※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
利回り3.2~4.1% エネルギー安全保障関連 高配当利回り株3選​」 

 今日は、エネルギー安全保障に貢献大と私が考える高配当利回り株についてレポートします。最初に高配当利回り株の選び方を解説し、その後で私が選ぶ3銘柄について解説します。

高配当利回り株を選ぶときの注意点二つ

【1】減配リスクの低い銘柄を選ぶ

 配当利回りに注目して銘柄を選ぶとき、気をつけなければならないことがあります。配当利回りは、確定利回りではないということです。業績が悪化して、配当が減らされ、株価が下がることもあります。したがって、なるべく減配リスクの低い銘柄を選ぶ必要があります。

【2】何かキラリと光るものがある

 もう一つ、注意点があります。高配当利回り株とは、言い換えると不人気株です。利益や配当をしっかり出しているのに投資家の人気が低くて株価が低迷していると配当利回りが高くなります。一方、人気が高い株は株価が高く評価されるので、配当利回りは低くなります。配当利回りが高い銘柄には、「成長性が低い」と投資家に思われて人気のない銘柄が多いということです。

 もちろん、それが投資家の誤解で、実は成長性が高いものも交じっています。

 そこで、高配当利回り株を選ぶ時には、「投資家には不人気だが、実はきらりと光る何かを持っている」株を選ぶ必要があります。「不人気のダメ株を買ってもダメ」です。投資家が見落としている何かがある株が良いということです。

 今日は、「日本にとって重要なエネルギー安全保障に貢献大」にもかかわらず、株価評価は低く、配当利回りが高い銘柄を選びます。

減配リスクの低い銘柄の選び方

 減配リスクの低い銘柄を絞りこむ方法は、いろいろあります。減配リスクが低い銘柄には、一般的に以下のような特色があります。

◆時価総額が大きい
◆参入障壁の高いビジネスモデル
◆財務内容が良好
◆景気の影響を受けにくい業種
◆経営者が株主への利益配分に積極的
◆配当性向が高過ぎない(連結配当性向80%超は要注意)

 全てを満たす銘柄はなかなかありません。私は、上記の一つか二つ満たすものから選べばよいと考えています。

 今日のレポートでは、何かキラリと光るものがある企業として「エネルギー安全保障にとって重要な企業」を選びます。その中から、「時価総額が大きく」て「参入障壁が高いビジネスをやっている」企業を選別し、さらに予想配当利回りの高い株に絞り込みます。

私が選ぶ3銘柄、最も価値が高いと判断しているのはINPEX

 上記の基準を配慮して、私がファンドマネージャーだったら今買いたいと思う高配当利回り株が、以下3銘柄です。

 どれも財務内容が良好、収益基盤が安定的にもかかわらず株価が割安な「高配当利回り株」として長期投資する価値があると判断する銘柄です。

エネルギー安全保障に貢献すると考える、高配当利回り株3選:2022年8月30日時点

コード 銘柄名 株価:円 配当利回り PER:倍 PBR:倍
1605 INPEX 1,663.0 3.6% 6.6 0.73
5020 ENEOSホールディングス  540.3 4.1% 10.0 0.55
8058 三菱商事 4,635.0 3.2% 7.9 0.89
出所:各社決算資料より楽天証券経済研究所が作成。配当利回りは1株当たり年間配当金(今期会社予想)を8月30日株価で割って算出。1株配当金は、INPEXが60円、ENEOSHDが22円、三菱商事が150円。PERは、株価を1株当たり利益(今期会社予想)で割って算出。今期とは、INPEXは2022年12月期、他は2023年3月期

 中でも、一番投資価値が高いと判断するのが、INPEXです。今日のレポートでは、INPEXについて詳しく解説します。

 INPEXは、昨年12月1日のレポートで投資判断を「強い買い」に引き上げた銘柄です。その時のレポートは、以下からお読みいただくことができます。

 2021年12月1日:利回り3.7~6.2%、12月決算の高配当株5選。INPEXを「買い推奨」に引上げ

 株価は、昨年12月1日の938円から既に77%上昇して1,663円となっていますが、それでもPER(株価収益率)6.6倍、PBR(株価純資産倍率)0.73倍と、株価指標でみて極めて割安です。日本のエネルギー安全保障にとって極めて重要な企業であることが、株価に十分に織り込まれていないと考えられます。

 以下、長期の株価チャートをご覧ください。同社株価は2020年まで、原油・天然ガス価格下落を受けて低迷していました。2021年から大きく上昇しているとはいえ、2007~2008年の株価と比較すると、まだ低い水準にあります。

INPEX株価推移:2006年12月~2022年8月(30日)

出所:QUICKより作成

INPEXを高く評価する六つのポイント

 INPEXを高く評価する点は、以下6点です。

【1】業績好調、株価割安と判断

 2022年12月期の純利益予想は、前期比57%増の3,500億円と2期連続で最高益を更新する見込み。原油・ガスの生産量増加・価格上昇・円安進行が寄与。PER・PBRなどの株価指標で見て、株価は割安です。

【2】日本最大の原油・天然ガス生産・開発企業

 原油・ガスの2021年の生産は、同社資料によると日量58.4万バレル(ガスは熱量で原油換算)、2021年末の保有埋蔵量は63.1億バレルに達しています。海外20カ国に権益を有します。

【3】海外権益のほとんどが友好国に

 海外権益は、オーストラリア・インドネシア・中東などの友好国にあります。権益喪失の危機にあるロシアの「サハリン1」にも出資【注】していますが出資比率は低く、仮に撤退・減損という最悪の事態になったとしても影響は限定的と同社はコメントしています。

【注】INPEXは、サハリン1の権益を30%保有する「サハリン石油ガス開発」の株式を6.08%所有

【4】先行投資が実り、今後生産量・埋蔵量とも拡大が見込まれる

 長い年月をかけて開発を進めてきたオーストラリア(イクシス)・インドネシア(アバディ)などで先行投資が実り、生産量や確認埋蔵量が拡大する局面に入ると予想されます。

【5】技術的に難しい海底ガス田を開発

 技術的に難しい海底ガス田を開発、陸上にガスを誘導してLNG(液化天然ガス)に転換して日本などに輸出するプロジェクトを行っています。

【6】脱炭素にも積極的に取り組み

 2050年にCO2(二酸化炭素)排出量ネットゼロを目指し、(1)水素・アンモニア事業、(2)CCUS(CO2回収・貯蔵・利用)、(3)再生エネルギー事業(地熱・風力など)・(4)メタネーション(合成メタン)・(5)森林保全などの事業を推進しています。

INPEXの三つの潜在リスク

 一方で、不安材料もあります。特に私が重視しているのは、以下3点です。

【1】資源ナショナリズムのリスク

 最大のリスクは、資源ナショナリズムです。海外に保有する権益はいつでも資源ナショナリズムによって接収されるリスクがあります。現在、友好国中心に権益を保有しているとは言っても、その友好関係がなんらかの理由で崩れるリスクは常にあります。

 国交断絶にならない限り、さすがに無償で権益を没収されることは無いと考えられますが、それでも友好関係が崩れると不当に低い対価で権益を奪い取られるリスクが生じます。日本企業が保有する権益に対し、「環境アセスメントで問題あり」など難癖をつけて取り上げることが考えられます。

 友好国であっても法人税率をどんどん高めることで実質的に利益を取り上げられてしまうこともあります。INPEXも既に海外事業で高率の法人税を取られています。

【2】脱炭素が進むことに伴うリスク

 世界中で、脱炭素に向けた取り組みが進む中、化石燃料ビジネスを展開する企業は、「環境税」などのペナルティを科せられるリスクがあります。これに対し、INPEXは2050年のCO2排出量ゼロを目標としてさまざまな取り組みをしていますが、その効果が出るにはかなりの年数を要します。

【3】資源開発がさらに進み、エネルギー価格が下落するリスク

 現在、欧州をはじめ世界中で天然ガスの供給不足が深刻化し、ガス価格が高騰しています。供給不足は長期化が予想され、解消のめどはたっていません。ただし、より長期の視点にたてば、米国などでさらに資源開発が進み、数年後にエネルギー価格が急落するリスクもないとは言えません。

 ただ、上記に挙げたリスクを勘案しても、先に解説した六つのポイントから、INPEXに投資する価値は高いと判断しています。

 ご参考までに、同社の2014年3月期以降の業績推移を以下に掲載します。

INPEXの売上高・営業利益・当期利益推移:2014年3月期~2022年12月期(会社予想)

出所:同社決算資料より作成

原発関連株にも注目

 日本のエネルギー安全保障を考えると、安全性の基準を満たした原子力発電を再稼働していくことは必須と考えています。そうなると、長らく低迷していた「原子力発電」関連株の投資価値は高まると考えられます。したがって、日本のエネルギー安全保障に貢献する企業として、原発関連株にも投資していきたいと思います。

 その候補企業は既に私の頭の中にあります。ただし、まだ調査が完了していないこと、投資の条件が完全には整っていないと考えていることから、現時点では皆さまに投資の参考銘柄はお示ししません。

 後日、条件が整ったと考える時点で、原発関連株について、改めてレポートを書きます。