バリュー相場が終われば、次はグロース相場に

 去年から今年にかけて、グロース(成長)株が売られる中、バリュー(割安)株の上昇が目立つ「バリュー相場」が続いてきました。それが、以下のTOPIX(東証株価指数)バリュー指数とグロース指数の動きから分かります。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の日次推移:2021年1月4日~2022年8月12日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成。2021年1月4日の値を100として指数化

 ただ、今年の7月以降、グロース株の反発が少し目立つようになっています。ここからグロース株優位のグロース相場に転換する兆しと言えます。そろそろグロース株を少しずつ買ってみても良いかもしれません。

 バリュー相場からグロース相場への転換がいつ起こるか誰にも分かりませんが、一つだけ分かっていることは、バリュー相場・グロース相場は過去に何度も入れ替わっていることです。バリュー優位がかなり進んだので、そろそろ次の展開に備えた方が良いかもしれません。

2016~2020年はグロース相場、2021年からバリュー相場に

 株式市場の物色動向として、バリュー相場とグロース相場は過去何度も入れ替わってきました。それが、時に極端な二極化になることもあります。ただ、極端なグロース相場になると、その後はバリュー相場に転換しやすく、極端なバリュー相場の後は、グロース相場に転換しやすいと言えます。

 この傾向を、2010年以降のバリュー指数とグロース指数の推移で見てみましょう。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の月次推移:2010年1月~2022年8月(24日)

出所:QUICKより作成。2010年1月末の値を100として指数化

 上のグラフをご覧いただくと分かる通り、2010年以降の流れは以下の通りでした。

【1】2010~2015年:特色なし
【2】2016~2020年:グロース相場
【3】2021~2022年8月:バリュー相場

 その時々の経済環境によって、グロースが優位になったり、バリューが優位になったり流れが変わります。1980年以降の日本株で見ると、一般的には、以下の関係が成り立ちます。

◆金利・インフレ率が上昇する局面 → バリュー相場になりやすい
◆金利・インフレ率が低下する局面 → グロース相場になりやすい

 2016年から2020年にかけて、日本でも世界でも、金利低下・インフレ率低下が進む中、IT(情報技術)を使った経済構造の転換が急速に進みました。特に2020年は新型コロナウイルス禍で外出が難しくなる中、リモート会議やリモートワークが急速に普及したため、グロース株買い・バリュー株売りの極端な二極化が進みました。

 ところが、2021年は一転してバリュー相場となりました。世界的に金利上昇・インフレ率の上昇が進む中、資源関連・素材・金融株などのバリュー株が大きく上昇しました。2020年に上昇したグロース株は、金利上昇を嫌気して売られました。その流れが、2022年も続いています。

 次にいつグロース優位に転換するか、まだ分かりません。ただ、原油・穀物・貴金属の先物が下落し、世界的なインフレがそろそろ低下に向かうとの向きもあり、グロース相場への転換もあり得るとの見方もあります。大型グロース株だけでなく、東証グロース市場(旧東証マザーズ市場)から小型グロース株を発掘して投資するのも、面白いと思います。

小型成長株投資が面白い時代に

 21世紀になり、第4次産業革命といわれる経済の構造変化が急速に進んでいます。これにともない、東証グロース(旧東証マザーズ)市場に上場する小型株から高成長企業がたくさん現れる時代になると思います。

 古いビジネスモデルにとらわれた大企業が衰退する中、創業10~20年で30~40代の若い創業社長が率いるユニ-クな企業が、急成長する時代になっています。

 日本には、残念ながら米国のGAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル・マイクロソフト)のような世界のITインフラを支配する巨大成長企業は出てきていません。それでも、ユニークなサービスで成長するニッチ企業はたくさん出ています。

 これから、世界中でAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)、5G(第5世代移動体通信)、サービスロボットなどの活用が加速するにつれて、日本でも業歴の若いベンチャー企業からたくさんの成長企業が出ると思います。

 このような大きな変化をもたらしている根幹にあるのが、産業構造の変化です。製造業が衰退し、IT産業が飛躍する局面となりつつあります。

 20世紀には、製造業で世界トップに立つことが成長企業となる条件でした。なぜならば、20世紀は、「モノ」の豊かさを求めて人類が努力した時代だったからです。生活を豊かにするモノを開発し、いちはやく安価に大量生産する技術を確立した製造業が、成長した時代でした。

 ところが、21世紀に入り状況は変わりました。製造業で稼ぐのが難しい時代になりました。モノは人気が出て一時的に不足してもすぐ大量供給されて、価格が急落するようになりました。製造業では、韓国、台湾、中国および日本企業が、利益度外視の過当競争を繰り返すようになってしまいました。

 このように、モノが余る時代となる中、恒常的に不足しているのが良質なサービスです。医療や介護、保育、防犯、警備、教育、宅配ドライバー、熟練建設工など、良質なサービスが不足している分野はたくさんあります。サービスは、モノのように工場で大量生産することができないので、人手不足が続く中、良質なサービスは恒常的に不足するようになりました。

 そこで、良質なサービスを安価に大量供給する仕組みを作った企業が、21世紀の高成長企業になります。人間にしかできなかった良質なサービスをITで安価に大量供給する仕組みを作った企業が高成長企業となりました。

 Eコマース(電子商取引)は、リアル店舗を作るコストを省き、ネットを通じて、小売りサービスの量産を可能にしたものです。小売りだけでなく、金融や医療サービス、人材あっせん、コンサルティング、教育、測量、旅行手配、予約サービスなどさまざまな分野で、リアルをネットが代替する時代となりつつあります。

 今後、AIやIoT、5G、ロボット、その応用分野(自動運転やフィンテックなど)から、21世紀の成長企業が多数出てくるでしょう。

東証マザーズ指数に底入れの兆し

 旧東証マザーズ株には、小型グロース株の候補が多数あります(2022年4月の東証再編後はほぼ全て東証グロース市場上場株となっている)。ただ、旧マザーズ株は、上げる時も下げる時も一方通行で大きく変動する傾向があります。

 2020年のグロース相場では、東証マザーズ指数が短期的に2倍以上に急騰しました。ところが、バリュー相場に転換した2021年以降は、一転して暴落しました。

 ただ、小型グロース株への投資をそろそろ再開しても良いと思います。東証マザーズ指数【注】を見ると、以下の通り少し底入れの兆しがあります。

【注】東証マザーズ指数
 今年4月の東証再編で東証マザーズ市場は無くなったが、旧東証マザーズ上場株を対象に、東証マザーズ指数の公表は続けられている。指数構成銘柄は来年10月までに東証グロース市場に上場する時価総額上位250銘柄に入れ替えられていく予定となっている。

東証マザーズ指数の週足:2020年10月1日~2022年8月24日

出所:楽天証券MSⅡより作成

成長株の見つけ方、3条件をチェック

 ファンドマネージャー時代、小型成長株を見つけるために、私は成長が期待される分野の企業をなるべくたくさん取材して投資企業を選別していました。年間100社以上の企業を取材して投資先を選んでいたこともあります。

 私は、成長株として投資を実行する前に、三つの条件をチェックしていました。三つの「高い」が満たされれば、成長株として「合格」と判断します。

成長株の3条件

【1】市場成長性:高い
【2】市場シェア:高い
【3】参入障壁:高い

 私がファンドマネージャー時代、成長株の3条件を中心に、どのように成長株を絞り込んでいったか、9月10日(土)14時30分~16時に開催される「相模女子大学 社会起業フォーラム」で講演します。どなたも無料で視聴することができます。ご関心のある方は、以下相模大学のHPより申し込むことができます。

「相模女子大学2022年度社会起業フォーラム開催のお知らせ」

▼著者おすすめのバックナンバー

2022年8月22日:波に乗れ!東証グロース株が買い場と考える理由:元ファンドマネージャーの投資アイデア(トウシル編集チーム)