、乖離率はプラス0.56%です。これらの値を元に日経平均の目安を計算すると、上の図2のようになります。目安の値は日々変化していきますが、プラスマイナス1σ(シグマ)のレンジは2万7,820円から2万6,532円、プラスマイナス2σのレンジは2万8,464円から2万5,888円あたりになります。

TOPIXの値動きをチェック

 続いてTOPIX(東証株価指数)についてもチェックしていきます。

図3 TOPIX(日足)とMACDの動き (2023年2月24日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末、2月24日(金)のTOPIX終値は1,988pでした。前週末2月17日(金)の終値(1,991p)からは小幅安と、週末の終値比較ではほぼ横ばいです。また、値動きの展開についても、上の図3を見てもわかるように、先ほどの日経平均と同様に、祝日を挟んで動意づく格好となりました。

 TOPIXについては、前回のレポートで「上昇ウェッジ」に注目していました。上昇ウェッジは下値が大きく切り上がっているため、一見すると強いサインにも見えるのですが、実は株価が失速することが多いパターンとされています。

 実際に、先週のTOPIXはこの上昇ウェッジを下抜けてしまいました。このまま下落に勢いがつきそうな状況だったのですが、25日移動平均線がサポートとして機能し、今のところは踏みとどまっているように見えます。

 このように、足元のチャートで日経平均とTOPIXの状況を捉えると、強弱の材料が混在し、全体としての方向感が読みづらくなっています。

 その一方で、下向きの意識を強めているように見えるのが米国株市場です。

先週のNYダウ、ナスダックをチェック

図4 NYダウ(日足)とMACDの動き(2023年2月24日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末2月24日(金)のダウ工業株30種平均(NYダウ)終値は3万2,816ドルでした。前週末2月17日(金)終値(3万3,826ドル)からは1,000ドルを超える下げ幅となり、株価水準を一段階切り下げています。

 最近までのNYダウは、上値は3万4,000ドルの節目、下値は50日移動平均線がサポートとして機能していたのですが、先週の値動きでこれが崩れてしまったほか、下段のMACDも「0ドル」ラインを下抜けてしまった格好です。

 目先の焦点として、200日移動平均線あたりで下げ止まれるか、もしくは、昨年10月安値と11月高値を起点とするギャン・アングルの「4×1」ラインを維持できるかが注目されます。

図5 ナスダック(日足)とMACDの動き(2023年2月24日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ナスダック総合指数(ナスダック)も前週から下落しましたが、こちらは25日移動平均線と200日移動平均線に挟まれた範囲内での推移となり、積極的に下値をトライする動きにはなっていません。

 とはいえ、直近の株価の上値は、昨年8月高値と10月安値を起点とする下向きのギャン・アングルの「8×1」ラインに抑えられ、微妙に「ダブル・トップ」を形成しているようにも見え、上の図5にはネックラインとして想定される水平ラインを描いてみました。

 一般的に、ダブル・トップを形成後にネックラインを下抜けると、株価が下落しやすいとされていますが、足元の株価はネックラインを下抜けた後に、戻りをトライしつつも抜けきれない状況となっています。さらに、このネックラインは先週の上値を抑えた25日移動平均線とも重なっています。

 仮に、このままネックラインを抜けきれなかった場合、「リターン・ムーブ」と呼ばれる格好で下げが加速する展開もあり得るため、シナリオの選択肢として残しておく必要がありそうです。その場合、50日移動平均線や、ギャン・アングルの「4×1」ラインなどが下値の目安になります。

 前回のレポートでも述べたように、現在の相場環境は、「インフレ&景況感のスピード感と、金融政策への思惑」という市場の論点自体に変化がない中、最近までの株高の前提(そこそこの景気後退とインフレ鈍化による、早期の米金融政策の利下げ転換期待)に揺らぎが生じ、新たな相場シナリオを再構築している局面にあると思われます。

大きく動くなら「ブラックアウト期間」後

 先週の米国株市場では、大手小売業のウォルマート(WMT)や、半導体企業のエヌビディア(NVDA)などの企業決算、1月個人消費支出(PCE)などの経済指標が注目材料となっていました。

 とりわけ、PCEの物価指数(コア)が前年比でプラス4.7%という結果となり、前回(プラス4.6%)から加速したほか、予想(プラス4.4%)よりも強かったことで、インフレの鈍化ペースが緩慢であることが確認され、週末の米国株安につながりました。

 米国では今週も、2月分のISM(米サプライマネジメント協会)景況感指数(製造業&サービス業)などの経済指標が公表されるほか、ターゲット(TGT)ロウズ・カンパニーズ(LOW)といった米小売業の決算などが予定されています。

 ただし、より注目度が高いとされる、2月雇用統計が3月10日(金)、2月CPI(消費者物価指数)は3月14日(火)、2月小売売上高は3月15日(水)といった具合に、これらの公表が来週以降となっているため、今週はイベントに向けた調整というのがメインシナリオになりそうです。

 ちなみに、次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)は3月21日(火:日本は祝日)~22日(水)にかけて開催されますが、開催される2週間前の土曜日から「ブラックアウト期間」に入ります。

 ブラックアウト期間とは、金融政策決定会議に参加するメンバーが発言を控える期間なのですが、昨年あたりから、このブラックアウト期間中にメディアを通じた観測リーク記事が報じられて、FOMCが開催される前に株式市場が大きく反応することが増えています。

 そのため、株価が「次の展開」を迎えるのは来週末以降になるかもしれません。