上がるも下がるも外国人次第の日本株

 今日は、日本株を動かしている外国人の売買動向を解説します。いつもお話ししている通り、日本株は過去30年以上、外国人投資家が動かしています。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値をたたいて売る傾向があるので、短期的な動きは外国人次第です。

 7月4日から8月19日までの間、外国人は日本株を約2.9兆円買い越しました(株式現物と先物の合計)。外国人の買いによって、日経平均株価は一時2万9,000円を上回りました。

 ところが、そこから一転して外国人は大量の売り越しに転じました。8月22日から9月22日までの間、外国人は日本株を約2.4兆円売り越しました(現物・先物の合計)。まだ統計が出ていませんが、9月26日以降も売り越しが続いているもようです。

 外国人の売りによって、日経平均は一時2万6,000円を下回りました。外国人次第で、日経平均が乱高下していることがよくわかります。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と先物の合計):2021年1月4日~2022年10月3日(外国人売買動向は2022年9月22日まで)

出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成 注:外国人売買は、2021年は株式現物と日経平均先物の合計。2022年は株式現物と日経平均先物、日経平均ミニ先物、TOPIX先物の合計。棒グラフが上(プラス方向)に伸びているのは買越、下(マイナス方向)に伸びているのは売越を示す

 ただし、2021年から2022年までの日経平均の動きと、外国人の売買を俯瞰(ふかん)すると、2021年も2022年も外国人売買は方向が定まらず、売り買いがめまぐるしく変わっていることがわかります。すごい勢いで買い始めたと思っても長続きせず、すぐ売りに転じます。すごい勢いで売り始めたと思っても、それも長続きしていません。

 その結果、2021年の日経平均株価はトレンドが出ず、狭いレンジの上げ下げを繰り返してきました。2022年に入ってから、3月まで外国人の売りで大きく下がりましたが、その後は、また一定のレンジ内で上げ下げを繰り返しています。

外国人売買で暴落後に急騰した2020年

 外国人によって、もっと大きく日経平均が動いたのが、2020年です。2020年の日経平均は、外国人売りで暴落した後、外国人の買いで急上昇しました。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):2020年1月6日~2020年12月31日

出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成

 2020年の動きを見ていて思うのですが、外国人はあまり日本株をうまくトレーディングしていません。2020年はコロナショック後の最安値で巨額の売りを出し、年後半の急騰局面で巨額の買いを出しているからです。安く売って、高く買っているので、2020年の外国人は日本株のトレーディングで大失敗しています。

10月の外国人はどう動くか?

 9月はFRB(米連邦準備制度理事会)が、0.75%の大幅利上げを実施した上、さらに利上げ・引き締めを続ける意思を示したので、世界的に株が急落し、日本株にも外国人売りが増えました。

 10月はFOMC(米連邦公開市場委員会)開催の予定がないので、利上げはないはずです。11月・12月のFOMCでさらなる利上げがある可能性がありますが、とりあえず10月は利上げがない見込みです。

 10月の株式市場の注目は、これから発表が始まる7-9月の企業業績となるでしょう。4-6月までは、いろいろ不安があっても日米とも企業業績は好調でした。

 増益が見込まれる中で、日米とも株価が下がっているので、日米ともPER(株価収益率)で見て、割安となってきています。このまま、企業業績が悪化することがなければ、業績によって株価が支えられることになるでしょう。

 ただし、7-9月の企業業績が一転して減益トレンドとなれば、PERの信頼性は低下し、さらに日米とも株価が売られる可能性が出ます。7-9月の実績、10-12月以降のガイダンスにおいて、企業業績が悪化に転じるか否か、それが10月の注目点となるでしょう。

 10月の日米企業業績が引き続き堅調ならば、外国人は買い越しに転じ、日経平均は反発すると予想されます。ただし、企業業績が悪化してくると、外国人の売りが続くと考えられます。

 日経平均の方向性を決めるのは、最後はファンダメンタルズですが、短期的な動きを決めているのは、外国人です。これからも外国人の売買動向をしっかり見ていく必要があります。

 引き続き、外国人の日本株売買動向をウオッチしていくことが大切です。外国人の動きで気づいたことがあれば、本コラムで報告します。

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