本連載でもたびたび取り上げてきた岸田政権の「資産所得倍増プラン」について、柱の一つである「新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」の概要がついに固まりました。制度の詳細については、こちらの記事で解説していますのでご参照ください。
本連載、「投資信託のツボ」では、投資信託を含む商品の面から「新NISA」を掘り下げ、筆者が考える新制度の上手な活用方法を解説します。
非課税枠1,800万円の「再利用」で利便性が向上
現行のNISA制度では、「一般」と「つみたて」の併用はできず、いずれかを選択しなければなりませんが、2024年から開始される新NISAは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の二つで構成され、実質的に両者の併用が可能になります。
これにより、最大利用可能額も合計1,800万円と大幅に増えるのですが、それよりも大きな改良点は、非課税投資枠の「再利用」ができるようになることです。
現行制度では、保有商品を売却することによって空いた投資枠が復活することはなく、再利用はできませんが、新制度ではこれが可能になります。つまり、まとまったお金が必要になったタイミングで引き出すことも含め、ライフイベントに応じて柔軟な対応が可能になります。
現行のつみたてNISAは、年間の投資可能枠が比較的小さく、枠の再利用もできないため、どなたでも「とりあえず積み立てておけばOK」というスタンスでおおむね問題ありませんでしたが、新NISAでは、後述する「成長投資枠」をどう使うかのプランニングも重要になるでしょう。
ポイントは「成長投資枠」の使い方
「つみたて投資枠」は読んで字のごとく、現行のつみたてNISAのように、原則として毎月一定額を長期資産形成に適した投資信託で積み立てていくための枠です。対象商品については、現行のつみたてNISAで採用されている適格商品の条件がベースとなる可能性が高いと思われ、指数連動を目指す「インデックスファンド」が中心になるでしょう。
一方、「成長投資枠」は、現行の一般NISAのように、投資信託のほか株式も対象となります。ただし、指数の倍以上の値動きを目指す「レバレッジ型」のように長期資産形成に必ずしも適さない投資信託や、株式でも、上場廃止の恐れがある管理銘柄、上場廃止が決定した整理銘柄などは対象外となる見込みです。
「成長投資枠」は、「つみたて投資枠」の延長で投資信託の積み立てを行うことも可能ですが、ある程度まとまった資金でスポット買付(一括投資)をしたり、アクティブファンドや個別株などの積極的な投資にチャレンジしたりすることもできます。
最大利用可能額1,800万円のうち、「成長投資枠」は1,200万円あり、さらに前述の通り非課税枠の再利用もできるので、リスクを取れる若いうちにしっかり増やしておく、というのも一つの選択肢です。
あるいは、子どもの教育資金や住宅購入時の頭金など、「近い将来ほぼ確実に訪れる出費」に備える目的で、資金の一部については、インフレに負けない程度のリスクを抑えた運用を行うという考え方もあります。
この場合、株式市場の影響を直接的に受けてしまうインデックスファンドや、特定の企業のリスクを一手に負う個別株投資よりも、例えば、バランス型の投資信託なども選択肢に入れた方がよいでしょう。
2023年にNISA口座を開設するのはアリ?
結論から申し上げると、「アリ」でしょう。新NISAは、現行制度の改良版ではあるものの、別制度としてスタートするので、既に現行のNISA口座で非課税の恩恵を受けたという方でも、新たに総額1,800万円の投資枠が使えます。シンプルに考えて、より多くの非課税枠を利用できることになります。
ただし、あくまでも別制度のため、現在NISA口座で保有する商品を新制度に移管することはできないと思っておいた方がよいでしょう。あくまでも、現行制度のルールにのっとって商品を保有することになります。
本連載では、今後も「新NISA」について取り上げていきます。
【2024年からの新NISA制度について、詳しい説明はこちら】
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