日本銀行が事実上の利上げを決定したことについて、1990年代に政府の為替政策や金融自由化を取り仕切り、「ミスター円」と呼ばれた元大蔵省(現財務省)財務官の榊原英資さんがトウシル編集チームのインタビューに応じた。
榊原氏は、日米の金融政策の違いで今年進んだ円安から反転し、2023年は夏から年末に1ドル=120円台程度まで円高が進むとの見方を示した。インタビューの詳細は後日、公開します( 「日銀緩和修正で1ドル120円へ、強い円は国益。『ミスター円』榊原英資氏」 を1月13日に公開しました)。
日銀の金融緩和政策の修正は、市場では来年4月に任期満了を迎える黒田東彦総裁の退任後とする見方が強かった。榊原氏は「いずれ金融政策を修正すると思っていたが、若干早かった。日銀は日本経済が過熱する可能性が高いと読んで、早い時点で決断した」と分析。
日米欧の先進国などが加盟するOECD(経済協力開発機構)が11月に発表した世界経済見通しでは、日本の2023年の経済成長率は1.8%で、米国(0.5%)やユーロ圏(0.5%)に比べて高い予測になっている。
今年10月に1ドル=151円台後半まで進んだ円安については、「米国が金融引き締めをしている一方で、日本が金融緩和している状況が続いたからだった」と説明する。
米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が12月13、14日に開いたFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げペースを鈍化させたこともあり、「円安から円高に為替が転じる。来年夏から年末にかけて緩やかに1ドル=120円くらいに近づく」と見通した。
一方、榊原氏は円高が進むことについては「強い円はむしろ日本企業にとってプラスになる」と強調した。日本企業の生産拠点の海外移転が進んだことを挙げ、「かつては円安が輸出を促進するからプラスといわれてきたが、今はそういう状況ではない」と指摘した。(聞き手はトウシル編集チーム 田嶋啓人)
榊原英資(さかきばら・えいすけ)氏 1941年生まれ。1965年に大蔵省(現財務省)入省。国際金融局長などを経て、1997~1999年に財務官。退官後は、慶大、早大教授などを歴任。現在はインド経済研究所理事長。日銀総裁の黒田氏は大蔵省の後輩で、国際金融局長や財務官の後任に当たる。
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