金価格と為替の関係について
円建ての金価格は、2021年初めと比較して約18%上昇しています。日本人にとって金は値上がりしている印象ですが、その要因を考えてみると、違った面が見えてきます。世界においては、金価格はドル建てが標準で、ドル建ての金価格は2021年初めに比べて約12%下落しています。円建て価格が上昇しているのは、大幅な円安が寄与しているのです。
ここで、金価格(ドル建て、円建て)と為替(ドル/円)の推移について見ていきましょう。
(グラフ1)金価格(ドル建て、円建て)と為替(ドル/円)の推移(2021/1/1~2022/7/20)
(グラフ1)から、ドル建ての金価格は下落していて、円建ての金価格が上昇しているのは、大幅な円安になっているためであることが分かります。
米国においては2021年から徐々にインフレが進行し、直近の消費者物価指数は+9.1%と大幅な上昇となっています。インフレのときは金というイメージがありますが、金価格はドル建てでは上昇することなく、実際には逆に下落しているのです。
なぜ、下落しているのかですが、以前より、米ドルとドル建て金価格は、米ドルが買われるときには金は売られ、米ドルが売られるときには金が買われるという逆相関の傾向があります。足もとでもその傾向が顕著に出ていて、米ドル指数は20年来の高値となっている一方で、ドル建ての金価格は低迷している状態にあります。
長期における米ドル指数の推移を見てみると、過去の高値は1985年と2002年にあります。米ドル指数が高値を付けにいく過程では、ドル建ての金価格は低迷していますが、その後、米ドル指数が下げていく過程では、1985年、2002年のケースともにドル建ての金価格は大幅に上昇しています。
今と似ているのは1985年のほうで、当時、米国では1980年にかけてインフレが高進し、インフレを抑えるために政策金利を大幅に引き上げていきました。その高い金利を求めて1980年あたりから米国に資金が猛烈に集まり、米ドル指数が大きく上昇しました。
現在、米国ではインフレを抑えるために政策金利を引き上げていて、その高い金利を求めて米ドル指数は20年来の高値となっています。
そこで、1985年前後の金価格(ドル建て、円建て)と為替(ドル/円)の推移を見ていきたいと思います。
(グラフ2)金価格(ドル建て、円建て)と為替(ドル/円)の推移(1981/1~1990/12)
(グラフ2)を見ると、ドル建ての金価格とドル/円はおおむね逆相関の動きをしていることが見て取れます。このうち、1985年1月から1987年12月においては、ドル/円は約半分に、ドル建ての金価格は約60%の上昇となっていて、為替が円高に大きく動く中、ドル建ての金価格は大きく上昇していることが分かります。
一方で、この期間、円建ての金価格は約18%の下落となっていて、ドル建ての金は上昇していたのに、円建ての金に投資をしていた人は目減りしたということになります。
円高に備えて為替ヘッジを検討してみては?
2022年6月30日のコラム「今はドル売りのタイミングを虎視眈々と計るとき。その根拠とは?」でお伝えしたように、私は、景気循環に応じてドル/円は動いているとみていて、いずれドル安円高の局面が来るのではないかとみています。
そのときに、1985年以降の動きのように、ドル建ての金価格は上昇しているのに、円建ての金価格は円高が足を引っ張り、目減りしてしまう可能性もあり得ると思っています。
このため、円高の影響を受けないように、為替ヘッジをすることを考えたほうがよいと思っています。
金への投資は、現物だったり、投資信託、ETF(上場投資信託)、先物だったりさまざまな方法がありますが、為替ヘッジの方法として、次の二つをご紹介したいと思います。
- 方法1:「金(ドル建て)+為替ヘッジあり」の投資信託を活用する
- 方法2:FX(もしくは円高になればプラスになる投資信託)を活用する
方法1においては、現物にしても投資信託、ETF、先物にしても、今保有しているものを売却して、「金(ドル建て)+為替ヘッジあり」の投資信託を持つという形になります。
方法2においては、今保有しているものはそのままで、その金額分について、FX(もしくは円高になればプラスになる投資信託)を活用して為替ヘッジをするという形になります。
金への投資はここ2年、円安が大きくプラスに寄与してきました。今は、「円高による目減りを避けるために為替ヘッジをして、ドル建ての金価格が上昇する分は取っていく」ということを虎視眈々と狙う時期に入ってきていると考えています。
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