「資産形成を始めたいけど何をしたら良いかわからない」という質問を読者の方からよく受けます。そういった投資初心者の方のために、資産形成のイロハを解説しています(毎週木曜日掲載)。

 今日は、第4回「日本株の選び方:投信と個別株、どっちが良い?」を解説します。

第1回~第3回の概要

 まず、これまで解説したことを簡単におさらいします。

【1】まず家計のバランスシートを作る

 投資を始める前にまず家計のバランスシートを作りましょう。保有している全ての金融資産(現預金を含む)と金融負債の残高(時価ベース)を書き出しましょう。投資を始めたら、毎年少なくとも1回はバランスシートを作って、金融資産・負債の変化を見ましょう。
 ダイエットするならば、体重を量り、定期的にその変化を見ていくことになるでしょう。それと同じことです。資産形成をするならば、自分の金融資産・負債の残高と変化はきちんと見る習慣をつけましょう。

【2】アセット・アロケーションを決める

 投資成果のほとんどはアセット・アロケーション(資産配分)で決まります。投資を始める前に、まずアセット・アロケーションを決めましょう。
 参考になる、日本最大の年金基金GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオは以下の通り。
国内株式25%、外国株式25%、外国債券25%、国内債券25%

【3】リスク資産と安全資産の比率を決める

 アセット・アロケーションで一番大切なのは、リスク資産(国内株式+外国株式+外国債券)と安全資産(国内債券:銀行預金+個人向け国債)の比率の決定です。近い将来使う予定のお金、急な出費に備える予備のお金は、安全資産に入れましょう。リスク資産への投資は、景気1サイクル(4~5年以上)投資しておける余裕資金で行いましょう。

 詳細は、以下よりお読みいただくことができます。

2022年9月29日:資産形成のイロハ 【1】まず家計のバランスシートを作る
2022年10月6日:資産形成のイロハ 【2】アセット・アロケーションを決める
2022年10月13日:資産形成のイロハ 【3】ポートフォリオの組み方

日本株の選び方、初心者は投資信託から

 今日は第4回、日本株の選び方です。400万円投資資金があって、日本株に25%投資すると決めている人を例に考えます。日本株を100万円分買うわけですが、何を買ったら良いでしょうか? 日本株の選び方の入り口の議論、「個別銘柄を買うのが良いか、日本株に投資している投資信託を買うのが良いか」考えるためのヒントをお話しします。

 株式投資の初心者ならば、最初は、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)に連動することを目指しているインデックスファンド(投資信託)から始めたら良いと思います。日経平均やTOPIXに連動することを目指しているETF(上場投資信託)でもOKです。

 インデックスファンドへの投資で、株の値動きについてある程度、感覚がつかめてきたら、次にインデックスファンド以外の投資信託や個別株への投資を検討して良いと思います。

個別株に投資するメリットとデメリット

 最初に、個別株投資のメリットとデメリットについて、きちんと理解しておく必要があります。個別株に投資するということは、大成功して大きなリターンが得られることも、大失敗して大きな損失をこうむることもあるということです。以下の式を理解してください。

【個別株の投資成果】=【市場平均の投資成果】±【個別株要因による投資成果】

 上記で、【市場平均の投資成果】とは、日経平均インデックスファンドや、TOPIXインデックスファンドの投資成果のことです。【個別株要因による投資成果】とは、日経平均インデックスファンドとのパフォーマンスの差です。

【個別株の投資成果】というとプラスになりそうに聞こえますが、プラスのこともマイナスのこともあります。インデックスファンドが10%上がる時に銘柄Aが15%上昇したら、銘柄Aの個別株要因はプラス5%です。ところが、インデックスファンドが10%上がる時に銘柄Aが6%しか上がらないならば、個別株要因はマイナス4%です。

 小型株では、「個別株による投資成果」がプラスもマイナスも極めて大きくなることがあります。

 日本株に投資したら、日経平均インデックスファンドなどとパフォーマンスを比較する習慣を身に付けると良いと思います。1年ごとに比較するのが良いでしょう。

 日本株への投資資金が100万円あるとして、それを年初から年末まで日経平均インデックスファンドに投資していた時に得られるリターンを計算してください。それと、ご自分が1年間に個別株の売買で得たリターンを比較すれば良いです。

 投資銘柄が一つしかないならば、投資した日の日経平均を記録しておけば良いと思います。そして、半年後とか1年後に、日経平均と比較して良かったか悪かったか、検証してみてください。その時、配当金も計算に入れてください。

 日経平均が10%マイナスの時に、銘柄Aの株価が4%下がっているならば、銘柄Aの個別株要因はプラス6%です。銘柄Aを選んだおかげで、マイナスを小さくできたわけです。

 個人投資家は、投資した銘柄のリターンがプラスならば成功、マイナスならば失敗と考えることが多いですが、それだと個別銘柄に投資した効果をきちんと検証したことになりません。日経平均やTOPIXのインデックスファンドのパフォーマンスと比較して初めて、個別株に投資して良かったとか、悪かったとか振り返ることができるようになります。

 個別株投資で得られるものはいろいろあります。個別株の投資成果がプラスであれば、その効果は一目瞭然ですが、それだけではありません。たとえ個別株の投資成果がマイナスでも得るものはあります。個別株投資を通じて勉強したことは、たとえ投資成果がマイナスでも無駄ではありません。さまざまなビジネスに役立つ可能性があります。

インデックスファンドに投資するメリットとデメリット

 インデックスファンドは、投資の世界ですばらしい発明です。株に投資したいが、個別銘柄を選別するために勉強する時間のない人が、小口(1万円くらいから)の投資資金で「市場平均」に長期投資できるようになったからです。

 以下のような人は、インデックスファンドへの投資をメインにしたら良いと思います。

【1】投資はしたいが、投資するためにいろいろ調べたり勉強したりする時間の無い人
【2】投資するためにいろいろ調べたり勉強したりするのが楽しくない人
【3】個別株投資で失敗ばかりしている人

 インデックスファンドに投資するデメリットもあります。個別銘柄の投資で、インデックスファンドを上回る高い収益を上げる可能性を逃しているかもしれないことです。投資するためにいろいろ調べたり勉強したりする時間をとることができて、かつ、投資するためにいろいろ調べることが楽しいと思える人は、ぜひ、個別株投資にチャレンジしたら良いと思います。

個別株に投資する時にやるべきこと

 以下三つをやったら良いと私は思います。

【1】ワクワクする銘柄を見つける

 インデックスファンドでなく、個別株に投資すべきか判断する基準はシンプルです。ぜひ投資してみたい、と投資することにワクワクする銘柄を見つけられるかどうか、にかかっていると思います。「好きこそものの上手なれ」という通り、まずはワクワクすることが大切だと思います。私はいろいろなファンドマネージャーをたくさん見てきましたが、稼ぐマネージャーはいつでもワクワクしながら投資していたと思います。
 ただし、「下手の横好き」というのもあります。ワクワクしながら投資した結果、いつも失敗ばかりならば、インデックス投資に切り替えた方が良いかもしれません。
 他人にすすめられたからとか、ネットで話題になっているからという理由で、自分でワクワクしない銘柄を買うのは、やめた方が良いと思います。自分の目で見てこれはいけるかも、とワクワクする銘柄が見つかったらぜひ投資してみたら良いと思います。あくまでも、余裕資金の範囲で。

【2】現場を見る

 現場を見るとは、小売業ならば店舗を見る、サービス業ならばサービス内容を調べる、ネット関連サービスならば関連サイトを開く、などです。私はファンドマネージャー時代、何百という銘柄の現場を見てきました。
 ただし、個人投資家の場合、そのようにリアルの現場を見られる銘柄は、少ないかもしれません。でも、問題はありません。リアルの現場が見られなくても、ネットを通じて「リアルの現場を見る」のと同じ経験が得られるようになったからです。
 かつて、半導体・バイオ・機械などの業種では、個人投資家は現場を見ることができませんでした。でも、近年はそのような企業でもネットを通じて現場を見ることができます。興味ある企業のホームページに入れば、製品やサービス、近況、経営方針、決算説明などがたくさん出ています。最近は、動画で現場が見られる企業もたくさんあります。
 ワクワクする企業が見つかったら、ホームページに出ている資料をすみからすみまで徹底的に読んでみたら良いと思います。資料を見るのが苦手ならば、最初は動画を視聴するだけでも良いと思います。企業内容の紹介や、決算説明会の動画をアップしている企業がたくさんありますので、そこから始めたら良いと思います。

【3】株価チャートを見る

 投資する前に、株価チャートは必ず見てください。数カ月の短いチャートだけでなく、5年とか10年の長いチャートも見られれば見た方が良いと思います。
 チャートの見方がわからない、と思っても、チャートは必ず見てください。そこには、多種多様な投資家心理が表れていますから。見て何かを感じてください。チャートを見て、なんとなく上がりそうだなとか、下がりそうだな、と感じることから始めてください。
 チャートの見方を勉強するのに、何か良い本は無いかと思う方には、昨年12月にダイヤモンド社から出版した拙著「株トレ 世界一楽しい一問一答 株の教科書」をオススメします。

 他にも、いろいろ勉強した方が良いと思いますが、完璧に勉強してから投資しようと思っていると、いつまでも投資を始められません。ちょこっと投資→ちょこっと勉強→もうちょっと投資→もうちょっと勉強、といった具合に、少しずつ投資しながら勉強する方が、投資の勉強が頭に入りやすいと思います。Good Luck!