外貨預金の為替差益は総合課税の雑所得に

 前回のコラムにて、外貨預金の為替差益の扱いについてお話ししました。

 例えば1ドル=110円のときに米ドルに換えて1万ドルを預金し、これを1ドル=140円のときに円に換えた場合、(140円-110円)×1万ドル=30万円の為替差益が生じます。この30万円が、総合課税の雑所得として所得税、住民税の課税対象となります。

 そして同じ総合課税の雑所得のグループに属する暗号資産(仮想通貨)と為替差益は損益通算できるので、暗号資産で損失が出ている場合、為替差益と損益通算すれば税金を減らすことができるということもお話ししました。

 では外貨預金と似た性質を持つ外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)やFX(外国為替証拠金)、また米国株にて為替差益が生じた場合は税務上どのような取り扱いになっているのでしょうか?

外貨建てMMFで生じた為替差益は外貨預金とは取り扱いが違う?

 証券会社にて、外貨建てMMFを保有している方も少なくないと思います。この外貨建てMMFは、分配金を受け取ることで外貨ベースでの元本が増えていきますし、それに加えて為替レートが円安となれば、円ベースで為替差益が生じます。

 例えば1ドル110円の時に米ドル建てMMFを1万口(1口=1ドル)購入し、その後分配金の受け取りにより1万1,000口まで増えたので売却しました。売却時のドル/円レートは1ドル=135円でした。

 なお、分配金の受け取り時のドル/円レートは1ドル=110円とします。

 この時の利益は(1万1,000口×135円)-(1万口×110円)=38万5,000円となります。

 この38万5,000円の利益の実態は、為替差益です。しかし税務上、外貨建てMMFの場合は外貨預金のように雑所得とはならず、「分離課税の譲渡所得」として所得税15.315%、住民税5%の税率で課税されます。

 同じ為替差益なのに、外貨預金では総合課税の雑所得、外貨建てMMFでは分離課税の譲渡所得と、税務上の取り扱いが異なっているのです。

 また、この譲渡所得は上場株式などの譲渡所得と税務上同じカテゴリーのため、例えば上場株式の売却損があれば損益通算することができますし、前年以前から繰り越してきた売却損と損益通算することもできます。

 なお、外貨建てMMFの分配金は、利子所得として所得税・住民税合わせて20.315%の源泉分離課税となっています。

FXの利益の税務上の取り扱いは?

 もう一つ、外貨預金と似たものにFXがあります。例えば1ドル=115円の時に2万ドルのドル買いを行い、1ドル=135円の時に決済した場合、(135円-115円)×2万ドル=40万円の利益となります。

 このFXにより生じた利益は、実態は為替差益ですが、外貨預金のように総合課税の雑所得として扱われるのではなく、外貨建てMMFのように分離課税の譲渡所得として扱われるのでもありません。

 FXの利益は、分離課税の雑所得として、所得税・住民税合わせて20.315%の税率で課税されることとなっています。

 この分離課税の雑所得のカテゴリーには、先物、オプション、CFDといったものが含まれます。

 ですから、FXで利益が生じ、先物やオプションなどで損失が生じた場合は損益通算することができますし、前年以前から繰り越してきた損失がある場合、それとFXの利益を損益通算することもできます。

米国株の為替差益の扱いは?

 最後に、米国株の場合はどうでしょうか?

 保有していた米国株を売却した場合、その中には米国株そのものの株価変動による損益と、為替変動による損益が混ざっていることになります。

 しかし、税金計算上、株価変動による損益と為替変動による損益を区分することなく、合算して「分離課税の譲渡所得」となります。上述の外貨建てMMFと同じカテゴリーです。

 例えば、1ドル=100円のとき、米国株(A社)を1株10ドルで1,000株買ったとします。その後A社の株価が9ドルまで下がったので、1,000株全部売却しました。この時の為替レートは1ドル=140円でした。

 この時の利益は(9ドル×1,000株×140円)-(10ドル×1,000株×100円)=26万円になります。この中には、為替差益と、ドルベースの株の売却損が含まれていて、利益の実質は全て為替差益です。

 それでも税務上の扱いは、外貨預金のような総合課税の雑所得にはならず、分離課税の譲渡所得となるのです。

 このように、同じ為替差益でも、外貨預金と外貨建てMMF、そしてFXとで税務上の取り扱いが異なります。

 もし給与所得など他の所得が多い方であれば、外貨預金より外貨建てMMFやFXで利益を得た方が、税額を抑えることができる可能性が高いと思います。

 税負担の多寡のことも考えた上で、何に投資するかを決めることも重要です。