新NISA概要固まる

 2024年1月から始まる「新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」の概要が決まりました。非課税で投資できる枠が大幅に拡大され、非課税投資期間は「無期限」となりました。

 主な変更点は、以下の通りです。

【1】 年間の非課税投資額上限が360万円に

 2024年に始まる新NISAでは、毎年つみたてNISAに120万円、成長投資に240万円、合わせて360万円まで非課税で投資することができるようになります。非課税投資期間は「無期限」です。売却しない限り、非課税投資が続きます。
 これに対し、2023年まで続く現行制度では毎年、NISAか、つみたてNISAのどちらか一つしか選べません。NISAでは年間120万円まで非課税投資ができます(非課税投資期間5年)。つみたてNISAでは年間40万円まで非課税投資ができます(非課税投資期間20年)。

【2】 生涯投資額上限は1,800万円(簿価ベース)

 2024年に始まる新NISAでは、生涯投資枠の上限が1,800万円と決まりました。簿価ベース【注】で1,800万円です。仮に年間の投資額上限180万円ずつ投資していって一切売却しないと、10年で生涯投資額上限に達します(180万円×10年間=1,800万円)。年間40万円ずつの投資ならば、45年で上限に達します(40万円×45年間=1,800万円)。
 新NISAで買い付けした有価証券を売却しても、生涯上限1,800万円の枠は変わりません。売却した分(簿価ベース)、非課税投資の生涯投資枠は復活することになります。

【注】簿価ベースで1,800万円
 時価ベースではなく、簿価ベースです。つまり、新NISAで100万円で買い付けた株式が150万円に値上がりしたとしても、簿価ベースなので100万円の保有として扱われます。

 制度の詳細についてはトウシル編集チームで作成した以下のリポートを参照してください。
新NISA、プロと投資家はどうみる?改正まとめ:恒久化、年360万円へ 

 また、新NISAの活用方法については、楽天証券経済研究所のファンドアナリスト篠田が執筆した以下のリポートもぜひご参照ください。
新NISAで、何を買う?新制度の上手な活用法

生涯上限額1,800万円は老後の備えに最大限活用を!

 新NISAで、非課税投資上限額が大幅に拡大するのは、なぜでしょう? 老後資金を賄うのに公的年金だけでは足りない人が増える見通しに基づき、公的年金以外の自助努力による資産形成を促すためと考えられます。

 そこで思い起こされるのが、2019年に話題になった「老後2,000万円問題」です。2019年6月に金融庁のワーキング・グループが提出した報告書【注1】に記載されていた内容から注目された問題です。

【注1】金融ワーキング・グループがまとめた2019年6月3日付「高齢社会における資産形成・管理」と題した報告書。老後資金として、公的年金以外に2,000万円必要との試算が出ていて、話題になった。

 国民に不安を与えるという理由と考えられますが、財務大臣がこのリポートの受け取りを一時拒否したためにかえって有名になり、日本中で繰り返し読まれました。

 このリポートでは、一定の前提の元に「老後資金として公的年金以外で2,000万円が必要になる」という試算が載せられています。「2,000万円」という金額が独り歩きしたので、「老後2,000万円問題」といわれました。

 2,000万円という金額の独り歩きは困ったことでした。というのは、2,000万円は、一定の前提の下で試算された平均値だからです。人によって必要額は異なる【注2】のに、あたかも全ての人が2,000万円必要と誤解を与えたことは問題でした。

【注2】持ち家か借家か、どこに居住するか(都市部は生活費が高い)など、ライフスタイルの違いによって必要額は大きく異なります。

 このリポートが引き起こした「老後2,000万円問題」で、2,000万円が独り歩きしたのは良くありませんでしたが、自助努力の必要性を明らかにしたことは有意義だったと思います。

 といっても、「資産形成は一日にして成らず」。老後不安につけこむ悪質なセールスに引っかからないよう、注意が必要です。高い手数料を取られ、ハイリスク投資に大金を投じ、大きな損失をこうむることのないようにしましょう。

 資産形成の王道は、長期にコツコツと積み立て投資をしていくことです。適切にリスクを管理した上で投資信託や株式などに投資していくことで、長期的に資産形成していくのが良いと思います。その際、NISAに加え、公的年金に上乗せできるiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)など、利用可能な非課税貯蓄制度は、最大限使うべきです。

 ちなみに、新NISAは再来年の2024年1月からです。来年(2023年)はまだ、現行のNISAが続きます。とりあえず、来年までは現行NISAをしっかり使いこなしましょう。

【2024年からの新NISA制度について、詳しい説明はこちら