はじめに

今回のアンケート集計期間は6月28日(月)~6月30日(水)です。東証一部の売買代金が1兆円を割り込み、株価もストン、ストンと落ちる過程で今回のアンケートが行われました。ギリシャ問題に端を発した欧州の金融不安に加え、米国の経済統計が住宅市場関連の統計をはじめとして市場の期待を大きく下回る内容になったことなどから、米国の景気回復速度に大きな疑問符がつき、世界的に投資家のリスク許容度が急激にシュリンクする状況が続いています。この流れの中で、円が対ドルでも、対ユーロでも買い進まれる展開となったため、株価は円高にネガティブ・リアクションを起こしています。そんな資本市場全体に楽観論が影をひそめた中で今回のアンケートは行われました。当然、DIはマイナスの度合いを強めており、投資家が慎重姿勢を強めていることを窺わせます。今回の楽天DI集計結果も、皆さまの今後の投資のご参考にして頂ければ幸いです。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「センチメントはかなり弱気に傾く。全体的にもかなりリスク回避的になっている姿が見えてくる。」

Q1: 6月28日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △16.09
(5月31日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △0.34)
Q2: 6月28日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +3.64
(5月31日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +12.14)

今回の基準日となった2010年6月28日の日経平均株価の終値は9,693.94円です。またアンケート終了時点の日経平均株価の終値は9,382.64円ですから、このアンケートをお願いしている間だけでも日経平均株価は300円以上下落したことになります。さらに、その結果を見ながら執筆している現時点(7月1日)の株価はそこから200円近く下落し、にわかに9,000円台を割り込む可能性も視野に入ってきました。

このような市場の下落局面でこのアンケート結果が強気に出ることは、楽天DIの過去の経験の中でもあり得ないのですが、後述する通り、今回は株式のみならず、多くのアセットクラスもしくは金融商品に対しても投資家がリスク回避的になっていることが見てとれました。また日本市場の株価に関して言えば、一番気にしているのは為替動向なのかも知れません。ドルが90円台を割り込み、ユーロが110円台を下回る状況が続くことで企業収益に対する不安感が増幅されているように思われます。代表的なバリュエーション指標であるPER(株価収益率)で見ると、すでに今期予想ベースの日経平均採用銘柄のそれは15倍台にまで低下しており、またPBR(株価純資産倍率)についても1.06倍と、ほぼ解散価値に近い水準にまで低下しているにもかかわらず市場が悩んでいるのは、やはりこの為替インパクトによる減益を織り込もうとしているからだと思われます。

また今回の集計とは直接関係ない面もありますが、市場の売買代金が激減しています。6月について言えば、1日の売買代金が1兆円を下回る日が2日間もあり、ゴールデンウィーク前後の頃の水準に比べると3分の2から半分程度にまで低下していることが市場の現状を色濃く表していると思われます。そうした背景もあり、今回はアンケートにご協力いただけた方も減少しており、すべての投資家の方々が市場から様子見で離れている感じを連想させます。株価上昇、売買代金の増加、そしてアンケートにご協力いただける方々の増加、という好循環が早く戻ってくることを期待したいと思います。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
6月28日 DI=△6.51 DI=△21.07 DI=+10.15
5月31日 DI=+8.03 DI=△22.74 DI=+16.92

調査時点の円/ドルは89.37円、円/ユーロは110.41円です。前回、さらなる円高が予想されたユーロについては、まさにその通りの市場変動(円高)となりました。1ユーロ112.60円だったものが基準日6月28日には110.41円まで2円以上の円高、さらに集計時点では107円台と3円の円高が進みました。2カ月連続でユーロに対するDIは円高を見ていますが、その通りに動いています。

一方、ドルについては予想に反して円高に振れたという感じです。6月は為替変動を含む資本市場の変動テーマのひとつが欧州危機であったことは前月同様ですが、あわせて米国経済の回復期待に疑問符がついたということもひとつの大きなテーマとなりました。そして市場はこの状況をほとんど予想していなかったので、米国債券市場がリスク回避先として急騰、米国債10年物の金利は2009年4月以来となる3%割れの水準まで急低下しました。日本の金利も下がりはしましたが、糊代はやはり米国金利の方が大きく、結果日米の金利差は縮小、円高が進んだという感じです。今回の結果、個人投資家は対ドルについてはここからもう少しの円高を予想しているようです。

一方、前月同様根強く円安を見込んでいるのが対豪ドルです。資源国通貨でもあり、いち早く利上げに動いた国の通貨に対しては、個人投資家の見方は“強い”という思いをお持ちなのだと思います。ただ実際の為替の動きについては6月時点では75円絡みから80円までの行って来いとなっており、微妙な状況になっているとも言えます。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 17.05% 21.03% ↓ △3.98%
EU諸国 9.00% 7.86% 1.14%
ブラジル 42.34% 44.27% △1.94%
ロシア 7.66% 10.09% △2.42%
インド 44.44% 43.25% ↑ 1.20%
中国 40.80% 45.98% △5.18%
中東・北アフリカ 5.36% 7.52% △2.16%
東南アジア 30.84% 25.13% ↑ 5.71%
中南米 10.54% 9.06% 1.48%
東欧 3.07% 3.25% △0.18%

前回のアンケート結果ではすべての地域に対して注目度が低下するという結果が出ましたが、今回は跛行色がついたようです。中国に対する注目度は、人民元の変動幅を弾力化するという発表があったにも関わらず5%以上の低下となり、逆に東南アジアに対しては6%近いプラスとなっています。インドネシアやベトナムといった国々が注目を集めているのかも知れません。BRIC’sの中で注目を上げたのはインドだけです。

欧州危機の渦中にあるEU諸国は人気凋落の流れに歯止めが掛かったようにも見え、一方で景気回復に黄信号が灯っている米国についてはマイナス3.98%と大きく注目度を下げました。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 66.86% 69.23% ↓ △2.37%
外国株式 27.78% 27.86% △0.09%
投資信託 32.38% 31.79% 0.58%
ETF 17.05% 15.21% 1.84%
FX(外国為替証拠金取引) 20.50% 20.17% 0.33%
国内債券 7.66% 6.84% ↑ 0.83%
海外債券 13.41% 16.07% ↓ △2.66%
19.35% 21.03% ↓ △1.68%
原油 5.17% 7.35% ↓ △2.18%
商品 4.79% 4.62% 0.17%
REIT 10.73% 11.79% △1.07%
CFD 4.60% 4.44% 0.15%

冒頭、個人投資家がリスク回避的になっているとご説明したもうひとつの答えはこれです。株式のみならず、為替変動リスクや金や原油といった値動きの大きなものについては軒並み注目度合いを下げている一方で、3カ月連続で国内債券の注目度が上がってきています。もちろん、このアンケートが楽天証券のお客様、すなわち預貯金を主としたお客様とは違うリスク許容度をお持ちのお客様に対して行われたアンケートであるため、国内債券の注目度合いが上昇していることに違和感を覚えるのかも知れません。

その一方で海外債券の注目度は落ちています。国内債券と海外債券の大きな違いは為替リスクを取るのか取らないのかということですから、ここでも投資家がリスク回避的な投資姿勢に傾いていることを垣間見ることができます。それにしても、国内株式の人気剥落は如何ともしがたい感じがします。バリュエーション的には相当良い水準にあるように思うのですが、成長性を感じて貰えないのでしょうか?根が株式市場の人間なので、この現実は見ていて寂しい限りです。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

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